↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/60

第1章 第54話「渡せなかった理由」

挿絵(By みてみん)


 DAY48。

 第2回X投票まで、あと12日。

 俺は朝食の席で、ノートの予定表を書き直していた。

 これまでのように、1日ずつ資料を調べているだけでは間に合わない。

 12年前の事件を追うことと、次の投票に備えること。

 どちらも必要だ。

ミオ:「ユウキ、予定を立ててるの?」

ユウキ:「うん。今日と明日で、04班の記録をもう少し整理したい」

 ミオがノートを覗き込む。

ミオ:「その次は?」

ユウキ:「みんなに調査結果を共有する。それから、Xについて考える時間も取らないと」

レン:「俺とのデートは?」

ユウキ:「予定にない」

レン:「予定表に空欄は?」

ユウキ:「お前が入る欄はない」

 向かいのレンが大げさに肩を落とした。

 ミオは笑っていたが、俺が彼女を見ると、なぜか目を逸らした。

     ◇

 午前中、俺たちは記録保管室・区画Bへ向かった。

 俺が申請していた写真関連資料の追加審査は、まだ終わっていない。

 代わりに、04班の未交付品について、公開範囲の確認を進めることにした。

 閲覧端末には、これまで何度も見た資料名が並んでいる。

『04班 未交付品引継記録』

『04班 外装・内容物対応照合表』

『04班 未交付写真保管確認票』

 シオンが画面を見ながら言った。

シオン:「今の段階で、確実に言えることを整理しよう」

 俺はノートを開いた。

 04班では、交流会終了前に移動予定が変更された子どもがいた。

 未交付品が発生した。

 紙製保管袋は、青い部屋から事務室へ移された。

 その後、写真関連と書簡関連に分けて登録された。

 ただし、写真P-006や手紙D-04が、その袋に入っていたとまでは確認できていない。

リナ:「ここを混同すると、間違った結論になるね」

ユウキ:「うん。まずは、同じ品物かどうかを確かめたい」

 だが、対応表の詳細は閲覧制限のままだった。

     ◇

 昼過ぎ。

 ナナが俺たちのところへ来た。

ナナ:「昨日のこと、もう少し思い出したの」

 彼女は少し緊張した顔をしていた。

 俺たちは閲覧室を出て、管理棟の休憩スペースへ移動した。

ナナ:「お母さんに何かを預けた子がいたって話、したでしょ?」

ユウキ:「うん」

ナナ:「その子が何度も『まだ渡せないの?』って聞いてたのは、たぶん交流会のあとだった」

 俺は頷き、続きを待った。

ナナ:「お母さんは、『今は渡せないけど、なくさないように預かってるよ』って答えてたと思う」

 彼女は膝の上で手を握った。

ナナ:「それで……私、なんで渡せないのか聞いたんだ」

ユウキ:「お母さんに?」

ナナ:「うん。そしたら、『その子が安心して暮らせるように、今は待つ必要があるの』って」

 俺はペンを止めた。

 児童保護上の配慮。

 記録に残っていた言葉が、少しだけ具体的な意味を持ち始めた。

 ただし、ナナの記憶が、俺たちの探す写真や手紙と直接結びつくかは分からない。

ユウキ:「話してくれてありがとう」

ナナ:「……うん」

 彼女は、まだ何か気にしているようだった。

     ◇

 その日の夕方。

 俺たちは、調査結果を食堂の一角で共有した。

 参加したのは13人全員。

 シオンがホワイトボードに時系列を書き、俺が確認できた事実を説明する。

 ナナも、自分の記憶を話してくれた。

 話し終えると、少しの沈黙が落ちた。

カイト:「つまり、渡さなかったのは意地悪じゃなかったかもしれねえってことか」

ソウタ:「その可能性はある。ただ、誰の何を守るためだったかは、まだ不明だ」

セナ:「子どもの居場所を守るためなら、記録が伏せられていることにも理由はあると思う」

 ハルカが頷いた。

ハルカ:「でも、渡したかった子も、受け取るはずだった子も、つらかったかもしれないね」

 俺はホワイトボードを見つめた。

 守るための判断だったとしても、それで誰も傷つかなかったとは限らない。

 12年前の出来事には、そういう複雑さがある。

     ◇

 DAY49。

 翌朝、俺たちは資料閲覧室で新しい記録を確認した。

 昨日の共有会を受け、シオンが未交付品の手続きについて、公開資料をさらに調べてくれていたのだ。

シオン:「返却を保留したあと、本人への連絡方法を検討する手順があったみたいだ」

 画面には、一般規程が表示されている。

『保護上の事情により直接の所在照会を行わない場合、指定された連絡窓口を通じて返却可否を確認する』

 俺は画面を見た。

ユウキ:「居場所を知らなくても、連絡する方法はあったんだな」

シオン:「制度上はね。04班の件で実際に使われたかは、別の記録が必要だけど」

 リナが関連文書を検索する。

 すると、04班の未交付写真に関する記録が1件見つかった。

『返却可否照会・連絡経路確認』

 公開項目には、こうあった。

『照会方法:指定窓口経由』

『結果:返却保留継続』

 俺は息をのんだ。

 写真を預かったまま、何もしなかったわけではない。

 少なくとも、指定窓口を通じて返却できるか確認した記録がある。

 だが、その窓口がどこだったのか、誰に連絡したのかは伏せられていた。

     ◇

 昼食後、俺はナナと中庭を歩いた。

 彼女は朝から少し元気がなかった。

ユウキ:「昨日、みんなの前で話してくれてありがとう」

ナナ:「ううん。私も、ちゃんと知りたいから」

 彼女は少し間を置いた。

ナナ:「でも、あの記録を見て、ちょっと怖くなった」

ユウキ:「どうして?」

ナナ:「お母さんが、何か大事なことを知ってたんじゃないかって」

 俺は黙って聞いた。

ナナ:「私も、そのそばにいたのに、ほとんど覚えてない」

ユウキ:「12年前のことだよ。全部覚えてなくても、おかしくない」

ナナ:「……うん」

 彼女は頷いたが、表情は晴れなかった。

 俺は、次の投票のことを思い出した。

 あと11日。

 この島では、何かを知っているかもしれないというだけで、疑いの目を向けられる。

     ◇

 午後。

 談話室では、次の投票について話し合いが始まっていた。

 レイが壁にもたれながら言う。

レイ:「第1回で僕がXじゃないと分かった。だから、次は別の人を選ぶことになる」

レン:「分かってるけど、まだ決め手がないよな」

ソウタ:「そもそも、青風の関係者であることは全員共通だ。そこだけでは絞れない」

 シオンが頷いた。

シオン:「Xが誰なのかを考えるなら、現在のゲーム運営と結びつく情報が必要だね」

 俺は、その言葉を聞きながらノートを開いた。

 黒い封筒。

 14人目の人影。

 匿名メッセージ。

 情報購入者。

 どれも、まだ正体が分かっていない。

 俺たちは12年前の事件に近づいている。

 だが、それがそのままXの正体につながるとは限らない。

     ◇

 そのとき、アカリが口を開いた。

アカリ:「ねえ、ナナってさ。お母さんが青風で働いてたんだよね?」

 ナナが顔を上げた。

ナナ:「うん」

アカリ:「じゃあ、ほかの人より資料のことを知ってる可能性はあるんじゃない?」

 食堂の空気が少し変わった。

 ナナはすぐには答えなかった。

ナナ:「……私が知ってるのは、子どもの頃のことだけだよ」

 アカリは慌てて手を振る。

アカリ:「責めてるわけじゃないよ! ただ、気になって」

 シオンが静かに言った。

シオン:「家族が関係者だからといって、本人が運営に関わっている証拠にはならない」

 俺も頷いた。

ユウキ:「ナナは、自分の記憶を話してくれてる。分からない部分は、資料で確認しよう」

 ナナは小さく俯いた。

 その様子を見て、俺は胸が痛んだ。

 投票が近づくにつれ、何気ない質問も疑いに変わっていく。

     ◇

 夕方。

 俺はミオと海沿いを歩いていた。

ミオ:「ナナ、つらそうだったね」

ユウキ:「うん。アカリも悪気があったわけじゃないと思うけど」

ミオ:「疑うことと、傷つけることは、同じじゃないはずなのにね」

 俺は頷いた。

 このゲームでは、誰かを疑わなければならない。

 でも、疑う相手にも、12年前から続く人生がある。

ユウキ:「俺、次の投票で誰に入れるか、まだ決められない」

ミオ:「うん」

ユウキ:「ちゃんと考えたい。第1回みたいに、後悔したくないから」

 ミオは、そっと俺の手を握った。

ミオ:「ユウキが考えて決めたことなら、私はちゃんと聞くよ」

 俺は彼女を見た。

ユウキ:「ありがとう」

 夕陽が、海に細い光の道を作っていた。

     ◇

 夜。

 俺は自室で、DAY48とDAY49の調査結果を整理した。

『04班の未交付品は、児童保護上の事情から返却が保留された可能性が高い』

『指定窓口経由で返却可否を照会した記録あり』

『結果は返却保留継続』

『受取予定者の氏名・所在は未確認』

 そして、最後に書いた。

『第2回X投票まで、あと11日』

 俺はペンを置いた。

 残された時間は短い。

 明日からは、12年前の記録だけでなく、今この島で起きていることも整理しなければならない。

 誰が何を知っているのか。

 誰が、どの情報を隠しているのか。

 そして、その理由は何なのか。

 窓の外では、夜の海が静かに揺れていた。

 俺はノートを閉じた。

 次の投票は、もうすぐそこまで来ている。

第1章 第54話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


ブックマークお願いします♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。