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第15話 私が組み直した救護順
救護順は、声の大きさじゃなく必要量で決める。
次の事故は、週末の夜に来た。地下四階で魔力暴走。搬送は六名。しかも正規のA級回復薬は、裏在庫を証拠保全で止めたせいで、本当に最小限しかない。
「足りるか」
桐生が担架を受けながら聞く。
「足りない前提で組みます」
私は処置台を順に見た。【精算】が一気に走る。必要な回復量、優先すべき損傷、B級と補助処置で代替できる境界。高い薬を多く使えば安心なのではない。正しい人へ正しい量を入れることだけが救命率を上げる。
「一人目へA級一、二人目はB級二と止血。三人目は呼吸補助優先、薬は後」
看護師たちが動き、桐生が迷わず指示を通す。
「森崎順で回せ」
泣き叫ぶ付き添い、騒ぐクラン関係者、横から口を出す管理職。そんな声を全部切り離して、私は必要量だけを見る。大きな声はいつだって『自分へ先に』と言う。でも傷の数字は、そんなことを一度も言わない。
三十分後、搬送者全員が生還した。A級は一本残った。
看護師長がへたり込みながら笑う。
「初めて見たわ。足りない薬で、ちゃんと足りた夜」
私はようやく息をついた。
私の仕事は削ることじゃない。必要なところへ、奪われず届くように組み直すことだ。




