↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/60

第1章 第37話「第1回プリン消失事件」

挿絵(By みてみん)


 DAY31。

 午前7時03分。

 事件は、食堂に響き渡る絶叫から始まった。

レン:「ないいいいいいいっ!」

 俺は箸を落とした。

ユウキ:「何だ!? Xが見つかったのか!?」

レン:「もっと深刻だ!」

 レンは冷蔵庫の前で震えていた。

 その手には、透明なプラスチック容器。

 蓋には油性ペンで、でかでかと名前が書かれている。

『一ノ瀬レン』

 間違いなく、レンのものだ。

 ただし。

 中身がない。

レン:「俺のプリンが……食われた……!」

 昨日、九条レイがXではないと判定された。

 その翌朝、俺たちは新たな犯人探しを始めることになった。

 容疑者は13人。

 被害品はプリン1個。

 賞金1億円を懸けたゲームは、思いもよらない方向へ進み始めた。

     ◇

 午前7時15分。

 食堂に全員が集められた。

 招集したのはレンだ。

レン:「みんな、聞いてくれ。昨夜、俺は冷蔵庫にプリンを入れた」

 彼は空の容器をテーブル中央に置いた。

レン:「蓋には名前を書いた。しかもフルネームだ。これを偶然自分のプリンと勘違いする奴はいない!」

ソウタ:「お前の名前が一ノ瀬レンだと知らない奴なら、いるかもしれないな」

レン:「1か月一緒に暮らしてるだろ!」

 シオンがノートを開く。

シオン:「最後にプリンを確認したのは?」

レン:「昨日の午後10時12分」

ユウキ:「細かいな」

レン:「楽しみすぎて、寝る前に3回見に行った」

アカリ:「食べればよかったのに」

レン:「朝食後のご褒美にする予定だったんだよ!」

 レンは空容器を掲げた。

レン:「これは窃盗だ! いや、殺人未遂だ!」

セナ:「プリンがなくなっても、生命には通常影響しないよ」

レン:「俺の心が死んだ!」

 セナは困ったように笑った。

     ◇

 午前8時。

 臨時捜査本部が設置された。

 場所は食堂。

 本部長はレン。

 捜査員は残り12人。

 ただし、犯人もその中にいる可能性がある。

シオン:「まず、事実を整理しよう」

 ホワイトボードに文字が並んだ。

『被害品:プリン1個』

『所有者:一ノ瀬レン』

『名前の記載:あり』

『最後の確認:DAY30 午後10時12分』

『発覚:DAY31 午前7時03分』

『容疑者:レンを含む13人』

 カイトが首を傾げた。

カイト:「レン自身も容疑者なのか?」

ソウタ:「寝ぼけて食べて忘れた可能性がある」

レン:「俺のプリンへの愛を疑うな!」

 ヒナがカメラを構えた。

ヒナ:「記録写真、撮っておくね!」

レン:「頼む。被害者の無念が伝わる角度で」

ユウキ:「プリンの容器を遺影みたいに持つな」

     ◇

 午前9時。

 容疑者への聞き取りが始まった。

 最初はアカリ。

シオン:「昨夜、冷蔵庫を開けた?」

アカリ:「開けたよ。お茶を取っただけ」

レン:「プリンは見た?」

アカリ:「見た。名前が大きすぎて、むしろプリンより先に名前が見えた」

 次はナナ。

ナナ:「私は夜、食堂に来てないと思う……」

 ハルカは水を取りに来たという。

 リナは翌朝の食材を確認したという。

 ヒナは夜景を撮りに外へ出た帰りに、冷蔵庫を開けたという。

 セナは白湯を作ったという。

 ミオは食堂へ来たが、冷蔵庫には触れていないという。

 全員の証言をシオンが書き留めていく。

 やがて、レイの番になった。

シオン:「レイは?」

レイ:「夜、食堂には来たよ」

レン:「何時?」

レイ:「正確には覚えてない。11時前後かな」

レン:「冷蔵庫は?」

レイ:「開けた」

 レンの目が鋭くなった。

レン:「……プリンは?」

レイ:「見た」

 食堂に緊張が走った。

レイ:「名前も読んだ」

レン:「読んだうえで!?」

レイ:「うん」

 レイは、なぜかそれ以上話さなかった。

     ◇

 午前10時。

 ソウタが空容器を調べていた。

ソウタ:「蓋は破損していない。容器の底にカラメルが少し残ってる」

レン:「そこまで食えよ、犯人!」

ユウキ:「怒るポイントが変わってるぞ」

ソウタ:「スプーンですくった跡があるな」

 カイトが真剣な顔で頷く。

カイト:「つまり、スプーンを使える奴が犯人か」

 沈黙。

シオン:「容疑者、減らないね」

レン:「くそっ。高度な犯行だ……!」

 俺は額を押さえた。

 昨日まで黒い封筒の移動経路を追っていた人間たちが、今日はプリンの食べ方を分析している。

 この島の捜査能力の使い道は、本当にこれでいいのだろうか。

     ◇

 午前11時。

 レンが新たな証拠を提出した。

 昨日、プリンを購入した際のSTORE Xの購入履歴だ。

『商品名:カスタードプリン』

『数量:1』

『購入者:一ノ瀬レン』

 シオンが頷く。

シオン:「所有者は確認できたね」

レン:「当たり前だ!」

 続いて、ヒナが昨夜の食堂の写真を見せた。

 午後9時過ぎ。

 冷蔵庫の扉が少し開いている。

 その前に立つ人影。

ヒナ:「たまたま撮れてたんだけど……」

 全員が画面をのぞき込んだ。

 黒っぽい服。

 細身の体格。

 だが、顔は写っていない。

レン:「犯人だ!」

ソウタ:「冷蔵庫を開けた人間だ。犯人とは限らない」

レン:「冷静な正論がつらい!」

 俺は写真を拡大した。

 人影の手には、何か小さなものがある。

 プリンの容器か。

 それとも、ただのコップか。

 判別できなかった。

     ◇

 正午。

 昼食の時間になった。

 しかし、レンは食べない。

レン:「犯人が分かるまで、俺は箸を取らない」

カイト:「そうか。じゃあ、その唐揚げもらうぞ」

レン:「それは食べる!」

 レンは即座に箸を取った。

ソウタ:「決意の寿命、4秒」

 俺は笑いをこらえながら、味噌汁を飲んだ。

 そのとき、レイがレンの空容器を見て、小さく呟いた。

レイ:「……そこまで好きだったんだ」

 俺は顔を上げた。

 レイはすぐに視線をそらした。

 何か、引っかかった。

     ◇

 午後1時。

 午後の捜査が始まった。

 議題は、動機。

シオン:「誰が、なぜレンのプリンを食べたのか」

レン:「俺への恨みだろうな」

アカリ:「昨日、プリンの話を15回くらいしてたから?」

レン:「そんなにしてた?」

ハルカ:「数えてないけど、かなりしてたわね」

ソウタ:「『明日の俺にはプリンがある』を3回聞いた」

レン:「幸せを共有してただけなのに!」

 リナが冷静に言った。

リナ:「単純に、甘いものが食べたかった可能性もあるよ」

セナ:「ストレスがたまっていたのかもしれないね」

 その言葉に、俺は昨日の投票を思い出した。

 第1回X投票。

 最多5票を集めたレイ。

 判定結果は、Xではない。

 だが、彼は1か月間疑われ、最後には全員の前で判定対象になった。

 俺はレイを見た。

 彼は何食わぬ顔でお茶を飲んでいる。

     ◇

 午後2時。

 俺はレイに声をかけた。

ユウキ:「レイ。昨日の投票、やっぱり嫌だった?」

レイ:「……うん」

 珍しく、即答だった。

レイ:「説明しても疑われて、結局5票も入ったからね」

ユウキ:「そっか」

レイ:「Xじゃないって分かったのはよかったけど、少し腹は立ったよ」

 俺は頷いた。

 当然だと思う。

 ただし、それとプリン事件は別の話だ。

 俺は慎重に聞いた。

ユウキ:「それで、昨夜は何してた?」

レイ:「食堂に来て、水を飲んだ」

ユウキ:「ほかには?」

 レイは黙った。

 俺は彼の顔を見つめた。

ユウキ:「……プリン、食べた?」

レイ:「その質問には、みんなの前で答える」

 俺は頭を抱えた。

ユウキ:「昨日も似たようなこと言ってたよな!?」

     ◇

 午後3時。

 全員が食堂に集まった。

 レンはホワイトボードの前に立つ。

レン:「ここまでの捜査で、犯人像が見えてきた」

ソウタ:「見えてないだろ」

レン:「推理には勢いが必要なんだよ!」

 シオンが整理した。

 夜間に冷蔵庫を開けた人物は複数。

 写真の人影は特定できない。

 プリンの所有者はレン。

 名前を読んだと認めた人物はレイ。

 ただし、これだけでは犯人と断定できない。

 俺は手を挙げた。

ユウキ:「レイが、みんなの前で答えるって言ってた」

 全員の視線がレイへ集まった。

 レイは静かに立ち上がる。

レイ:「……もう、いいか」

 レンが息をのんだ。

レン:「まさか……!」

     ◇

 午後3時10分。

 レイは、空のプリン容器を見つめた。

レイ:「食べたのは、僕だよ」

 食堂が静まり返った。

 レンの口が開いたまま止まる。

ユウキ:「……本当に?」

レイ:「うん。昨日の夜、冷蔵庫から取って食べた」

シオン:「名前が書いてあるのは分かってた?」

レイ:「分かってた」

レン:「なんでだよおおおお!」

 レイは少し考えた。

 そして、淡々と答えた。

レイ:「昨日、投票の対象者になって、なんとなくムカついたから」

 沈黙。

 俺は耳を疑った。

ユウキ:「……それだけ?」

レイ:「うん」

レン:「俺のプリン、関係なくない!?」

レイ:「そうだね」

レン:「そうだね、じゃねええええ!」

 レイは視線を落とした。

レイ:「冷蔵庫を開けたらプリンがあって、名前を見たらレンのだった。なんとなく食べたくなった」

ソウタ:「犯行動機が雑すぎる」

カイト:「逆恨みですらねえのかよ」

レイ:「……ごめん」

 俺は椅子にもたれた。

 昨日、Xではないと判定された男。

 その翌日、彼はプリン泥棒として自白した。

 この島の判定システムには、重大な抜け穴がある。

 Xではないことと、他人のプリンを食べないことは、まったく別だった。

     ◇

 午後4時。

 事件の全容が明らかになった。

 昨夜、レイは投票結果に腹を立てて食堂へ来た。

 水を飲もうと冷蔵庫を開けたところ、レンのプリンを発見。

 名前を確認。

 それでも取り出した。

 スプーンで食べた。

 空容器を冷蔵庫へ戻した。

 以上。

シオン:「計画性は?」

レイ:「ない」

ソウタ:「共犯者は?」

レイ:「いない」

リナ:「プリンを食べることで、投票結果が変わると思った?」

レイ:「思ってない」

 レンが両手で顔を覆った。

レン:「じゃあ本当になんとなくじゃん……」

 レイは頷いた。

レイ:「うん。なんとなく」

 俺は思わず笑ってしまった。

 昨日まで、レイの発言の裏に隠された意図を必死に考えていた。

 まさか、何も考えずに他人のプリンを食べる日が来るとは。

     ◇

 午後5時。

 判決が下された。

 もちろん、運営によるX判定ではない。

 俺たち13人による、ただの話し合いだ。

レン:「九条レイ。お前には、プリンを弁償してもらう!」

レイ:「分かった」

レン:「しかも、同じプリンを2個だ!」

レイ:「……2個?」

レン:「1個は弁償! もう1個は慰謝料!」

 レイは少し考えた。

レイ:「分かった。STORE Xで買っておく」

 レンは満足げに頷いた。

レン:「よし。これにて一件落着!」

 アカリが拍手した。

 ヒナも笑いながら拍手する。

 カイトは呆れた顔で肩をすくめた。

 ソウタはホワイトボードに、最後の一文を書き加えた。

『犯人:九条レイ』

『動機:なんとなくムカついた』

 シオンがその下に、小さく書いた。

『Xではないが、プリン泥棒ではある』

 俺は腹を抱えて笑った。

     ◇

 午後7時。

 夕食後、レイは約束どおりプリンを2個購入した。

 レンは受け取ると、蓋に名前を書いた。

『一ノ瀬レン』

 さらに、その下にもう1行。

『食べたら許さない』

 レイが横からのぞき込む。

レイ:「今度は食べないよ」

レン:「信用できるか!」

レイ:「昨日の判定で、僕がXじゃないことは確定したのに」

レン:「プリンに関しては前科1犯だろ!」

 俺たちは、また笑った。

 昨日までの緊張が、少しだけ薄れていく。

 この島に来てから、誰かを疑うことばかりだった。

 今日も犯人探しをした。

 だが、今回だけは、答えが出たあとに笑うことができた。

     ◇

 午後10時。

 自室に戻った俺は、ノートを開いた。

『DAY31 プリン事件』

『被害者:一ノ瀬レン』

『犯人:九条レイ』

『動機:第1回X投票の対象者になってムカついたため、なんとなく』

『処分:プリン2個の弁償』

 俺はペンを置いた。

 1億円ゲームが始まって31日。

 初めて、全員が納得する形で犯人が判明した。

 もっとも、被害品はプリンだったが。

 そのとき、端末が震えた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は身構えて開いた。

『本日の事件について、1つだけお伝えします。』

 続く文章を見て、俺は固まった。

『冷蔵庫に名前を書くことは、所有権を明示するうえで有効です。』

 さらに、最後の1行。

『ただし、九条レイには効果がありませんでした。』

ユウキ:「そこまで把握してるのかよ!」

 俺は端末を伏せた。

 Xの正体は、まだ分からない。

 だが、今日の犯人は分かった。

 そして明日から、俺たちは再び1億円と12年前の真相を追う。

 ……その前に。

 俺は自分の冷蔵庫の飲み物にも、名前を書いておくことにした。

第1章 第37話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


ブックマークお願いします♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。