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第3話 【精算】は本当の傷を示す

人の傷は、請求書より先に正しい答えを持っている。


 処置が一段落したあと、私はさっき見えた数字を思い返していた。傷の深さ、必要な回復量、消費された薬量。そのどれも、紙へ書かれた記録と一致しない。


「さっき、どうやって優先順を見た」


 桐生が短く聞いた。


「傷へ触れたわけじゃありません。割れた薬瓶を見たら、使われた分と必要な分が頭へ入ってきたんです」


「スキルか」


「多分」


 私は処置後のトリアージ票を確認した。呼吸の浅かった探索者へは、記録上B級回復薬三本使用とある。だが私に見えた数字では、実際に入ったのは一本だけだ。


「二本分が消えてる」


「帳簿か」


「ええ。しかも軽傷の人へ重傷扱いの上乗せがされています」


 私は薬瓶の破片へもう一度触れた。白い数字が逆向きにほどける。誰かが空の瓶をトレイへ並べ、使用済み印を押し、端末へ三本入力する。見えたのは細い指先と、査定室で見慣れた淡い桃色のネイルだった。


 片瀬ゆいな。


「夜間救護でまで」


「心当たりがあるのか」


「あります。でも、まだ証拠が足りません」


 桐生は黙って処置台の血痕を見た。


「証拠は積め。だが次の搬送で死人を出すな」


 その言い方が、妙に信頼に近く聞こえた。


 私の新しい力は、金額を削るためじゃない。嘘の請求で隠された本当の傷を取り戻すためにある。


 なら名前は決まっている。


 【精算】。


 払うべきものを、間違えないための力だ。


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