第1章 第43話「手紙を書いた子」
DAY37。
午前7時15分。
俺は、机の上に古い手紙を広げていた。
『ぜったいに、なくさないでね。』
裏面には、もう1つの言葉。
『あおいへやの、ひきだしをおもいだして。』
昨日届いた匿名メッセージには、写真を渡そうとした人物と、手紙を書いた人物は別だと書かれていた。
だが、差出人は不明だ。
その言葉を信じて、答えを決めるわけにはいかない。
俺は手紙を布袋へ戻し、ノートを開いた。
『今日の目標:書簡の差出人を確認できる記録を探す』
写真の少女が誰なのか。
この手紙を誰が書いたのか。
その2つは、別々に調べよう。
◇
午前8時。
食堂に入ると、ミオが俺に気づいて手を振った。
ミオ:「おはよう、ユウキ」
ユウキ:「おはよう。今日も隣、いい?」
ミオ:「うん。空けておいたよ」
俺は彼女の隣に座った。
最近、朝食の席を探さなくなった。
ミオがいる場所へ向かうのが、いつの間にか当たり前になっている。
ミオ:「今日は手紙を調べるんだよね?」
ユウキ:「うん。写真と手紙を混同しないようにしたい」
ミオ:「じゃあ、私は書簡の管理記録を調べるね」
ユウキ:「助かる」
俺が笑うと、ミオも笑った。
向かいの席に座ったレンが、俺たちを交互に見た。
レン:「お前ら、最近ずっと一緒だな」
ユウキ:「調査してるんだよ」
レン:「俺も知ってる。調査という名の共同作業だろ?」
ユウキ:「普通に共同作業だよ!」
レンは意味ありげに頷いた。
レン:「はいはい。共同作業ね」
ミオが口元を押さえて笑っている。
俺は、朝から妙に熱くなった顔を隠すように味噌汁を飲んだ。
◇
午前9時。
資料閲覧室には、俺、ミオ、シオン、リナ、ソウタ、ナナが集まっていた。
まず確認したのは、書簡関連の管理方法だ。
『児童から預かった書簡は、差出人と受取予定者を別々に記録する』
『返却先が未確認の場合、担当職員が一時保管する』
『施設閉鎖時は、管理番号を付して引き継ぐ』
シオンがノートを開く。
シオン:「差出人を調べるなら、返却記録だけじゃなく、預かったときの記録が必要だね」
リナ:「受取予定者と差出人が別々に登録されているなら、照合できる可能性はある」
俺は頷いた。
これまで俺たちは、D-04という管理番号ばかり追っていた。
だが、その手紙がいつ、誰から預けられたものなのかは確認していない。
まずは、そこからだ。
◇
午前10時。
ナナが、青風の書簡預かり記録を見つけた。
ナナ:「これ……お母さんの名前がある」
画面には、当時の職員名が表示されていた。
『担当:水瀬真紀』
『04班 児童間預かり品』
『分類:書簡』
俺は身を乗り出した。
ユウキ:「04班の手紙……!」
だが、詳細を開くと、個人名は伏せられていた。
『差出人:非公開』
『受取予定者:非公開』
『受領日:交流会当日』
シオンが言った。
シオン:「この記録だけでは、D-04と同じ手紙かは分からない」
俺は頷いた。
同じ04班。
同じ担当職員。
それでも、同一の品物だと決めつけることはできない。
俺はノートに疑問符をつけて記録した。
◇
午前11時。
ミオが別の資料を開いた。
ミオ:「ユウキ、これを見て」
画面には、当時の預かり品確認手順が表示されている。
『差出人が児童の場合、本人確認のため、書簡外装に識別記号を付す』
『識別記号は、児童の氏名とは別に管理する』
俺は首を傾げた。
ユウキ:「識別記号?」
ミオ:「名前をそのまま書かないためのものみたい」
リナが画面を確認する。
リナ:「個人情報を守るためだね。外装だけ見ても、誰の手紙か分からないようにしている」
俺は古い手紙を思い出した。
青い鉛筆で書かれた『04』。
あれは班番号かもしれない。
だが、識別記号の可能性もあるのだろうか。
俺はノートに書いた。
『手紙の「04」=班番号? 識別記号?』
答えは、まだ出ない。
◇
正午。
昼食の時間になった。
俺はミオと食堂へ向かった。
彼女がトレーを持とうとしたとき、俺は自然に手を伸ばした。
ユウキ:「持つよ」
ミオ:「ありがとう。でも、自分で持てるよ?」
ユウキ:「あ、そうだよな」
俺が手を引っ込めると、ミオは少し考えてから言った。
ミオ:「じゃあ、飲み物だけお願いしてもいい?」
ユウキ:「もちろん」
俺は彼女のコップを持った。
たったそれだけのことなのに、なぜか嬉しい。
席に着くと、ミオが小さく笑った。
ミオ:「ユウキって、優しいね」
ユウキ:「そんなことないよ」
ミオ:「あるよ」
俺は返す言葉を探した。
だが、見つからなかった。
結局、黙って水を飲んだ。
今度は熱くない。
それだけが救いだった。
◇
午後1時。
俺たちは、書簡外装の識別記号を調べ始めた。
公開資料には、識別記号の形式が記載されていた。
『班番号と個別番号を組み合わせる』
『例:04-01、04-02』
俺は画面を見つめた。
ユウキ:「じゃあ、手紙の『04』だけでは識別記号として不完全なのか」
ソウタ:「そうだな。少なくとも、この形式とは一致しない」
シオンが頷いた。
シオン:「子どもが書いた『04』は、やっぱり班番号の可能性があるね」
俺は少しだけ肩の力を抜いた。
また、1つ思い込みを避けられた。
似た数字を見つけるたびに、同じものだと思ってはいけない。
◇
午後2時。
ナナが、預かり品の一覧を開いていた。
04班の書簡は、複数件登録されている。
そのうち1件に、公開されている備考があった。
『差出人本人による手渡し困難』
『担当職員が受領』
ナナが息をのんだ。
ナナ:「……これ、私が覚えてる話に近い」
俺は彼女を見る。
ユウキ:「直接渡すのが恥ずかしいって言ってた子?」
ナナ:「うん。たぶん……」
彼女は少し考えた。
ナナ:「その子、渡す前に何度も書き直してた気がする」
俺は古い手紙を思い出した。
短い文章。
子どもらしい文字。
何度も書き直した跡があっただろうか。
今まで、そこまで注意して見ていなかった。
◇
午後3時。
俺は自室へ戻り、古い手紙を取り出した。
紙を傷めないよう、机の上にそっと広げる。
青い鉛筆の文字。
ところどころ、線が濃くなっている。
だが、書き直した跡なのか、単に筆圧が強かっただけなのかは分からない。
俺は写真を撮り、資料閲覧室へ戻った。
シオンが画像を見た。
シオン:「筆跡だけで同じ手紙だと判断するのは難しいね」
ユウキ:「うん。記録のほうを追おう」
俺たちは、再び端末へ向かった。
◇
午後4時。
リナが、書簡預かり記録の関連項目を見つけた。
『04班 書簡預かり確認票』
詳細を開く。
閲覧制限あり。
ただし、公開されている項目には、こう書かれていた。
『差出人確認済み』
『受取予定者確認済み』
『交付状況:未交付』
俺は息をのんだ。
ユウキ:「未交付……!」
シオンが頷いた。
シオン:「この手紙は、渡されなかったんだね」
だが、D-04との関係はまだ分からない。
俺はノートに書いた。
『04班の未交付書簡が存在』
『差出人・受取予定者は確認済み』
『D-04との関係は未確認』
少しずつ、手紙の行方が見えてきた。
◇
午後5時。
STORE Xの端末に、新しい情報項目が表示された。
『INFO-021』
『対象:04班 書簡預かり確認票』
『価格:70,000円』
『開示範囲:書簡の識別記号、交付状況、担当職員』
『差出人および受取予定者の氏名、本文は含みません』
俺は価格を見てため息をついた。
70,000円。
また、名前は分からない。
シオンが言った。
シオン:「識別記号が分かれば、D-04との照合は進むかもしれない」
リナ:「でも、今すぐ買うかは慎重に考えたいね」
俺は頷いた。
生活費が減額された今、情報購入は簡単な判断ではない。
俺たちは、無料の資料をもう少し調べることにした。
◇
午後6時。
夕食後、俺はミオと中庭を歩いていた。
空は夕焼けに染まっている。
ミオ:「今日は、手紙の記録が見つかったね」
ユウキ:「うん。でも、差出人はまだ分からない」
俺は少し笑った。
ユウキ:「最近、名前を探してばっかりだな」
ミオ:「大切な名前なんだね」
ユウキ:「……そうだと思う」
俺は足を止めた。
ユウキ:「ミオは、子どもの頃の約束って覚えてる?」
彼女も立ち止まった。
ミオ:「覚えている約束もあるよ」
ユウキ:「そっか」
ミオ:「ユウキは?」
ユウキ:「俺は……忘れてた約束があるみたいだ」
ミオは静かに俺を見つめた。
ミオ:「思い出せるといいね」
俺は頷いた。
彼女の隣にいると、不思議と焦りが薄れていく。
今すぐ答えを出さなくてもいい。
少しずつ確かめればいい。
そう思えた。
◇
夜。
自室へ戻った俺は、ノートを開いた。
『04班の未交付書簡が存在』
『差出人・受取予定者は当時確認済み』
『担当職員:水瀬真紀』
『D-04との関係は未確認』
俺は古い手紙を布袋へ戻した。
12年前、誰かが書いた言葉。
誰かに渡したかった手紙。
そして、今も俺の手元に残る小さな紙。
その関係を、確かめたい。
そのとき、端末が震えた。
『神崎ユウキ様へ』
差出人不明の個別メッセージ。
俺は開いた。
『書簡預かり確認票を見つけましたね。』
続けて、文章が表示される。
『その手紙は、差出人本人から担当職員へ渡されました。』
俺は息をのんだ。
最後の1行。
『受取予定者は、当日、その場所にはいませんでした。』
俺は画面を見つめた。
当日、その場所にいなかった。
それは、写真の配布保留理由と似ている。
だが、同じ人物のことなのかは分からない。
俺はノートを開き、最後に1行書き加えた。
『手紙が渡されなかった理由を、公開記録で確認する』
DAY37。
手紙を書いた子の名前は、まだ分からない。
だが、誰かが確かに、渡そうとしていた。
その気持ちだけは、記録の向こうに残っていた。
第1章 第43話 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。
ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!
**「Xはこの人だと思う!」**
**「このセリフが怪しい!」**
**「この行動、もしかして伏線?」**
**「この人物は逆にXではなさそう」**
など、どんな予想・考察でも大歓迎です。
もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。
皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。
そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!
果たして――
**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**
あなたの推理、お待ちしています!
毎日19時10分と20時10分更新予定です!!
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