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第17話 奪われた査定の行方
奪った仕事は、最後に一番見苦しい形で持ち主を呼ぶ。
公開査定のあと、片瀬が深夜救護室へ来た。いつもの作り笑いはなく、目の下だけが濃く疲れている。
「先輩」
「何」
「最初は、本当に少し承認を早めただけだったんです」
彼女は端末を差し出した。そこには私の差し戻しメモを改ざんした履歴、三上からの指示文、そしてスポンサー側から送られた『重傷扱いで統一』という連絡が残っている。
「断れなかった?」
「主任席がほしかったんです」
正直すぎて、怒鳴る気力が薄れた。欲しかったのだろう。私だって現場に戻る席はほしかった。でも、だからといって人の傷へ値札を盛っていい理由にはならない。
「三上課長が、見学案件は局の顔だって」
片瀬は震える声で続ける。
「軽傷ばかりじゃスポンサー受けが悪いから、救護の厚さを見せろって」
私は目を閉じた。結局この人たちは、救護を守るためじゃなく見せるために使っていたのだ。
「証言してください」
私が言うと、片瀬は小さくうなずいた。
「全部、話します」
奪われた査定が戻るというより、ようやく本来の形へ戻り始める感覚だった。私の名前の問題じゃない。もうこれ以上、必要な人の分を宣伝材料にされないために。




