第1章 第25話「04班の集合写真」
DAY19。
午前6時35分。
俺は昨夜届いた個別メッセージを読み返していた。
『04班には、あなたが約束を交わした相手がいました。』
『あなたが探しているものを引き出しへ入れた人物は、04班の子どもではありません。』
送り主は分からない。
これまでのメッセージは、俺たちの調査を先回りするように届いていた。
だが、内容が正しいと証明されたわけではない。
俺はノートに線を引いた。
『確認済み:交流会には01〜04の4班があった』
『未確認:俺が04班だったかどうか』
『未確認:04班に約束の相手がいたかどうか』
『未確認:引き出しへ入れた人物』
まず、俺自身が何班だったのかを調べる。
そのためには、班の名簿か写真が必要だった。
俺は布袋に手紙をしまった。
ユウキ:「……今日は写真からだ」
◇
午前8時。
食堂でレンに調査方針を話した。
レン:「04班の集合写真か。見つかれば一気に進みそうだな」
ユウキ:「問題は、どこにあるかだけど」
レン:「写真ってさ、撮った本人が持ってることもあるだろ?」
俺は顔を上げた。
ユウキ:「……確かに」
青風の公式記録だけを探していた。
でも、交流会に参加した子どもや職員が、別の写真を持っていた可能性はある。
隣で朝食を取っていたヒナが会話に加わった。
ヒナ:「写真を撮った人なら、撮影順も覚えてるかも!」
レン:「さすがカメラ担当」
ヒナ:「元・写真の専門学校生ですから!」
ソウタ:「じゃあ、写真番号の欠番が何を意味するかも分かるか?」
ヒナ:「それは撮った人に聞いて!」
レン:「専門家の守備範囲、急に狭くなったな」
ヒナは頬を膨らませた。
ヒナ:「分からないことを分からないって言えるのも専門性なの!」
それには、俺も同意だった。
◇
午前9時。
資料閲覧室。
俺たちは交流会の撮影記録を探した。
公開されている写真は6枚。
A-009、A-011、A-012、A-014、A-015、A-018。
この番号は写真資料の管理番号であって、撮影順とは限らない。
欠けている番号に、必ず写真が存在するとも限らなかった。
リナが検索結果を開く。
リナ:「『交流会実施報告書』に撮影担当の欄がある」
俺たちは画面をのぞき込んだ。
『記録写真担当:施設職員』
『班別活動記録:各班担当者が作成』
シオンが頷いた。
シオン:「班別の記録があったんだね」
ユウキ:「公開されてるかな」
ヒナが検索する。
『交流会 班別活動記録』
結果は4件。
『01班 活動記録』
『02班 活動記録』
『03班 活動記録』
『04班 活動記録』
俺は思わず身を乗り出した。
ユウキ:「あった!」
だが、4件とも鍵のマークがついていた。
『閲覧制限中』
レンが画面を見て肩を落とす。
レン:「この島の資料、鍵かけるの好きすぎない?」
ソウタ:「お前の部屋より管理が厳重だな」
レン:「俺の部屋はちゃんと施錠してる!」
カイト:「昨日、開いてたぞ」
レン:「……今日から厳重にする」
◇
午前10時。
俺たちは、班別活動記録に関連する公開資料を探した。
そこで、ヒナが1件の資料を見つけた。
『交流会 写真配布について』
内容は短かった。
『希望する参加児童および保護者へ、班別記念写真を配布』
『配布用写真は、施設記録用写真とは別に作成』
俺は画面を見つめた。
ユウキ:「……班ごとの写真、配られてたんだ」
施設に残っている資料とは別に、参加者の手元にも写真があった可能性が高い。
俺は父さんの顔を思い浮かべた。
家に、そんな写真はあっただろうか。
思い出せない。
事件のあと、家の中から青風に関するものは少しずつ姿を消していった。
父さんが処分したのか。
俺が見なくなっただけなのか。
今となっては分からなかった。
◇
午前11時。
俺たちは全員が集まる食堂で、写真の話をした。
ユウキ:「12年前の青風交流会で、班ごとの記念写真が配られてたらしい。持ってる人はいないかな」
最初に首を横に振ったのはアカリだった。
アカリ:「私は見覚えないなあ」
カイトも頷く。
カイト:「実家に古い写真はあるけど、青風のかどうか分からねえ」
ヒナが手を上げた。
ヒナ:「私は子どもの頃の写真、結構残してた。でも、この島には持ってきてないよ」
俺は頷いた。
参加者全員が12年前の事件と何らかの接点を持っているとしても、全員が同じ交流会に参加したとは限らない。
今ここで思い出せなくても、不自然ではなかった。
そのとき、ナナが小さく手を上げた。
ナナ:「……私、写真をもらった気がする」
ユウキ:「本当?」
ナナ:「うん。でも、家にあるかどうかは分からない」
俺は頷いた。
ユウキ:「覚えてる範囲でいい。どんな写真だった?」
ナナは少し考えた。
ナナ:「子どもが何人か並んでて……後ろに、青い壁があったと思う」
俺は息をのんだ。
青い壁。
遊戯室だ。
◇
昼休み。
ミオと窓際の席に座った。
ユウキ:「班別の写真が配られてたんだって」
ミオ:「そうなんだ」
ユウキ:「俺も、もらってたのかな」
ミオは少し考えた。
ミオ:「参加していたなら、持っていた可能性はあるね」
ユウキ:「でも、家にあった記憶がないんだよな」
俺はスプーンを置いた。
父さんが事件のことで責められていた頃、俺はまだ8歳だった。
家の空気が変わったことだけは覚えている。
でも、何がいつなくなったのかまでは思い出せない。
ミオ:「無理に思い出そうとしなくても、ほかの記録から分かるかもしれないよ」
ユウキ:「……うん」
俺は彼女を見た。
ユウキ:「ミオって、いつも俺が焦ってるときに声かけてくれるよな」
ミオ:「そう?」
ユウキ:「うん。助かってる」
ミオは少しだけ目を伏せた。
ミオ:「……それなら、よかった」
俺は慌ててスープへ視線を戻した。
昨日より少し冷めている。
今日は舌を負傷せずに済みそうだった。
◇
午後1時。
俺たちは班別活動記録の公開範囲を確認した。
本文は閲覧制限中。
だが、各資料の登録情報には、活動場所と担当職員が記されていた。
『01班:多目的室』
『02班:図書室』
『03班:食堂』
『04班:遊戯室』
俺は画面を見つめた。
ユウキ:「……04班が、青い部屋だ」
リナが頷く。
リナ:「古い手紙に描かれていた場所と一致するね」
さらに、担当職員の欄があった。
『04班担当:水瀬真紀』
俺は思わず立ち上がった。
ユウキ:「ナナのお母さん……!」
昨日まで、水瀬真紀は閉鎖時の私物確認担当者として名前が出ていただけだった。
だが、12年前の交流会でも04班を担当していた。
青い部屋。
04班。
水瀬真紀。
別々に見えていた記録が、同じ場所へ集まってきた。
◇
午後2時。
俺はナナに新しい資料を見せた。
ナナ:「……お母さんが、04班の担当だったんだ」
ユウキ:「うん。これ、公開されてた記録だよ」
ナナは画面を見つめたまま、しばらく黙っていた。
ナナ:「だから、あの部屋を覚えてるのかな……」
俺は返事を急がなかった。
ナナはゆっくり続けた。
ナナ:「私、お母さんが仕事してるところに行ったことがあるの。青風で」
ユウキ:「交流会の日?」
ナナ:「たぶん。でも、別の日だったかもしれない」
彼女は自分の記憶を確かめるように目を閉じた。
ナナ:「青い壁の部屋で、紙を折ってた。誰かに渡してほしくて……」
俺は古い手紙を取り出しかけて、手を止めた。
今見せれば、ナナの記憶を俺の手紙に引っ張ってしまうかもしれない。
先に、彼女自身の言葉を聞こう。
ユウキ:「その紙に、何を書いたか覚えてる?」
ナナ:「……名前」
俺の心臓が跳ねた。
ユウキ:「誰の?」
ナナはゆっくり首を横に振った。
ナナ:「分からない。でも、渡す相手の名前を書いた気がする」
俺は頷いた。
そこまでが、今の彼女の記憶だった。
◇
午後3時。
資料閲覧室に戻ると、ヒナが写真の登録情報を調べていた。
ヒナ:「ユウキくん、これ見て!」
画面にはA-012の詳細情報が表示されていた。
『撮影場所:遊戯室』
『撮影目的:04班活動記録』
俺は息をのんだ。
A-012。
青い壁と窓際机、『おもいで』の箱が写っていた写真。
あれは04班の活動記録だった。
ユウキ:「……じゃあ、あの写真に写ってる子どもたちは」
ヒナ:「04班の参加者かもしれない!」
ただし、写真には班の担当者や見学者が写り込む可能性もある。
写っている全員が04班だとは限らない。
俺たちは改めて写真を拡大した。
机の前に座る子ども。
箱のそばに立つ子ども。
画面の端で、誰かに手を伸ばしている子ども。
そして――。
窓際の椅子に座る、黒髪の少年。
俺は画面に顔を近づけた。
ユウキ:「……これ、俺か?」
顔は横向きで、はっきりしない。
でも、服の模様に見覚えがあった。
全体写真で、幼い俺が着ていた服。
同じような横縞だった。
シオンが言った。
シオン:「同じ服に見える。ただ、写真だけでは本人確認まではできないね」
俺は頷いた。
それでも、俺が04班にいた可能性は、かなり具体的になった。
◇
午後4時。
俺たちは今日の情報をホワイトボードに整理した。
『04班の活動場所は遊戯室』
『04班担当職員は水瀬真紀』
『A-012は04班活動記録として撮影』
『写真の黒髪の少年はユウキの可能性あり』
『ナナには、渡す相手の名前を書いた記憶がある』
ソウタが腕を組んだ。
ソウタ:「ここまで分かれば、次は班別活動記録の本文だな」
シオン:「でも、閲覧制限中。今のところ購入商品にも指定できるものがない」
俺は頷いた。
INFO-008で未公開写真を1枚見ることはできる。
だが、04班の集合写真が出る保証はない。
INFO-011ならD-04の個別記録を確認できる。
価格は100,000円。
どちらも、今すぐ買うには慎重になる必要があった。
◇
午後5時。
資料閲覧室を出たところで、レイに会った。
レイ:「04班の場所が分かったんだって?」
ユウキ:「うん。青い部屋だった」
レイ:「なら、手紙の04は班番号だった可能性があるね」
ユウキ:「そう思う」
レイは少し考えてから言った。
レイ:「でも、D-04も同じ部屋にあった。そこはまだ偶然かもしれない」
ユウキ:「……分かってる」
俺は頷いた。
同じ数字が2つ。
どちらも青い部屋につながっている。
だからこそ、混同してはいけない。
◇
夜。
自室に戻った俺は、A-012の写真を開いた。
窓際の椅子に座る少年。
その服は、確かに全体写真の俺とよく似ている。
俺は古い手紙を横に置いた。
『あおいへやの、ひきだしをおもいだして。』
もし俺が04班にいたなら。
この手紙は、同じ班の誰かから渡されたものなのかもしれない。
そのとき、端末が震えた。
『神崎ユウキ様へ』
差出人不明の個別メッセージ。
俺は開いた。
『04班の活動場所を確認しましたね。』
続けて、文章が表示された。
『写真に写る少年が誰なのか、あなた自身で確かめてください。』
俺は画面を見つめた。
答えは書かれていない。
送り主は、俺が自分で確かめることを求めている。
最後の1行が表示された。
『あなたが探している名前は、写真の表ではなく、裏にあります。』
俺は息をのんだ。
写真の裏。
配布用の班別記念写真。
もしかして、そこに参加者の名前が書かれているのか?
俺は資料の登録情報を開き直した。
A-012はデジタル化された写真の表面だけが公開されている。
裏面についての記載はない。
俺はノートに、新しい調査項目を書き込んだ。
『04班の配布用写真』
『写真の裏面』
DAY19。
第1回投票まで、あと11日。
俺はまだ、約束した相手の名前を思い出せない。
だが、その名前は、12年前に配られた1枚の写真に残っているのかもしれなかった。
俺は端末の画面を閉じた。
明日は、写真の裏を探そう。
第1章 第25話 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。
ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!
**「Xはこの人だと思う!」**
**「このセリフが怪しい!」**
**「この行動、もしかして伏線?」**
**「この人物は逆にXではなさそう」**
など、どんな予想・考察でも大歓迎です。
もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。
皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。
そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!
果たして――
**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**
あなたの推理、お待ちしています!
毎日19時10分と20時10分更新予定です!!
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