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第18話 私が精算する理由

私が数字にうるさいのは、数字が好きだからじゃない。


 深夜救護室の窓もない休憩室で、桐生が静かに缶コーヒーを置いた。私は珍しく、すぐには手を伸ばせなかった。


「昔、父が崩落事故に巻き込まれたんです」


 口にするのは久しぶりだった。


「救護所へ運ばれたとき、必要な回復薬はもう残っていないって言われました。あとで知ったんです。その日、近くで開かれていたスポンサー実演に高級薬が優先で回されていたことを」


 桐生は何も挟まず、ただ聞いてくれる。


「父は助かりませんでした。あのとき私は、足りないって言葉の中に、誰かの都合が混じることがあると知ったんです」


 だから査定官になった。本当に足りなかったのか、誰かが別の場所へ流したのか、それを確かめる側へ回りたかった。


「今日、少しだけ分かりました」


「何が」


「私は予算を守りたかったんじゃない。必要な人の分が、勝手に減らされないようにしたかったんです」


 桐生は缶コーヒーを私の前へ押した。


「なら最後までやれ。お前の精算で助かる現場がもうある」


 その言葉で、胸の奥の迷いがきれいに揃った。私はもう、削るための査定官じゃない。届くべきものを届かせるための査定官だ。


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