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第14話 助かった探索者の領収書
領収書は、もらったものよりもらえなかったものをよく覚えている。
灯の紹介で、先日の爆発事故から助かった探索者のひとりと会えた。二十代半ばの会社員探索者、坂巻海斗。腕の包帯はもう薄い。
「森崎さん、あのとき本当は高い薬なんて使われてません」
彼はポーチから折れた領収書を出した。救護室の自己負担明細だ。記載はB級回復薬一本と縫合のみ。ところが請求書上では同じ時刻、同じ患者番号へA級三本が通っている。
「これ、よく残してましたね」
「会社へ保険申請するつもりで」
彼は苦く笑う。
「会見じゃ『重傷者が多かった』って言われてましたけど、俺、歩いて帰りました」
私は明細を受け取った。現場の自己負担記録は、外向け請求ほど都合よくいじれない。これで片瀬たちの請求が事実と食い違うことを、被処置者本人の記録で示せる。
「あと」
坂巻が言いにくそうに続ける。
「控室で、白狼の人たちが『余った薬は換金できる』って話してました」
余ったんじゃない。本来渡されるべきじゃなかった分を持ち出したのだ。
私は領収書を見つめる。金額は小さい。でも、この小さな紙切れがあるだけで、誰かが適当に盛った物語よりずっと現実へ近づく。
助かった人の記録は、案外まっすぐだ。だからこそ、私はそれを曲げる仕事に負けたくないと思う。




