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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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53/59

第1章 第53話「話せなかった記憶」

挿絵(By みてみん)


 DAY47。

 朝食を終えた俺は、食堂の掲示板に貼った紙を外した。

『12年前の青風について、覚えていることを聞かせてください』

 昨日は、13人それぞれの記憶を聞くことができた。

 今日からは、その記憶と記録を照らし合わせる。

 ただし、本人が話していないことまで勝手に調べて公表するつもりはない。

 俺自身、父さんのことを聞かれるたびに、答えに詰まるのだから。

レン:「聞き取り調査、もう終わり?」

ユウキ:「いったんね。今度は資料と照合する」

レン:「俺の証言は?」

ユウキ:「お前、昨日いなかっただろ」

レン:「じゃあ今から言う。青風で食べたプリンはうまかった!」

レイ:「またプリン?」

レン:「俺の人生において重要な証言だ」

ソウタ:「その証言、事件との関連性が見つからないんだが」

 レンは真剣な顔で腕を組んだ。

レン:「まだ見つかってないだけだ」

 俺は笑いながらノートを開いた。

 レンの記憶も、あとでちゃんと聞いておこう。

     ◇

 午前中、俺たちは記録保管室・区画Bの閲覧室を再び訪れた。

 今日の目的は、昨日受け付けが始まった追加閲覧申請だ。

 端末には、申請可能な資料の範囲が表示されている。

『参加者本人に関する青風関連記録』

『本人確認を行った場合に限り、指定項目を開示』

『第三者の個人情報は非開示』

 シオンが画面を確認した。

シオン:「自分の記録を調べる仕組みだね。他人の記録を自由に見られるわけじゃない」

リナ:「それぞれが確認して、共有したい部分だけ話すのがいいと思う」

 俺たちは頷いた。

 俺は参加者カードを読み取り機に通す。

『神崎ユウキ』

『本人確認完了』

 画面に、自分の青風関連記録が表示された。

     ◇

 最初に開いたのは交流会参加記録だった。

『参加児童:神崎ユウキ』

『参加班:04班』

 俺は息を止めた。

 04班。

 写真P-004とP-006が残されている、あの班だ。

 さらに下には、当日の活動記録があった。

『共同制作』

『写真撮影』

『手紙交換』

 俺は、古い布の袋にしまってある手紙を思い出した。

『ぜったいに、なくさないでね。』

 あの紙が交流会の手紙交換で渡されたものなのかは、まだ分からない。

 だが、俺が04班にいたことは確認できた。

ユウキ:「……やっぱり、俺は04班だった」

 隣のミオが画面を見た。

ミオ:「うん」

 彼女はそれ以上、何も言わなかった。

     ◇

 次に表示されたのは、写真関連記録だった。

『本人が写る資料:複数件』

『一部資料に未交付品との関連あり』

 俺は思わず身を乗り出した。

ユウキ:「未交付品との関連……!」

 だが、詳細を開くと、閲覧制限の表示が出た。

『他児童の個人情報を含むため、追加審査が必要です』

 俺は椅子にもたれた。

 自分が写っている写真でも、そこに別の子どもが写っていれば、自由に見られるとは限らない。

 それは当然のことだった。

 ただ、俺が探している写真が、未交付品と関係している可能性は出てきた。

 俺は申請可能な項目を確認し、追加審査を申し込んだ。

     ◇

 少し離れた端末では、ナナが自分の記録を見ていた。

 彼女は画面を見つめたまま、動かない。

ユウキ:「ナナ?」

ナナ:「……あ、ごめん」

 俺は近づきすぎない位置で立ち止まった。

ユウキ:「大丈夫?」

ナナ:「うん。ちょっと、思い出したことがあって」

 ナナは画面を閉じた。

ナナ:「あとで話してもいい?」

ユウキ:「もちろん」

 彼女は小さく頷いた。

 その表情は、昨日までよりも少し硬かった。

     ◇

 昼食後、俺たちは中庭のベンチに集まった。

 ナナが、自分から話し始めた。

ナナ:「私の記録にも、04班って書いてあったの」

 俺は顔を上げた。

ユウキ:「ナナも?」

ナナ:「うん。お母さんが担当してた班だから、そばにいたことが多かったんだと思う」

 彼女は膝の上で手を重ねた。

ナナ:「それでね。昨日話した、お母さんに何かを預けた子のこと……少し思い出した」

 俺たちは黙って続きを待った。

ナナ:「その子、何度もお母さんのところに来てたの。『まだ渡せないの?』って」

 俺はノートを開いた。

ユウキ:「写真のこと?」

ナナ:「分からない。紙の袋みたいなものを持ってた気はするけど、そこは自信がない」

 彼女は首を振った。

ナナ:「でも、お母さんが『ちゃんと預かってるから』って答えてたのは、覚えてる」

 俺はその言葉を書いた。

 誰かが渡したがっていた。

 水瀬真紀は、預かっていると答えた。

 昨日見つけた記録とも、矛盾しない。

     ◇

 ナナは、そこで口を閉じた。

 俺は続きを急かさずに待った。

 やがて、彼女は小さな声で言った。

ナナ:「……私、その子に嫌なこと言ったかもしれない」

ユウキ:「嫌なこと?」

ナナ:「『そんなに大事なら、自分で渡せばいいのに』って」

 彼女は俯いた。

ナナ:「そしたら、その子、黙っちゃった気がする」

 俺は言葉を探した。

 当時、俺たちは8歳だった。

 大人たちの事情なんて、何も知らなかったはずだ。

ユウキ:「ナナ。その子が何を渡したかったのか、まだ分からないんだろ?」

ナナ:「うん」

ユウキ:「だったら、今は覚えてることだけでいいよ」

 ナナは頷いた。

 だが、その顔から不安は消えなかった。

     ◇

 午後、俺たちは04班の未交付品記録を改めて確認した。

 ナナの記憶と照らし合わせるためだ。

『児童からの直接預かり』

『後刻交付予定』

『受取予定者の予定変更』

『返却方法確認依頼』

『所在照会保留申請』

 これまで別々に見ていた記録を、時系列に並べる。

 すると、1つの流れが浮かび上がった。

 誰かが品物を預けた。

 渡す予定だった相手が、予定を変更して移動した。

 職員が返却方法を確認した。

 その後、所在照会が保留された。

 ただし、これらがすべて同じ品物についての記録なのかは、まだ確定していない。

シオン:「ここをつなぐには、外装・内容物対応照合表が必要だね」

 俺は頷いた。

 以前見つけたINFO-025。

 60,000円で、旧番号と新しい分類の対応を確認できる情報だ。

 だが、名前や本文までは分からない。

 俺たちは購入を見送っていた。

 今も、全員の生活費には余裕がない。

 情報を買えば必ず真相に近づけるとは限らない以上、慎重になる必要があった。

     ◇

 そのとき、ナナが言った。

ナナ:「……私、あの子のこと、もっと思い出せるかもしれない」

 俺は彼女を見た。

ユウキ:「何か手がかりがある?」

ナナ:「お母さんが、家で何度かその話をしてた気がするの」

 彼女は少し考えた。

ナナ:「でも、名前は出してなかった。『あの子のことは、むやみに聞かないで』って」

 シオンが静かに尋ねる。

シオン:「それは、いつ頃の話?」

ナナ:「青風が閉鎖する前後だったと思う。正確な日は分からない」

 俺はノートに記した。

 子どもの居場所について、むやみに聞かないように言われていた。

 それが未交付写真の受取予定者と同じ人物なのかは、まだ分からない。

 だが、児童保護上の配慮という記録の理由と、方向は一致していた。

     ◇

 夕方。

 資料閲覧室を出たところで、俺はナナに呼び止められた。

ナナ:「ユウキくん」

ユウキ:「どうした?」

ナナ:「今日話したこと、みんなに共有してもいいよ」

ユウキ:「分かった。でも、無理してない?」

 ナナは少しだけ笑った。

ナナ:「うん。私も、ちゃんと知りたいから」

 俺は頷いた。

 彼女は一度歩き出しかけて、また立ち止まった。

ナナ:「……ただ、私が何か隠してるって思われたら、どうしよう」

 俺はすぐには答えられなかった。

 第2回X投票まで、あと13日。

 この島では、何かを知っていることも、思い出せないことも、疑いの理由になってしまう。

ユウキ:「分からないことを、分からないって言うのは大事だと思う」

 ナナは俺を見た。

ユウキ:「俺も、父さんのことを全部知ってるわけじゃないし」

 彼女は小さく頷いた。

ナナ:「ありがとう」

 そう言って、食堂の方へ歩いていった。

     ◇

 夕食後、俺はミオと海沿いを歩いた。

 潮風が、少し冷たい。

ミオ:「ナナ、今日は頑張って話してくれたね」

ユウキ:「うん。でも、怖がってた」

ミオ:「投票が近づいてるからね」

 俺は頷いた。

 DAY60。

 第2回X投票。

 あと13日しかない。

ユウキ:「俺たち、また誰かを選ばなきゃいけないんだよな」

ミオ:「うん」

ユウキ:「第1回はレイを疑った。でも、Xじゃなかった」

 ミオは黙って聞いていた。

ユウキ:「今度は、ちゃんと考えたい。誰かが何かを隠してるように見えても、それだけで決めつけたくない」

ミオ:「……うん」

 彼女は、そっと俺の手を握った。

ミオ:「ユウキらしいね」

 俺は握り返した。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、今日の記録をまとめた。

『神崎ユウキ:04班参加を本人記録で確認』

『水瀬ナナ:04班参加を本人記録で確認』

『ナナの記憶:水瀬真紀に品物を預け、何度も交付を尋ねた子どもがいた可能性』

『未交付品との同一性は未確認』

 そして、最後に書いた。

『第2回X投票まで、あと13日』

 俺はペンを置いた。

 12年前の真相を調べる時間と、Xを選ぶための時間。

 この島では、その2つが同時に進んでいる。

 俺たちは、過去を知るために協力しなければならない。

 それなのに、13日後には、また互いを疑わなければならない。

 俺は窓の外を見た。

 夜の海は、静かだった。

 その静けさが、今は少しだけ不気味に感じられた。

第1章 第53話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


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