第1章 第26話「写真の裏に残された名前」
DAY20。
午前6時52分。
俺は端末に表示された写真を見つめていた。
12年前の青風交流会。
04班の活動記録として撮影された、A-012。
青い壁の遊戯室には、引き出しが2つある窓際机と、『おもいで』と書かれた箱が写っている。
その写真の端にいる黒髪の少年。
服の模様は、全体写真に写る幼い俺とよく似ていた。
昨夜の個別メッセージは、こう告げていた。
『あなたが探している名前は、写真の表ではなく、裏にあります。』
送り主は分からない。
そもそも、どの写真の裏なのかも書かれていない。
俺はノートを開いた。
『A-012の原本に裏面はあるか』
『04班の配布用記念写真は残っているか』
『裏面に名前が書かれているか』
今日の目標は、この3つだ。
◇
午前8時。
食堂でレンに話すと、彼は朝食のトーストを裏返した。
レン:「裏側に秘密があるってことだな」
ユウキ:「パンの裏には何もないぞ」
レン:「焦げてる」
ソウタ:「それは秘密じゃなくて調理結果だ」
レンは焦げた部分を見つめた。
レン:「……12年前の事件より先に、今日の朝食の真相が判明した」
俺は笑いながら席に座った。
昨日まで、写真の表面ばかり調べていた。
配布用の写真なら、裏に日付や名前が書かれていてもおかしくない。
ただし、それを確かめるまでは仮説だ。
◇
午前9時。
資料閲覧室には、シオン、リナ、ソウタ、ヒナが集まっていた。
俺は昨夜のメッセージを見せた。
シオン:「写真の裏か。まず、公開写真の原本情報を確認しよう」
ヒナ:「デジタル化したとき、裏面を撮ってない可能性もあるね」
俺たちはA-012の登録情報を開いた。
『資料種別:写真』
『公開画像:表面』
『原本:保管記録あり』
『裏面画像:未公開』
俺は息をのんだ。
ユウキ:「……裏面がある」
ヒナが頷いた。
ヒナ:「でも、裏に何か書いてあるかは、まだ分からないよ」
その通りだった。
俺たちは続けて、配布用記念写真の記録を探した。
検索結果は1件。
『青風交流会・班別記念写真配布記録』
鍵のマークがついていた。
閲覧制限中。
ユウキ:「またか……」
シオンは画面を見つめた。
シオン:「配布記録の登録情報だけでも見てみよう」
◇
午前9時35分。
配布記録の詳細には、写真の種類が記されていた。
『01班〜04班の班別記念写真』
『配布用写真には、班番号および撮影日を裏面に記載』
俺は思わず顔を上げた。
ユウキ:「裏に班番号がある!」
リナが続きの文章を読んだ。
リナ:「でも、参加者の名前を書くとは書いてないね」
俺は頷いた。
昨夜のメッセージが指しているのは、この写真とは限らない。
班番号と撮影日だけなら、約束した相手の名前は分からない。
そのとき、ヒナが画面の下を指さした。
ヒナ:「関連資料があるよ」
『記念写真・配布前確認票』
公開範囲は一部公開。
俺たちはすぐに開いた。
◇
午前10時。
確認票には、配布前の点検項目が並んでいた。
『班番号の記載』
『撮影日の記載』
『配布先の照合』
『児童による自由記入欄の確認』
俺は手を止めた。
ユウキ:「自由記入欄……?」
ヒナが頷く。
ヒナ:「写真の裏に、子どもが何か書けたんだ」
俺たちは説明を読んだ。
『希望する児童は、写真裏面の余白に名前や短いメッセージを記入できる』
俺は胸が高鳴るのを感じた。
写真の裏に、名前が残っている可能性がある。
ただし、全員が書いたとは限らない。
それが誰の名前なのかも、まだ分からない。
◇
午前11時。
俺たちは公開写真6枚の登録情報を調べ直した。
A-009。
A-011。
A-012。
A-014。
A-015。
A-018。
裏面画像の登録が確認できたのは、A-012とA-018だった。
ただし、どちらも未公開。
写真の裏に何が書かれているかは分からない。
ソウタが言った。
ソウタ:「A-012は04班の活動記録。A-018は活動終了後の集合風景だったな」
シオン:「裏面があるというだけで、配布用の班別記念写真とは限らないね」
俺は頷いた。
まだ、買うべき情報を絞り込めていない。
◇
昼休み。
ミオと食堂の窓際に座った。
ユウキ:「写真の裏に、子どもが名前を書ける仕組みだったらしい」
ミオ:「そうなんだ」
ユウキ:「でも、どの写真を探せばいいのか分からなくて」
ミオは少し考えた。
ミオ:「写真をもらった人が、裏に何を書いたか覚えているかもしれないね」
ユウキ:「……ナナか」
ナナは、班別の写真をもらった記憶があると言っていた。
俺は頷いた。
ユウキ:「午後、聞いてみる。ただ、思い出せないなら無理には聞かない」
ミオ:「うん」
俺は食事に戻った。
今日のスープは、きちんと冷ましてから飲む。
ミオが俺の手元を見て、小さく笑った。
ユウキ:「何?」
ミオ:「今日は慎重だなって」
ユウキ:「スープ相手に3連敗する男にはなりたくない」
ミオ:「もう2敗してたんだ」
ユウキ:「昨日の分は、心の中で負けた」
ミオは声を立てずに笑った。
◇
午後1時30分。
中庭でナナを見つけた。
俺は写真の裏面について、分かったことを説明した。
ユウキ:「昔もらった写真の裏に、何か書いた記憶はある?」
ナナは少し考えた。
ナナ:「……名前を書いた気がする」
ユウキ:「自分の?」
ナナ:「ううん。たぶん、友達の」
俺は黙って待った。
ナナ:「写真をなくしても、誰と撮ったか分かるようにって……そんな話をした気がする」
彼女は困ったように笑った。
ナナ:「でも、誰の名前だったかは思い出せない」
ユウキ:「ありがとう。それだけでも助かる」
俺は頷いた。
写真の裏に名前を書いた子どもがいた。
少なくとも、ナナの記憶は公開資料の記載と矛盾しない。
ただし、彼女が持っていた写真と、俺が探している写真が同じかどうかは不明だ。
◇
午後2時。
資料閲覧室へ戻ると、ヒナが新しい資料を見つけていた。
ヒナ:「ユウキくん! これ、見て!」
『交流会・写真整理作業記録』
俺は画面をのぞき込んだ。
記録には、写真を整理した際の注意事項が書かれていた。
『配布用写真の余剰分は、記録写真とは別に保管』
『裏面に児童の記入がある写真は、個人情報保護のため公開対象外とする』
俺は息をのんだ。
ユウキ:「……裏に名前がある写真は、公開されない」
リナが頷いた。
リナ:「だから、表面の写真だけを探しても見つからない可能性があるね」
俺たちは関連資料を開いた。
『配布用写真・余剰分保管一覧』
鍵のマーク。
閲覧制限中。
だが、登録情報にはこう記されていた。
『04班:余剰写真1枚』
俺は画面を見つめた。
ユウキ:「……1枚、残ってる」
04班の配布用写真。
その余剰分が、施設の記録として残されていた。
裏に名前が書かれているかは分からない。
でも、探す対象はようやく1枚に絞られた。
◇
午後3時。
俺たちはその写真の登録番号を調べた。
『配布用写真・04班』
『資料番号:P-004』
『公開画像なし』
P-004。
A-012とは別の資料だった。
俺はノートに大きく書いた。
『P-004』
シオンが頷いた。
シオン:「これなら、写真を指定する情報商品があれば調べられる」
俺たちはSTORE Xを確認した。
INFO-008は、未公開写真を1枚開示する商品。
価格は60,000円。
商品説明を読み直す。
『指定可能な資料番号が存在する場合、購入時に指定できます』
俺は息をのんだ。
ユウキ:「……P-004を指定できる」
ただし、購入前に写真の表裏どちらが開示されるかは分からない。
俺たちは商品説明を最後まで確認した。
『開示対象:指定写真の登録画像一式』
ヒナが言った。
ヒナ:「裏面が登録されていれば、一緒に見られる可能性があるね」
俺は頷いた。
だが、今すぐ購入することはしなかった。
60,000円。
生活費を考えれば、軽い金額ではない。
◇
午後4時。
俺たちは調査結果をまとめた。
『04班の配布用写真が1枚、余剰分として残存』
『資料番号はP-004』
『裏面の自由記入欄には、名前やメッセージを書けた』
『P-004の裏面に何が書かれているかは未確認』
『INFO-008でP-004を指定できる可能性あり』
ソウタが腕を組んだ。
ソウタ:「次に買うなら、INFO-008だな」
シオンが頷く。
シオン:「ただし、購入前にP-004が指定対象に含まれるか、STORE Xで確認したほうがいい」
ユウキ:「うん。明日、みんなに相談する」
俺はホワイトボードを見つめた。
写真の裏。
そこに、名前があるかもしれない。
でも、まだ分からない。
◇
午後5時。
資料閲覧室を出ると、レイが廊下にいた。
レイ:「写真、見つかった?」
ユウキ:「04班の配布用写真が1枚残ってた。P-004って番号だった」
レイは頷いた。
レイ:「裏面は?」
ユウキ:「未公開。60,000円で見られるかもしれない」
レイは少し考えた。
レイ:「写真の裏に名前があっても、それが誰の名前かは別問題だね」
ユウキ:「……そうだな」
俺は頷いた。
自分の名前。
友達の名前。
渡したい相手の名前。
どれが書かれているかは、見てみないと分からない。
◇
夜。
自室に戻った俺は、古い手紙を広げた。
青い四角。
丸2つ。
裏側の「04」。
そして、今日見つけた写真番号。
『P-004』
数字は似ている。
だが、手紙の04は交流会の班番号である可能性が高い。
P-004は、後から付けられた写真の管理番号だ。
俺はノートに書いた。
『同じ数字でも、意味を混ぜない』
そのとき、端末が震えた。
『神崎ユウキ様へ』
差出人不明の個別メッセージ。
俺は開いた。
『P-004を見つけましたね。』
俺は息をのんだ。
続けて、文章が表示される。
『その写真の裏には、2人の名前が残されています。』
俺は画面を見つめた。
2人。
俺が約束した相手も、2人。
偶然だろうか。
最後の文章が表示された。
『ただし、その2人が、あなたの約束した2人だとは限りません。』
俺は思わず苦笑した。
ユウキ:「……そこは教えてくれないんだな」
端末は沈黙したままだった。
俺は写真番号をノートに書き込んだ。
『P-004』
明日、購入を相談する。
その裏に書かれた名前を、俺は自分の目で確かめたい。
DAY20。
第1回投票まで、あと10日。
俺はまだ、2つ目の約束を思い出せない。
だが、12年前の青い部屋で交わされた何かが、1枚の写真の裏に残されている。
その名前を読んだとき。
俺は、忘れていた誰かの顔を思い出せるのだろうか。
第1章 第26話 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。
ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!
**「Xはこの人だと思う!」**
**「このセリフが怪しい!」**
**「この行動、もしかして伏線?」**
**「この人物は逆にXではなさそう」**
など、どんな予想・考察でも大歓迎です。
もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。
皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。
そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!
果たして――
**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**
あなたの推理、お待ちしています!
毎日19時10分と20時10分更新予定です!!
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