第1章 第34話「青い飾りの持ち主」
DAY28。
午前7時12分。
第1回X投票まで、あと2日。
俺は昨夜届いたメッセージを読み返していた。
『青い飾りを見つけましたね。』
『その持ち主を、写真だけで決めないでください。』
港の写真に写っていた、青い小さな飾り。
12年前、幼い俺の隣にいた少女も、青いビーズを身につけていた。
同じ物なのか。
それとも、ただ色が似ているだけなのか。
俺は古い手紙を取り出した。
『ぜったいに、なくさないでね。』
裏には、青い部屋の引き出しを示す言葉。
この手紙を書いた相手の名前さえ、俺はまだ思い出せない。
投票が近いからといって、過去の謎まで都合よく答えが出るわけではなかった。
◇
午前8時。
食堂でヒナに声をかけた。
ユウキ:「昨日の写真、もう一度見せてもらえる?」
ヒナ:「もちろん!」
ヒナは端末を開いた。
DAY1、港の出口。
暗い服を着た人物の肩に、バッグがかかっている。
その持ち手の付け根に、小さな青いものが写っていた。
俺は画面を拡大する。
丸い飾りにも見える。
だが、輪郭はぼやけている。
ヒナ:「もっときれいに撮れてたらよかったんだけど……」
ユウキ:「十分だよ。これが写ってなかったら、気づけなかった」
シオンが隣から画面を確認した。
シオン:「元画像のままでも、素材や形は特定できないね」
ソウタ:「色も光の影響を受ける。青いビーズだと決めるのは早い」
眼鏡をかけたソウタが言う。
俺は頷いた。
分からないものを、分かったことにしない。
この島に来てから、何度も思い知らされたことだった。
◇
午前9時。
ヒナが初日の写真を撮影順に並べてくれた。
港。
荷物確認台。
出口。
分岐路。
中央施設。
俺たちは、青い飾りが写る人物を探した。
だが、正面から顔が見える写真はない。
リナが画面を指さした。
リナ:「これ、同じバッグかな」
分岐路の写真。
黒い長方形を持つ人物の肩にも、似た形のバッグがあった。
ただし、飾りは建物の影に隠れている。
ユウキ:「港から西側通路へ向かった人と、同じかもしれない」
シオン:「可能性はある。でも、バッグの形だけでは断定できないね」
俺はノートに書いた。
『青い飾りの人物=黒い長方形の人物、未確定』
等号の上に、大きな疑問符をつけた。
◇
午前10時。
俺たちは、参加者が初日に持っていたバッグを確認することにした。
もちろん、本人の了承を得たうえでだ。
レンは自分のバッグを机に置いた。
レン:「はい。中身も見る?」
ユウキ:「バッグだけでいい」
レン:「よかった。昨日の菓子の袋が、考古学的価値を持ち始めてる」
ソウタ:「捨てろ」
レン:「歴史への敬意がない!」
カイトのリュックには、青い飾りはなかった。
アカリのバッグには、小さな星形のチャーム。
ハルカのバッグには、何もついていない。
ナナは少し緊張した様子で、肩掛けバッグを見せてくれた。
ナナ:「これ……初日も使ってたと思う」
飾りはついていなかった。
だが、俺はすぐに結論を出さなかった。
飾りを外した可能性も、別のバッグを使った可能性もある。
全員の持ち物を見ても、写真の人物を特定できるとは限らない。
◇
午前11時。
レイが資料閲覧室に入ってきた。
俺は声をかけた。
ユウキ:「レイ。初日に使ってたバッグ、見せてもらえる?」
レイ:「いいよ」
彼は肩掛けバッグを机に置いた。
黒い革製。
昨日、写真で確認したものと同じだ。
持ち手には、小さな金具がついていた。
だが、青い飾りはない。
俺はレイを見た。
ユウキ:「初日から、何か外した?」
レイ:「外してないよ」
俺は頷いた。
レイのバッグと、港の写真に写ったバッグは形が違う。
少なくとも、同じバッグだと考える材料はなかった。
そのとき、レイが写真を見つめた。
レイ:「……この飾り」
ユウキ:「何か分かる?」
レイ:「似たものを見たことがある」
俺は息をのんだ。
ユウキ:「どこで?」
レイは少し考えた。
レイ:「12年前の、青風の写真」
◇
午前11時30分。
俺たちはP-004を開いた。
共同購入した未公開写真。
幼い俺と、長い髪の少女が写っている。
少女の手首には、青いビーズ。
裏面には『ゆうき』と、傷んで読めないもう1人の名前。
そして、『また、あおうね。』という言葉。
レイは画面を見つめた。
レイ:「僕が見たのは、これじゃない」
ユウキ:「えっ?」
レイ:「別の写真。青い飾りが、バッグについていた」
俺は身を乗り出した。
ユウキ:「その写真、どこにある?」
レイ:「……家にあった資料の中」
レイは少しだけ目を伏せた。
レイ:「親族が青風の記録整理に関わっていたって話、したよね」
俺は頷いた。
P-004の写真整理担当に記されていた『九条』という名字。
レイは、親族が青風の記録整理に関わっていたと認めていた。
だが、同一人物かどうかは、まだ確認できていない。
レイ:「家に残っていた資料の中に、交流会の写真があった。そこに、青い飾りのついたバッグが写っていたんだ」
俺は息をのんだ。
12年前の写真。
そして、DAY1の港の写真。
同じ飾りなのか。
それとも、似たものなのか。
今はまだ分からない。
◇
昼休み。
俺はミオと食堂の窓際に座った。
ミオ:「青い飾り、何か分かった?」
ユウキ:「レイが、12年前の写真で似たものを見たって」
ミオ:「そうなんだ」
俺は古い手紙を見つめた。
ユウキ:「俺、あの子の名前を思い出せないんだ」
ミオは静かに聞いていた。
ユウキ:「写真には一緒に写ってる。手紙も残ってる。それなのに、名前だけが分からない」
俺は苦笑した。
ユウキ:「ひどいよな。約束した相手を忘れるなんて」
ミオは少し間を置いた。
ミオ:「12年前のことだよ。覚えていないことがあっても、不思議じゃないと思う」
ユウキ:「……そうかな」
ミオ:「うん」
彼女は俺の手元の手紙を見た。
ミオ:「でも、その手紙は残していたんだね」
俺は頷いた。
何度も引っ越しをした。
荷物を整理したこともあった。
それでも、この手紙だけは捨てられなかった。
理由を説明できないまま、ずっと持っていた。
◇
午後1時。
資料閲覧室で、レイが家にあった資料について話し始めた。
レイ:「全部を持ってきたわけじゃない。覚えている範囲で話すよ」
シオンがノートを開く。
シオン:「その写真には、何が写っていた?」
レイ:「交流会の会場。子どもたちが何人かいて、端のほうにバッグがあった」
ユウキ:「持ち主は写ってた?」
レイ:「覚えてない」
俺は頷いた。
記憶だけでは、持ち主を特定できない。
レイは続けた。
レイ:「青い飾りは、丸いものがいくつかつながっていたと思う」
俺はP-004の少女の手首を見た。
青いビーズ。
形は似ているかもしれない。
だが、同じものだとは言えない。
◇
午後2時。
リナが公開資料を検索していた。
リナ:「青風の交流会、記念品の一覧がある」
俺たちは画面をのぞき込んだ。
『交流会 制作物・記念品』
『紙工作』
『手紙』
『写真』
『ビーズ小物』
俺は息をのんだ。
ユウキ:「ビーズ小物……」
リナが詳細を開く。
『参加児童が制作し、希望者同士で交換』
そこには、個別の制作物や交換相手の名前は書かれていなかった。
シオンが言った。
シオン:「青いビーズが交流会で作られたものなら、同じような飾りが複数あってもおかしくないね」
俺は頷いた。
写真の青い飾りが、12年前の少女のものだとは限らない。
むしろ、同じ材料で作られた別の品かもしれない。
◇
午後3時。
俺たちは、レイの話を全員に共有した。
アカリがP-004を見つめる。
アカリ:「この子、誰なんだろうね」
ナナも写真をのぞき込んだ。
ナナ:「……青風の交流会、私も行ったことがあると思う」
俺はナナを見た。
ユウキ:「何か思い出した?」
ナナは少し考えた。
ナナ:「ビーズを作ったことは、覚えてる。でも、誰に渡したかは……」
彼女は首を振った。
ナナ:「ごめん。分からない」
ユウキ:「謝らなくていいよ」
俺は頷いた。
12年前の記憶を、無理に引き出すことはできない。
それでも、少しずつ、過去の輪郭が見えてきていた。
◇
午後4時。
レイが俺に声をかけた。
レイ:「ユウキ。少し、いい?」
俺たちは中庭へ出た。
レイはしばらく黙っていた。
そして、静かに口を開く。
レイ:「僕が家で見た写真には、もう1つ気になるものが写っていた」
ユウキ:「何?」
レイ:「黒い封筒」
俺は息をのんだ。
ユウキ:「……12年前の写真に?」
レイ:「うん。少なくとも、黒い封筒に似たものが写っていた」
俺は言葉を失った。
12年前の青風。
黒い封筒。
そして、DAY1に島へ持ち込まれた封筒。
同じものなのか。
それとも、ただ似ているだけなのか。
レイ:「だから、最初にあの封筒を見たとき、気になったんだ」
ユウキ:「……それで、写真を撮った?」
レイ:「写真を撮ったときには気づいてなかった。あとから封筒を見つけて、昔の写真を思い出した」
俺は頷いた。
レイが封筒にこだわっていた理由が、少しだけ分かった気がした。
◇
午後5時。
俺たちは、今日の調査結果をホワイトボードにまとめた。
『DAY1の港の写真に、青い飾りのようなものが写っている』
『レイは12年前の青風の写真で、似た飾りを見た記憶がある』
『交流会ではビーズ小物が制作・交換されていた』
『青い飾りの持ち主は未確認』
『レイは12年前の写真に、黒い封筒に似たものも写っていたと証言』
ソウタが言った。
ソウタ:「現時点では、12年前の封筒とDAY1の封筒が同じ物かどうかは分からない」
シオン:「でも、レイが初日の封筒を気にしていた理由にはつながるね」
俺は頷いた。
レイは何かを隠していた。
だが、隠していた理由が、Xであることと同じとは限らない。
それでも、投票まであと2日。
全員が納得できる答えには、まだ届いていなかった。
◇
夜。
自室に戻った俺は、古い手紙を机に置いた。
『ぜったいに、なくさないでね。』
12年前、誰かが俺に託した言葉。
俺は、その相手を忘れている。
そして、黒い封筒は、12年前の写真にも写っていたかもしれない。
俺はノートを開いた。
『青い飾り』
『12年前の写真』
『黒い封筒』
『九条レイ』
4つの言葉を並べる。
まだ、線ではつながない。
証拠が足りないからだ。
そのとき、端末が震えた。
『神崎ユウキ様へ』
差出人不明の個別メッセージ。
俺は開いた。
『青い飾りの持ち主を探していますね。』
続けて、文章が表示された。
『12年前、青いビーズは1人だけのものではありませんでした。』
俺は息をのんだ。
最後の1行。
『九条レイが見た写真には、あなたがまだ知らない名前が残されています。』
俺は画面を見つめた。
名前。
P-004の裏に残された、読めないもう1人の名前。
それと関係があるのか。
だが、匿名のメッセージを証拠にはできない。
俺は端末を伏せた。
DAY28。
第1回X投票まで、あと2日。
レイは、明日までに何を話すのだろう。
そして俺は、投票の日に誰を選ぶのだろう。
まだ、答えは出ていなかった。
第1章 第34話 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。
ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!
**「Xはこの人だと思う!」**
**「このセリフが怪しい!」**
**「この行動、もしかして伏線?」**
**「この人物は逆にXではなさそう」**
など、どんな予想・考察でも大歓迎です。
もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。
皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。
そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!
果たして――
**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**
あなたの推理、お待ちしています!
毎日19時10分と20時10分更新予定です!!
ブックマークお願いします♪




