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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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35/54

第1章 第35話「投票前夜の告白」

挿絵(By みてみん)


 DAY29。

 午前6時40分。

 第1回X投票まで、あと1日。

 俺は机の上に、2枚の写真を並べていた。

 1枚は、12年前の青風交流会で撮影されたP-004。

 幼い俺と、長い髪の少女が写っている。少女の手首には青いビーズ。裏面には『ゆうき』と、傷んで読めないもう1人の名前。

 もう1枚は、DAY1の港でヒナが撮った写真。

 顔の見えない人物が黒い長方形を持ち、そのバッグには青い飾りのようなものがついている。

 似ている。

 だが、同じ物だとは証明できない。

 俺は写真を閉じた。

 明日は投票だ。

 12年前の謎も、黒い封筒の謎も、すべて解けるとは思っていない。

 それでも、誰かをXだと判定するための1票を、曖昧な思い込みだけで投じるわけにはいかなかった。

     ◇

 午前8時。

 食堂に入ると、ホワイトボードに大きな文字が書かれていた。

『第1回X投票 DAY30』

 書いたのはシオンだった。

 彼はノートを閉じ、俺たちを見渡した。

シオン:「明日が初回投票だ。今日は新しい情報を集めるだけじゃなく、これまでの事実を整理したい」

 眼鏡をかけたソウタが頷く。

ソウタ:「特に、確認済みの情報と本人の申告を混ぜないことだな」

レン:「俺の申告も信用してくれ。昨日のプリンは食べてない」

アカリ:「誰も聞いてないよ?」

レン:「先に潔白を証明しておこうと思って」

カイト:「冷蔵庫の空容器、お前の名前書いてあったぞ」

レン:「証拠の管理が厳重すぎる!」

 小さな笑いが起きた。

 だが、レイは笑わなかった。

 銀髪の青年は、食堂の端で静かに端末を見つめていた。

     ◇

 午前9時。

 俺たちは、黒い封筒について判明したことを整理した。

 まず、INFO-001によって確認された事実。

『黒い封筒は、参加者13人のうち1人が島へ持ち込んだ』

 次に、レイの説明と受付控えで確認できたこと。

『レイは西側通路で封筒を拾った』

『拾得物として受付へ届けた』

『受付から搬送を依頼され、案内室へ運んだ』

 そして、まだ分からないこと。

『島へ持ち込んだ人物』

『西側通路の台へ置いた人物』

『封筒を運営が案内室へ戻した理由』

 シオンが最後の項目を指さした。

シオン:「レイが運んだ理由は搬送依頼で説明できる。でも、そもそもなぜ受付が参加者に運ばせたのかは分からない」

ソウタ:「運営の指示だったことと、その指示が妥当だったことも別だ」

 俺は頷いた。

 レイは封筒を運んだ。

 その事実は変わらない。

 だが、運んだからXだとは言えない。

     ◇

 午前10時。

 レイが席を立った。

レイ:「みんなに、話したいことがある」

 食堂が静まり返った。

 彼は端末をテーブルに置く。

レイ:「昨日、家に残っていた青風の写真について話したよね。青い飾りと、黒い封筒に似たものが写っていたって」

 俺は頷いた。

レイ:「あの写真を見た理由も、話しておく」

 レイは少し息を吸った。

レイ:「僕の親族は、青風の記録整理に関わっていた。家には、整理の途中で複写された写真が残っていたんだ」

リナ:「P-004の裏にあった『九条』という名字と、同じ人?」

レイ:「同じかどうかは、僕も確認できていない」

 レイは続けた。

レイ:「ただ、家にあった写真の中に、交流会の会場が写ったものがあった。そこに黒い封筒に似たものが写っていた」

 俺は身を乗り出した。

ユウキ:「封筒には、何か書いてあった?」

レイ:「覚えていない。写真の端に写っていただけだから」

 彼は視線を落とした。

レイ:「だから、DAY1に封筒を見つけたとき、気になった」

     ◇

 午前10時30分。

 カイトが腕を組んだ。

カイト:「それで、封筒を拾って届けたのか?」

レイ:「うん」

カイト:「でも、なんで黙ってた?」

 レイは少し間を置いた。

レイ:「……僕が届けた封筒が、みんなの前に現れたとき、怖くなった」

 俺は顔を上げた。

レイ:「拾って届けただけなのに、僕が持ち込んだと思われるかもしれない。そう考えた」

 彼は静かに続ける。

レイ:「それに、家の写真のことを話せば、青風に関係していた親族まで疑われると思った」

 食堂に沈黙が落ちた。

 レイは初めて、自分が黙っていた理由を言葉にした。

 それは、Xである証明ではない。

 だが、彼が疑われることを恐れていたのは、伝わってきた。

     ◇

 午前11時。

 俺はレイに、最後の確認をした。

ユウキ:「レイ。あの黒い封筒を、島へ持ち込んだ?」

 彼は俺を見た。

レイ:「持ち込んでいない」

ユウキ:「西側通路の台へ置いた?」

レイ:「置いていない。僕が見つけたときには、もう置かれていた」

ユウキ:「封筒の中身を、事前に知っていた?」

レイ:「知らなかった」

 俺は頷いた。

 これらは、レイ本人の申告だ。

 すべてを裏付ける記録は、まだない。

 それでも、彼はようやく質問に答えた。

     ◇

 昼休み。

 俺はミオと食堂の窓際に座っていた。

ミオ:「レイくん、話してくれたね」

ユウキ:「うん」

 俺は水を飲んだ。

ユウキ:「でも、まだ分からないことが多い」

ミオ:「そうだね」

 彼女は静かに頷いた。

ミオ:「明日の投票で、全部の謎が解けるわけじゃないから」

 俺は窓の外を見た。

 海は穏やかだった。

 この島に来て、もう29日。

 俺たちは1億円のために集められた。

 だが、今の俺にとっては、賞金よりも気になることがある。

 12年前、父は何をしたのか。

 青いビーズの少女は誰なのか。

 そして、この島にいるXは、何を知っているのか。

     ◇

 午後1時。

 資料閲覧室で、シオンが投票の仕組みを確認していた。

シオン:「明日の投票前に、ルールが再掲されるはずだけど、今のうちに整理しておこう」

 俺たちは画面を見た。

 参加者13人が、それぞれXだと思う人物を1人選ぶ。

 自分自身への投票も可能。

 最多票を得た人物が判定対象となる。

 ただし、最多票が同数の場合は、同数者による決選投票へ進む。

 決選投票では、対象者が弁明したあと、参加者全員が相談せず一斉に投票する。

 再び最多票が同数なら、その回の判定対象者はなし。

 判定結果として開示されるのは、1人だけ。

 俺は画面を見つめた。

 13人のうち、誰か1人がX。

 だが、投票は多数決だ。

 多数派が正しいとは限らない。

     ◇

 午後2時。

 全員で、投票前の意見交換を行うことになった。

 最初に口を開いたのはカイトだった。

カイト:「俺は、レイが気になってる。封筒のことを長く黙ってたからな」

 レイは何も言わなかった。

 アカリが続ける。

アカリ:「私も、まだ少し引っかかってる」

 ナナは不安そうに視線を落とした。

ナナ:「でも、拾って届けた記録はあるんだよね……」

 シオンが頷く。

シオン:「そう。レイが運んだことは確認できた。でも、Xである証拠にはならない」

 俺は全員の顔を見た。

 誰も、確信を持っていない。

 それでも明日、俺たちは1票を投じる。

     ◇

 午後3時。

 レイが俺の隣に来た。

レイ:「ユウキ。少し、いい?」

 俺たちは中庭へ出た。

 レイは空を見上げた。

レイ:「明日、僕に投票する?」

 俺はすぐには答えられなかった。

ユウキ:「……まだ決めてない」

レイ:「そう」

 彼は静かに頷いた。

レイ:「僕が黙っていたことは、事実だから」

ユウキ:「でも、黙ってたからXだとは思わない」

 レイは俺を見た。

ユウキ:「明日まで考える。自分で決めるよ」

 レイは、ほんの少しだけ笑った。

レイ:「それでいいと思う」

     ◇

 午後4時。

 俺は1人で資料閲覧室へ戻った。

 P-004を開く。

 幼い俺と、青いビーズの少女。

 裏面の読めない名前。

 レイが家で見たという、別の写真。

 そこに残されているという、俺の知らない名前。

 俺は端末を閉じた。

 明日の投票でレイが判定対象になったとしても、この謎が解けるとは限らない。

 そして、もしレイがXではなかったとしても、彼が知っている12年前の情報には意味がある。

 俺は、投票の結果だけで人を見ないようにしようと思った。

     ◇

 午後5時。

 食堂のホワイトボードには、明日の予定が書かれていた。

『DAY30 第1回X投票』

『投票前にルール再掲』

『投票後、最多票対象者の判定』

 レンがそれを見て、ため息をついた。

レン:「ついに来たか……」

アカリ:「緊張するね」

レン:「俺、こういうの苦手なんだよ。多数決で昼飯決めるときも、毎回負けるし」

ソウタ:「お前が毎回『プリン』って書くからだろ」

レン:「昼飯に夢を持って何が悪い!」

 笑いが起きた。

 だが、誰も明日のことを忘れてはいなかった。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、ノートを開いた。

『レイは封筒を拾い、受付へ届け、案内室へ運んだ』

『レイは島への搬入を否定』

『レイは12年前の青風の写真を見た記憶がある』

『青い飾りの持ち主は未確認』

『封筒を島へ持ち込んだ人物は未確認』

 俺はペンを置いた。

 レイを疑う理由はある。

 だが、Xだと断定できる証拠はない。

 ほかの参加者についても、同じだった。

 俺は、まだ投票先を決められずにいた。

 そのとき、端末が震えた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『明日は、第1回X投票です。』

 続けて、文章が表示される。

『九条レイは、自分が何をしたかを話しました。』

『ですが、彼がXであるかどうかは、あなたたちが確かめることです。』

 俺は画面を見つめた。

 最後の1行。

『投票の結果だけで、12年前の約束を忘れないでください。』

 俺は端末を伏せた。

 匿名のメッセージは、証拠ではない。

 だが、その言葉が胸に残った。

 俺は古い手紙を取り出す。

『ぜったいに、なくさないでね。』

 12年前の俺は、誰かと約束した。

 その相手の名前を、まだ思い出せない。

 明日、誰か1人の正体が判定されるかもしれない。

 だが、俺たちの過去は、それだけでは終わらない。

 DAY29。

 第1回X投票まで、あと1日。

 俺は明日のために、ノートを閉じた。

第1章 第35話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


ブックマークお願いします♪


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