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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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第1章 第31話「封筒を見た、もう1人」

挿絵(By みてみん)


 DAY25。

 午前7時03分。

 第1回X投票まで、あと5日。

 俺はノートの最後のページを開いた。

『レイは、何を確認すれば答えられるのか』

 昨日、九条レイは黒い封筒を島へ持ち込んだかという質問への回答を保留した。

 その一方で、封筒が発見される前に西側通路へ置かれていたことを示す写真を持っていた。

 彼は何かを知っている。

 だが、知っていることと、Xであることは違う。

 俺はペンを握った。

 投票の日までに、確かめられることを確かめるしかない。

     ◇

 午前8時。

 食堂には、すでに数人が集まっていた。

 レンが俺の顔を見るなり、眉を上げる。

レン:「ユウキ、寝た?」

ユウキ:「寝たよ」

レン:「何時間?」

ユウキ:「……数えるのはやめよう」

ソウタ:「数えられないほど寝たのか、数えたくないほど寝てないのか」

ユウキ:「後者です」

 眼鏡をかけたソウタが、呆れたように息を吐いた。

 その隣で、シオンがノートを開く。

シオン:「今日はレイに、回答を保留している理由をもう少し具体的に聞こう。質問そのものを変えたほうがいいかもしれない」

ユウキ:「質問を?」

シオン:「『持ち込んだ?』だけじゃなくて、『何を確認したい?』って」

 俺は頷いた。

 昨夜、俺がノートに書いたのと同じことだった。

     ◇

 午前9時。

 中庭でレイを見つけた。

 彼はベンチに座り、島内地図を見ていた。

ユウキ:「レイ。昨日の続き、いいか?」

レイ:「うん」

 俺は隣に座った。

ユウキ:「封筒を持ち込んだかどうか、今は答えられないんだよな」

レイ:「そうだね」

ユウキ:「じゃあ、何を確認できたら答えられる?」

 レイは地図を閉じた。

 少しの沈黙のあと、口を開く。

レイ:「……封筒を、僕が見た場所へ運んだ人」

ユウキ:「西側通路に置いた人?」

レイ:「そこまでは分からない。僕が見たのは、運んでいる途中だったから」

 俺は息をのんだ。

ユウキ:「……見たのか?」

 レイは頷いた。

レイ:「DAY1。港から中央施設へ移動するとき、黒い封筒らしきものを持っている人を見た」

 昨日の港の写真。

 荷物確認台の近くに写っていた、顔の見えない人物。

 俺は端末を取り出した。

ユウキ:「この人?」

 レイは画面を見つめた。

レイ:「……たぶん、そう」

ユウキ:「誰だった?」

 彼はすぐには答えなかった。

レイ:「顔を見てないんだ」

 俺は肩の力を抜いた。

 レイは続ける。

レイ:「でも、その人が持っていたものには、見覚えがある」

     ◇

 午前10時。

 俺たちは資料閲覧室に集まった。

 レイが、DAY1に見たものを説明する。

レイ:「港の荷物確認台で、黒い封筒のようなものを持っている人がいた。僕は、その人の後ろを歩いていた」

 シオンがノートに書き込む。

シオン:「封筒だと確認できた?」

レイ:「その場では確認してない。あとから、あの封筒に似ていると思った」

ソウタ:「人物の特徴は?」

レイ:「暗い色の服。顔は見てない」

 ヒナが昨日の写真を開いた。

ヒナ:「じゃあ、この人かもしれないんだね」

レイ:「うん」

 俺はレイを見た。

ユウキ:「それを、どうして昨日まで話さなかった?」

 レイは少しだけ目を伏せた。

レイ:「……僕が見たものを話せば、その人が疑われると思ったから」

 俺は言葉を失った。

レイ:「顔も見てないのに、服や持ち物だけで誰かを疑うことになる。それが嫌だった」

 その説明は理解できる。

 だが、投票まで時間がない。

ユウキ:「でも、黙ってたら、今度はレイが疑われる」

レイ:「……そうだね」

 レイは静かに頷いた。

     ◇

 午前11時。

 俺たちは、港の写真を改めて確認した。

 黒い長方形を持つ人物。

 暗い色の服。

 顔は写っていない。

 ただし、手元には、もう1つ特徴があった。

 細い紐のようなものが、袖口から垂れている。

ヒナ:「これ、バッグの紐かな?」

 カイトが画面をのぞき込む。

カイト:「腕につけるストラップにも見えるな」

 俺は写真を拡大した。

 だが、画質が粗く、形ははっきりしない。

 シオンが言った。

シオン:「この特徴だけで人物を特定するのは難しいね」

 俺は頷いた。

 また、答えには届かなかった。

     ◇

 昼休み。

 俺は食堂の窓際で、ミオと向かい合っていた。

ミオ:「レイくん、話してくれたんだね」

ユウキ:「うん。封筒らしきものを持ってた人を見たらしい」

ミオ:「そうなんだ」

 俺はスプーンを置いた。

ユウキ:「でも、顔は見てないって」

 ミオは少し考えた。

ミオ:「それなら、レイくんが見たものと、写真に写っているものが同じかどうかも確かめたいね」

ユウキ:「……そうだな」

 俺は頷いた。

 レイが見たもの。

 ヒナの写真に写ったもの。

 西側通路に置かれた封筒。

 この3つが同じ物だと証明できれば、搬入経路がつながる。

 ただし、現状では、まだつながっていない。

     ◇

 午後1時。

 資料閲覧室へ戻ると、リナが公開資料を調べていた。

リナ:「西側通路の利用記録、少しだけ公開されてる」

 俺たちは画面をのぞき込んだ。

『DAY1 施設利用記録』

『西側通路:通行可能』

『管理棟搬入口:参加者立入不可』

 俺は頷いた。

 西側通路そのものは、参加者が通れる場所だった。

 だが、管理棟の搬入口へ入ることはできない。

 カイトが言った。

カイト:「封筒を台に置くなら、搬入口に入る必要はねえな」

 その通りだった。

 レイがDAY3に管理棟付近にいたことも、封筒の搬入と直接結びつくわけではない。

     ◇

 午後2時。

 ヒナが写真の撮影順を確認していた。

ヒナ:「DAY1の写真、撮った順番に並べてみたよ」

 画面には、港から中央施設へ向かうまでの写真が並んでいた。

 荷物確認台。

 港の出口。

 分岐路。

 中央施設の正面。

 俺は1枚ずつ確認した。

 そのとき、分岐路の写真で手が止まった。

ユウキ:「……これ」

 画面の端に、暗い色の服を着た人物が写っていた。

 手元には、黒い長方形。

 ただし、顔は建物の影に隠れている。

 俺は息をのんだ。

 港の写真に写っていた人物と、服装が似ている。

 だが、同一人物かどうかは分からない。

 ヒナが撮影時刻を確認した。

ヒナ:「港の写真から、数分後だね」

 俺は地図を開いた。

 その分岐路を左へ進めば、中央施設の正面入口。

 右へ進めば、西側通路。

 写真の人物は、右側へ向かっていた。

ユウキ:「……西側通路だ」

     ◇

 午後3時。

 俺たちはレイを呼んだ。

 分岐路の写真を見せると、彼は画面を見つめた。

レイ:「……この人だと思う」

ユウキ:「港で見た人?」

レイ:「うん。服と、手に持ってるものが似てる」

 シオンが確認する。

シオン:「同じ人物だと断定できる?」

レイ:「できない。でも、僕が見たのは、このあたりだった」

 俺は頷いた。

 港。

 分岐路。

 西側通路。

 黒いものを持つ人物の移動が、少しずつ見えてきた。

 ただし、まだ顔は分からない。

     ◇

 午後4時。

 俺たちは全員に、今日の調査結果を共有した。

 食堂のホワイトボードには、3枚の写真を並べた。

『港の荷物確認台』

『分岐路』

『西側通路の台』

 アカリが画面を見つめる。

アカリ:「……これ、同じ封筒なのかな」

 ソウタが答える。

ソウタ:「可能性はある。ただし、写真だけでは確認できない」

 カイトがレイを見る。

カイト:「で、お前は何を知ってたんだ?」

 レイは静かに答えた。

レイ:「港で、封筒らしきものを持っている人を見た。それだけだよ」

 カイトは腕を組んだ。

カイト:「だったら、最初から言ってくれりゃよかっただろ」

レイ:「……そうだね」

 レイは否定しなかった。

 俺は彼を見つめた。

 レイの説明には、筋が通っている。

 だが、重要な情報を伏せていたことも事実だ。

 そして、黒い封筒を持ち込んだかという質問には、まだ答えていない。

     ◇

 午後5時。

 俺はレイと2人で、西側通路へ向かった。

 昨日と同じ台。

 黒い封筒が置かれていた場所。

 俺は立ち止まった。

ユウキ:「レイ。今日、話してくれてありがとう」

レイ:「……うん」

ユウキ:「でも、まだ聞きたいことがある」

 彼は俺を見た。

ユウキ:「黒い封筒を、島へ持ち込んだ?」

 レイは少し間を置いた。

レイ:「……第1回投票の前には、答える」

 また、同じ答えだった。

 俺は拳を握った。

ユウキ:「その答えを待ってる間に、誰かがレイに投票するかもしれないぞ」

レイ:「分かってる」

 彼は静かに言った。

レイ:「それでも、今は答えられない」

 俺は彼を見つめた。

 レイは、何かを守ろうとしているのだろうか。

 それとも、何かを隠しているのだろうか。

 今の俺には、分からなかった。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、今日の情報をノートにまとめた。

『レイは、港で黒い封筒らしきものを持つ人物を見た』

『その人物の顔は確認していない』

『分岐路の写真に、似た服装の人物が写っている』

『その人物は西側通路方面へ向かっていた』

『レイは、封筒を持ち込んだかという質問への回答を保留』

 俺はペンを置いた。

 黒い封筒を持ち込んだ人物。

 運んだ人物。

 置いた人物。

 それぞれが同じかどうかは、まだ分からない。

 そして、レイがXである証拠もない。

 そのとき、端末が震えた。

『STORE Xよりお知らせ』

 新しい情報商品が追加された。

『INFO-017:DAY1・西側通路の通行記録』

『価格:90,000円』

 商品説明には、こう書かれていた。

『DAY1、西側通路を通行した人物に関する記録の一部を開示します』

 俺は画面を見つめた。

 通行した人物。

 もしこれを買えば、封筒を運んだ人物を絞り込めるかもしれない。

 だが、90,000円。

 今月の生活費を考えれば、簡単には出せない金額だった。

 俺は購入画面を閉じた。

 その直後。

 別の通知が届いた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『九条レイは、今日、あなたに見たものを話しました。』

 続けて、文章が表示される。

『ですが、見たものを話すことと、自分が何をしたかを話すことは、同じではありません。』

 俺は息をのんだ。

 最後の1行。

『第1回投票まで、あと5日。』

『彼が答えなかった質問を、忘れないでください。』

 俺は端末を伏せた。

 DAY25。

 第1回X投票まで、あと5日。

 九条レイは、まだ答えていない。

 そして俺たちは、彼が何をしたのかを、まだ知らない。

第1章 第31話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


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