↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/60

第1章 第30話「黒い封筒を運んだ者」

挿絵(By みてみん)


 DAY24。

 午前6時48分。

 俺は昨夜届いた個別メッセージを、もう一度読んでいた。

『九条レイが答えなかった質問には、まだ続きがあります。』

 レイに聞いたのは、黒い封筒を島へ持ち込んだかどうか。

 彼は答えなかった。

 ただし、第1回投票の前には答えると言った。

 その理由を、俺はまだ知らない。

 俺はノートを開いた。

『持ち込んだ人物』

『置いた人物』

『封筒を最初に見つけた人物』

 この3つは、同じとは限らない。

 昨日、レイが撮影した写真から、黒い封筒は発見前に中央施設の西側通路へ置かれていたことが分かった。

 ならば、次に確かめるべきなのは――。

ユウキ:「……誰が、そこへ運んだのか」

     ◇

 午前8時。

 食堂でレンに話すと、彼は朝食の皿を見つめながら頷いた。

レン:「封筒を運んだ人か。そういえば、あの通路って誰でも通れたよな」

ユウキ:「うん。少なくとも、立ち入り禁止の表示はなかった」

ソウタ:「封筒がそこにあったという事実と、レイが撮影したという事実は別だ。写真を撮った人間が置いたとは限らない」

 眼鏡をかけたソウタが、淡々と言う。

レン:「じゃあ、俺が昨日のトーストを焦がした犯人じゃない可能性もある?」

ソウタ:「お前がトースターに入れたところを見た」

レン:「目撃証言が強すぎる!」

 俺は笑いながらも、昨日の写真を開いた。

 西側通路の台。

 その上に置かれた黒い封筒。

 周囲に人物は写っていない。

 この写真だけでは、誰が置いたか分からない。

     ◇

 午前9時。

 資料閲覧室には、シオン、リナ、ヒナ、カイトが集まっていた。

 俺たちは中央施設の案内図を広げた。

 西側通路には、港から中央施設へ向かう道と、管理棟へ続く道が接続している。

 カイトが指で地図をなぞった。

カイト:「港から来た人間が、そのまま西側通路へ入ることもできるな」

ヒナ:「じゃあ、封筒を持ってきた人が、直接置いた可能性もある?」

シオン:「ある。ただし、途中で誰かに渡した可能性も残るね」

 俺は頷いた。

 INFO-001が確認したのは、参加者13人のうち1人が封筒を島へ持ち込んだということだけ。

 それ以降の移動については、何も確定していない。

 リナが端末を操作した。

リナ:「昨日追加されたINFO-015、まだ購入されてない」

『INFO-015:DAY1の参加者移動記録』

『価格:50,000円』

 港から中央施設へ移動した際の並び順を開示する商品だ。

 俺は説明を読み直した。

ユウキ:「並び順が分かっても、封筒を持っていた人までは分からないな」

シオン:「そうだね。昨日の写真に写っていた人物を確認するには役立つけど、それだけで購入するのは慎重に考えたい」

 俺たちは、まず無料で確認できる記録を探すことにした。

     ◇

 午前10時。

 検索結果の中に、1件の資料が見つかった。

『DAY1 参加者誘導記録』

 公開されていたのは、移動開始と到着の時刻だけだった。

『南側港 出発』

『中央施設 到着』

 個別の移動経路は記されていない。

 ヒナが首をかしげた。

ヒナ:「これじゃ、誰がどこを通ったか分からないね」

 俺も頷いた。

 そのとき、リナが別の項目を見つけた。

リナ:「関連資料に、荷物の搬送記録がある」

『参加者手荷物・搬送区分』

 俺たちは開いた。

 そこには、参加者が自分で運ぶ手荷物と、運営側がまとめて運ぶ大型荷物の区分が書かれていた。

『小型手荷物:参加者本人が携行』

『大型荷物:確認後、指定場所へ搬送』

 俺は画面を見つめた。

ユウキ:「黒い封筒なら、小型手荷物に入るか」

ソウタ:「入るだろうな。ただし、実際に誰が持っていたかは分からない」

 また、同じところへ戻ってきた。

     ◇

 午前11時。

 俺はレイを探した。

 彼は中庭のベンチに座り、端末を見ていた。

ユウキ:「レイ。昨日の続き、聞いてもいいか?」

レイ:「うん」

 俺は隣に座った。

ユウキ:「黒い封筒を、最初に見つけたのは誰だと思う?」

 レイは少し考えた。

レイ:「僕が撮った写真には、もう置かれていた。だから、少なくとも撮影前に誰かがそこへ運んでいる」

ユウキ:「その人を見た?」

レイ:「見ていないよ」

 俺は頷いた。

ユウキ:「じゃあ、写真を撮ったとき、封筒の近くに誰かいた?」

レイ:「いなかった」

 短い答えだった。

 俺は彼を見た。

ユウキ:「……どうして、あの場所を撮ったんだ?」

 レイは端末を閉じた。

レイ:「道を覚えるため。初日に、島の地図だけじゃ分かりにくい場所があったから」

 昨日と同じ説明だ。

 不自然ではない。

 だが、まだ聞けていないことがある。

ユウキ:「レイ。あの封筒を、島へ持ち込んだ?」

 レイは少しだけ目を伏せた。

レイ:「……まだ答えられない」

 俺は息を吐いた。

ユウキ:「第1回投票までには答えるんだよな?」

レイ:「約束する」

 彼は静かに頷いた。

     ◇

 昼休み。

 俺はミオと食堂の窓際に座った。

ミオ:「レイくんとは話せた?」

ユウキ:「うん。でも、まだ答えてくれなかった」

ミオ:「そうなんだ」

 俺はスプーンを置いた。

ユウキ:「あいつが何を隠してるのか、分からない」

 ミオは少し考えた。

ミオ:「隠していることがあるのと、Xであることは、同じじゃないよね」

 俺は頷いた。

ユウキ:「……そうだな」

 この島にいる13人は、全員が過去の一部を隠していた。

 INFO-004で確認された事実だ。

 レイだけが特別というわけではない。

 それでも、彼が黒い封筒について答えを避けていることは、無視できなかった。

ミオ:「ユウキくんは、どうしたい?」

ユウキ:「投票までに、ちゃんと理由を聞きたい」

 ミオは静かに頷いた。

ミオ:「うん」

     ◇

 午後1時。

 資料閲覧室へ戻ると、ヒナが新しい写真を見つけていた。

ヒナ:「ユウキくん! これ、見て!」

 画面には、DAY1の港が写っていた。

 参加者たちが、中央施設へ向かって歩き始める直前の写真だ。

 その中に、レイがいた。

 彼の手には、小さな肩掛けバッグ。

 そして、隣にはレン。

 昨日の黒い長方形は、やはりレンが持っていた案内冊子だった可能性が高い。

 だが、ヒナが指さしたのは、そこではなかった。

ヒナ:「この人、見て」

 写真の奥。

 港の荷物確認台の近くに、もう1人の人物が写っていた。

 顔は見えない。

 その人物の手元に、黒い封筒のようなものがあった。

 俺は息をのんだ。

ユウキ:「……また黒いものだ」

 シオンが画面を拡大した。

シオン:「形は封筒に似ている。でも、今回も断定はできないね」

 俺は頷いた。

 ただし、昨日の写真とは違う。

 今回は、港の荷物確認台の近くだ。

 もしこれが黒い封筒なら、島へ持ち込まれた直後の姿かもしれない。

     ◇

 午後2時。

 俺たちは写真の人物を特定しようとした。

 写っているのは、肩から下だけ。

 服は暗い色。

 手元には黒い長方形。

 体格だけでは、男女も分からない。

 リナが言った。

リナ:「INFO-015の並び順が分かれば、少しは絞れるかもしれない」

 俺は頷いた。

 だが、50,000円を払っても、人物が確定する保証はない。

 俺たちは購入を保留した。

     ◇

 午後3時。

 俺はもう一度、レイに写真を見せた。

ユウキ:「これ、港で撮られた写真なんだ。何か覚えてないか?」

 レイは画面を見つめた。

 その表情が、わずかに変わった。

レイ:「……この写真、いつ撮ったの?」

ユウキ:「DAY1。到着直後だと思う」

 レイは黙った。

ユウキ:「何か分かる?」

 彼は少し間を置いて答えた。

レイ:「……確認したいことが、もう1つ増えた」

 俺は眉を寄せた。

ユウキ:「何を?」

レイ:「この写真に写っている人が、どこへ向かったのか」

 俺は画面を見つめた。

 港の荷物確認台。

 黒い長方形。

 顔の見えない人物。

 そして、西側通路に置かれていた封筒。

 もし同じ物なら、港から中央施設へ運ばれたことになる。

 だが、途中の記録はない。

     ◇

 午後4時。

 俺たちは、写真に写る人物の移動経路を調べるため、島内地図を確認した。

 港から中央施設へ向かう道は、途中で2つに分かれている。

 1つは正面入口へ。

 もう1つは、西側通路へ。

 カイトが言った。

カイト:「荷物確認台から西側通路なら、遠回りしなくても行ける」

 俺は頷いた。

 封筒を持っていた人物が、そのまま西側通路へ向かった可能性はある。

 だが、写真だけでは分からない。

 そのとき、ソウタが口を開いた。

ソウタ:「……レイが確認したいのは、そこかもしれないな」

ユウキ:「どういうこと?」

ソウタ:「封筒を持ち込んだ人物と、置いた人物が同じかどうか。レイは、その違いを気にしている」

 俺はレイの言葉を思い出した。

『封筒が置かれたのは、いつなのか。』

 彼は最初から、搬入と設置を分けて考えていた。

 なぜだろう。

     ◇

 午後5時。

 食堂に戻ると、参加者たちが集まっていた。

 俺たちは今日の調査結果を共有した。

『港の荷物確認台付近に、黒い長方形を持つ人物が写っている』

『人物の顔は確認できない』

『黒い長方形が封筒かどうかは未確認』

『港から西側通路へ向かう経路は存在する』

『レイは封筒の搬入について、回答を保留している』

 アカリが不安そうに言った。

アカリ:「……レイくん、何か知ってるんじゃない?」

 レイは黙っていた。

 カイトが腕を組む。

カイト:「知ってるなら、話してくれよ。投票まで時間ねえんだぞ」

 レイは顔を上げた。

レイ:「第1回投票の前には話す」

 その言葉に、食堂が静まり返った。

 俺は彼を見た。

 レイは、何かを確認しようとしている。

 そして、その答えが出るまでは話さないつもりらしい。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、今日の写真を並べていた。

 港の荷物確認台。

 黒い長方形を持つ人物。

 西側通路の台。

 黒い封筒。

 2枚の写真の間には、まだ空白がある。

 俺はノートに書いた。

『港から西側通路までの移動』

 そのとき、端末が震えた。

『STORE Xよりお知らせ』

 新しい情報商品が追加された。

『INFO-016:DAY1・西側通路の記録』

『価格:70,000円』

 商品説明を開く。

『DAY1、西側通路に関する記録の一部を開示します』

 俺は画面を見つめた。

 記録の一部。

 何が分かるのかは、まだ不明だ。

 そして、続けて別の通知が届いた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『黒い封筒を運んだ人物を探していますね。』

 続けて、文章が表示された。

『運んだ人物が、封筒の中身を知っていたとは限りません。』

 俺は息をのんだ。

 最後の1行。

『九条レイが答えを出す前に、あなたは何を確かめますか?』

 俺は端末を伏せた。

 DAY24。

 第1回X投票まで、あと6日。

 レイは、まだ答えない。

 だが、俺たちもまた、封筒を持ち込んだ人物と、置いた人物を同じだと思い込んでいたのかもしれない。

 俺はノートに、もう1つの質問を書き加えた。

『レイは、何を確認すれば答えられるのか』

 その答えを聞くために、明日、もう一度彼と話そう。

第1章 第30話 完

第21〜30話 あらすじ・重要事項まとめ

あらすじ

ユウキたちは、12年前の青風交流会で使われた「青い部屋」と、古い手紙に記された「04」の意味を追う。調査の結果、04は交流会の班番号であり、04班の活動場所が青い壁の遊戯室だったと判明する。

共同購入した未公開写真P-004には、幼いユウキと少女が写っていた。裏面には「ゆうき」と、傷んで読めないもう1人の名前、そして「また、あおうね。」という言葉が残されていた。

一方、写真の整理担当に「九条」という名字が見つかり、レイの親族が青風の記録整理に関わっていたことが判明。さらにレイは、初日の黒い封筒が発見される前に撮影された写真を持っていた。

黒い封筒を島へ持ち込んだか尋ねられたレイは回答を保留し、第1回投票前には答えると約束する。参加者の間に、レイへの疑惑が広がり始める。

判明した重要事項

- D-04と04班は別の番号体系。 D-04は閉鎖時の手紙類の管理番号で、古い手紙の「04」は班番号の可能性が高い。

- 04班の担当職員は、ナナの母・水瀬真紀。

- 04班の記念写真P-004には幼いユウキが写り、裏面に2人の名前と再会の約束が残されていた。

- レイの親族は青風の記録整理に関与していたが、写真整理担当の「九条」と同一人物かは未確認。

- レイはDAY1、黒い封筒が西側通路に置かれている写真を撮影していた。

- 港の写真には黒い長方形を持つ人物が写っているが、封筒かどうかも人物の正体も不明。

- 封筒を持ち込んだ人物・運んだ人物・置いた人物は、同一とは限らない。

- レイがXである証拠はまだない。本人は封筒についての回答を保留している。

第30話終了時点:DAY24。第1回X投票まで、あと6日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。