↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/59

第1章 第9話「12年前の新聞」

挿絵(By みてみん)


 DAY4。

 午前8時42分。

 俺は食堂で朝食を済ませると、資料閲覧室へ向かった。

 昨夜、端末に届いたメッセージ。

『資料閲覧室へ行くなら、最初に古い新聞を調べてください。』

『12年前の記事には、あなたがまだ知らない名前が載っています。』

 差出人は不明。

 それでも、俺は無視できなかった。

 父さんの事件に関する情報が、そこにあるかもしれないからだ。

 中央施設の廊下を進むと、突き当たりに新しい案内板が設置されていた。

『資料閲覧室 午前9時開室』

 時計を見る。

 午前8時56分。

 あと4分。

 俺が扉の前で待っていると、背後から声がした。

シオン:「早いね、ユウキ」

 振り向くと、シオンがノートを持って立っていた。

ユウキ:「シオンも資料を見に来たのか?」

シオン:「うん。昨日の通知を見て、気になったから」

 その後ろから、リナも歩いてくる。

リナ:「おはよう。2人とも早いね」

シオン:「リナも同じだよ」

リナ:「私は開室時間を確認してから来たから」

ユウキ:「俺も確認した」

シオン:「じゃあ、3人とも同じだね」

 そのとき、廊下の向こうから慌ただしい足音が聞こえた。

レン:「待ったー!」

 レンが走ってくる。

 手には、食べかけのトースト。

ソウタ:「館内で走るな。それと、食べながら歩くな」

 後ろからソウタが注意する。

レン:「お前、俺の保護者かよ!」

ソウタ:「保護者なら、まず食生活を改善させる」

 俺たちは笑った。

 時計が午前9時を示す。

 電子音とともに、資料閲覧室の扉が開いた。

     ◇

 室内は、想像していたよりも広かった。

 壁際には書架。

 中央には閲覧用のテーブル。

 奥には、新聞や記録を検索できる端末が並んでいる。

 入口のモニターには、利用規則が表示されていた。

『資料の閲覧は無料です』

『資料の持ち出しは禁止します』

『複写可能な資料は、各端末から保存できます』

『一部の資料には閲覧制限があります』

 無料。

 その2文字を見て、俺は少し安心した。

 昨日までのSTORE Xなら、新聞を1ページ読むだけで5,000円くらい請求してきそうだったからだ。

レン:「無料って、いい響きだな……」

ユウキ:「分かる」

ソウタ:「お前ら、すっかり金銭感覚を支配されてるな」

 俺は新聞検索端末へ向かった。

 昨夜のメッセージに従い、12年前の記録を調べる。

 検索欄に、父さんの事件に関係する名前を入力した。

『青風未来基金』

 検索結果が表示される。

 18件。

 俺は息をのんだ。

 記事が、残っている。

     ◇

 最も古い記事を開く。

 日付は12年前の春。

 見出しには、こう書かれていた。

『青風こども生活支援センター、地域支援事業を拡充』

 写真には、建物の前に立つ大人たちが写っていた。

 その後ろには、子どもたちの姿もある。

 俺は画面に顔を近づけた。

 青風こども生活支援センター。

 聞き覚えのある名前だった。

 父さんが、仕事で関わっていた施設。

 俺も幼い頃、何度か連れていってもらったことがある。

 だが、記憶は曖昧だった。

 建物の色。

 広い庭。

 誰かと遊んだこと。

 それくらいしか思い出せない。

 記事を読み進める。

 青風未来基金は、子どもたちの生活や教育を支えるための資金を管理していた。

 その活動の一環として、施設の運営を支援していたらしい。

 俺は次の記事を開いた。

 さらに次。

 そして、数か月後の記事で、指が止まった。

『青風未来基金の資金1億円が不明に』

 胸が締めつけられた。

 見覚えのある見出しだった。

 当時、何度もテレビで見た言葉。

 父さんの名前が報道されるたび、俺は画面から目を背けていた。

 記事には、基金の資金管理を担当していた会計職員について記されていた。

 その名前は――。

『神崎直人』

 俺の父さんだ。

ユウキ:「……父さん」

 声が漏れた。

 記事を読み進める。

 基金の資金1億円について、使途が確認できない状態になっている。

 会計担当者の関与が調査されている。

 当時の報道は、そんな内容だった。

 俺は何度も読み直した。

 そして、あることに気づく。

 記事には、父さんが1億円を盗んだと確定した事実は書かれていない。

 調査中。

 関与の疑い。

 使途不明。

 当時の俺は、その違いを理解していなかった。

 父さんの名前が報道された。

 だから、父さんが盗んだのだと思っていた。

 俺は画面を見つめたまま、動けなくなった。

     ◇

リナ:「ユウキくん?」

 隣から声がした。

 リナが俺の画面を見て、表情を変える。

リナ:「……この記事」

ユウキ:「俺の父親なんだ」

 言ってしまった。

 昨日の自己紹介では話せなかったこと。

 それを、今は口にしていた。

 リナはすぐには答えなかった。

 少しして、静かに尋ねる。

リナ:「一緒に調べてもいい?」

 俺は頷いた。

ユウキ:「頼む」

 リナは隣の端末を操作し、関連記事を検索した。

 シオンもやってきた。

シオン:「何か見つかった?」

 俺は父さんの記事を見せた。

 シオンは黙って読み、ノートを開く。

シオン:「記事の日付と、書かれている事実を分けて整理しよう」

ユウキ:「……うん」

 シオンは俺の顔を見た。

シオン:「つらかったら、無理に続けなくていい」

ユウキ:「いや。調べたい」

 自分でも驚くほど、はっきりと答えられた。

 12年前、俺は何もできなかった。

 でも、今は違う。

 少なくとも、自分の目で確かめることはできる。

     ◇

 俺たちは記事を日付順に並べた。

 基金の資金が不明になったという報道。

 関係者への聞き取り。

 施設の運営縮小。

 そして、青風こども生活支援センターの閉鎖。

 記事を追うほど、胸が苦しくなった。

 あの施設が閉鎖されたことは知っていた。

 だが、いつ、どんな経緯で閉鎖されたのかは知らなかった。

 リナが画面を指さす。

リナ:「ユウキくん。この記事、見て」

 施設閉鎖に関する記事だった。

 見出しの下に、関係者のコメントが載っている。

『施設長は、子どもたちの生活環境を最優先に対応すると説明した』

 その下には、施設長の名前。

『青風こども生活支援センター施設長・早川恵子』

 俺は名前を見つめた。

ユウキ:「……早川、恵子」

 知らない名前のはずだった。

 なのに、どこか引っかかる。

 昔、誰かが呼んでいたような気がする。

 優しい声。

 庭。

 青い空。

 記憶の奥で、何かが揺れた。

シオン:「知ってる人?」

ユウキ:「分からない。でも、聞いたことがある気がする」

 シオンは名前をノートに書いた。

シオン:「施設長。事件の当時、施設側の責任者だった人物だね」

 俺は頷いた。

 昨夜のメッセージには、知らない名前が載っていると書かれていた。

 この名前のことなのだろうか。

 それとも、ほかにもあるのか。

     ◇

 さらに調べていると、レンが俺たちのところへやってきた。

レン:「なあ、ちょっといい?」

ユウキ:「どうした?」

レン:「これ、同じ施設の記事じゃない?」

 レンの端末には、別の新聞記事が表示されていた。

『地域交流イベント、子どもたちが参加』

 青風こども生活支援センターで開かれた催しの記事だった。

 写真には、子どもたちが並んでいる。

 俺は画面を見た。

 そして、息を止めた。

 写真の端。

 小さな男の子が、誰かと手をつないでいる。

 顔は横を向いている。

 だが、その服には見覚えがあった。

 母さんが買ってくれた、青いシャツ。

ユウキ:「……これ、俺かもしれない」

レン:「えっ?」

 俺は写真を拡大した。

 男の子の隣には、女の子がいた。

 長い髪。

 白い服。

 手首には、小さな青い飾り。

 俺は画面に顔を近づけた。

 青いビーズ。

 昨日、ヒナの写真で見たバッグの飾りに似ていた。

 胸の奥がざわつく。

 だが、女の子の顔は、写真の折り目に重なっていた。

 誰なのか分からない。

レン:「知り合い?」

ユウキ:「……分からない」

 俺は正直に答えた。

 覚えていない。

 けれど、手をつないでいる。

 少なくとも、当時の俺は、その子と一緒にいた。

 なぜ忘れてしまったのだろう。

     ◇

 昼過ぎ。

 俺たちは資料閲覧室のテーブルで、調べた内容を整理していた。

 そのとき、レイが入ってきた。

レイ:「ずいぶん熱心だね」

シオン:「12年前の新聞を調べてる」

 レイは画面に表示された記事を見た。

 青風未来基金。

 資金1億円。

 施設閉鎖。

 その文字を見た瞬間、彼の視線がわずかに止まった。

レイ:「……なるほど」

ユウキ:「この事件、知ってる?」

 レイは俺を見た。

レイ:「報道された事件なら、聞いたことはあるよ」

ユウキ:「それだけ?」

レイ:「今、話せるのはそれだけかな」

 俺は言葉に詰まった。

 昨日の自己紹介でも、レイは自分の仕事について詳しく話さなかった。

 何かを隠しているのか。

 それとも、単に慎重なだけなのか。

 判断できない。

 レイは新聞記事をもう1度見てから、静かに言った。

レイ:「記事に書かれていることと、実際に起きたことは、必ずしも同じじゃない」

ユウキ:「……どういう意味?」

レイ:「報道は、取材時点で確認できた情報を伝えるものだから」

 それだけ言うと、レイは別の書架へ向かった。

 俺はその背中を見つめた。

 今の言葉は、一般論なのか。

 それとも、この事件について何か知っているのか。

     ◇

 午後4時。

 俺は最後に、父さんの名前で検索した。

『神崎直人』

 結果は7件。

 その中に、事件から半年後の記事があった。

『元会計担当者、資金移動の経緯について説明』

 俺は記事を開いた。

 そこには、父さんが資金の移動に関わったことを認めていると書かれていた。

 だが、移動先については明らかにしていない。

 俺は何度も読み返した。

 資金を移動した。

 でも、移動先は明らかにしていない。

 これは、どういうことだ?

 父さんは何をした?

 誰のために?

 そして、なぜ説明しなかった?

 記事の最後には、父さんの短いコメントが載っていた。

『説明できない事情がある。ただ、私的に使った金はない』

 俺は画面から目を離せなかった。

 12年前、父さんは何も話してくれなかった。

 俺が問い詰めても、ただ黙っていた。

 だから、俺は父さんを疑った。

 けれど。

 父さんは、何も言っていなかったわけじゃない。

 少なくとも、当時の記録には、こう残っていた。

 私的に使った金はない。

 それが事実かどうかは、まだ分からない。

 でも、俺が知らなかった父さんの言葉だった。

     ◇

 午後6時。

 資料閲覧室の閉室時刻になった。

 俺たちは保存できる記事を端末へ保存し、部屋を出た。

 廊下には、夕方の光が差し込んでいる。

 シオンが俺に声をかけた。

シオン:「今日は、いろいろ分かったね」

ユウキ:「ああ。でも、分からないことも増えた」

シオン:「そうだね」

 リナが続ける。

リナ:「記事だけで結論を出すのは危険だと思う。ほかの資料も探そう」

ユウキ:「うん。ありがとう」

 俺は2人に頭を下げた。

 自分1人だったら、途中で読むのをやめていたかもしれない。

 父さんの名前を見るだけで、昔の記憶がよみがえったからだ。

 それでも、今日は最後まで調べられた。

 少しだけ、前へ進めた気がした。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、保存した新聞記事を見返していた。

 青風未来基金。

 青風こども生活支援センター。

 施設長・早川恵子。

 そして、父さんの名前。

 神崎直人。

 俺はノートに、今日分かったことを書き込んだ。

『父さんは資金移動への関与を認めていた』

『移動先は明らかにしていない』

『私的に使った金はないと説明していた』

『施設長の名前は早川恵子』

『昔の写真に、俺らしき男の子と青い飾りをつけた女の子が写っていた』

 最後の1行を書いたところで、手が止まった。

 青い飾り。

 昨日、ヒナが見つけた船の写真。

 黒い封筒が見えるバッグについていた飾り。

 偶然だろうか。

 それとも、何かつながっているのだろうか。

 そのとき、端末が震えた。

『神崎ユウキ様へ』

 個別通知だった。

 俺は画面を開く。

『今日、あなたが見つけた新聞記事について、1つだけ確認してください。』

 続けて、文章が表示された。

『記事に書かれていない金額があります。』

 俺は眉をひそめた。

 書かれていない金額?

 1億円ではないのか?

 さらに、もう1行。

『1億円は、最初から1つの行き先へ消えたわけではありません。』

 心臓が大きく跳ねた。

 俺は急いで新聞記事を開き直した。

 1億円。

 資金移動。

 使途不明。

 その言葉は何度も出てくる。

 だが、確かに。

 資金がどこへ、いくら移動したのか。

 記事には、具体的な内訳が書かれていなかった。

 俺は端末を握りしめた。

 1億円は、最初から1つの行き先へ消えたわけではない。

 なら、父さんが動かした金は、いくらだったんだ?

 そして、残りの金は――。

 誰が、どこへ動かした?

 俺は画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。

 DAY4。

 第1回投票まで、あと26日。

 12年前の事件は、俺が知っていたよりも、ずっと複雑なのかもしれない。

第1章 第9話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


ブックマークお願いします♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。