第1章 第24話「書いた人、隠した人」
DAY18。
午前6時42分。
俺は昨夜のメッセージを読み返していた。
『D-04を書いた人物と、引き出しへ入れた人物は同じではありません。』
差出人不明。
STORE Xから購入した情報ではない以上、この文章が正しいという保証はない。
それでも、考える価値はあった。
D-04は、閉鎖時に遊戯室から移送された手紙・メモ類だ。
その部屋の窓際机から、私物が見つかっている。
ただし、D-04がその引き出しに入っていたかどうかは、まだ確認できていない。
俺はノートに3つの言葉を書いた。
『書いた人』
『置いた人』
『受け取った人』
これまで、全部同じ人物だと思い込んでいたのかもしれない。
ユウキ:「……順番に確かめよう」
◇
午前8時。
食堂でレンに話すと、彼はパンを持ったまま首を傾げた。
レン:「書いた人と置いた人が違うなら、誰かに渡してもらった手紙ってことか?」
ユウキ:「その可能性はある」
レン:「俺も昔、好きな子への手紙を友達に渡してもらったな」
ユウキ:「どうなった?」
レン:「友達がその子と付き合った」
俺は言葉を失った。
ソウタ:「配送経路に重大な問題があるな」
レン:「俺の初恋を物流事故みたいに言うな!」
笑いが起きた。
だが、ソウタはすぐに真顔へ戻った。
ソウタ:「今回も同じだ。手紙の内容だけじゃなく、誰を経由したかが重要になる」
俺は頷いた。
◇
午前9時。
資料閲覧室。
俺たちはINFO-013の商品説明を確認した。
『指定された保管品1件について、受領担当者および受領時の記録を開示』
価格は60,000円。
昨日買ったINFO-012で、D-04が遊戯室から移送されたことは分かっている。
だが、INFO-013で持ち主や筆者まで分かるとは書かれていない。
シオンが言った。
シオン:「受領記録を買う前に、公開資料で手紙の扱いを調べよう。保管品になるまでの流れが分かるかもしれない」
リナ:「特に、子ども同士で渡す予定だった手紙の扱いだね」
ヒナが検索欄に入力した。
『青風 手紙 預かり』
結果は7件。
そのうち1件が、俺たちの目を引いた。
『児童間の手紙・贈答品の取り扱いについて』
鍵のマークはない。
俺たちはすぐに開いた。
◇
午前9時24分。
資料には、子ども同士で手紙や記念品を渡す際の取り決めが記されていた。
『本人同士での受け渡しを原則とする』
『相手が不在の場合、職員が一時的に預かることができる』
『預かった物品は、預けた児童と受取予定者を確認する』
俺は画面を見つめた。
ユウキ:「……相手がいないとき、預かってもらえるんだ」
リナが続きを読んだ。
リナ:「ただし、これは通常の運用だね。D-04がこの手順で預けられたかは分からない」
俺は頷いた。
ナナは以前、青い部屋で誰かに手紙を書き、渡してほしいと頼んだ気がすると話していた。
その記憶とは矛盾しない。
だが、D-04を書いたのがナナだという証拠もない。
俺は資料名をノートに控えた。
◇
午前10時。
ヒナが別の資料を見つけた。
ヒナ:「これ、交流会の工作活動の記録!」
『青風交流会 思い出づくり活動』
12年前の交流会。
子どもたちは飾りを作り、手紙を書き、希望する相手と交換していた。
写真に写っていた『おもいで』の箱は、完成した作品を一時的に集めるためのものだった。
ユウキ:「……あの箱、保管品用じゃなかったのか」
シオン:「少なくとも、交流会の時点では工作活動の箱だったみたいだね」
俺は施設紹介写真を開いた。
青い壁。
窓際机。
その上に置かれた『おもいで』の箱。
閉鎖時保管品の管理番号は、閉鎖準備の際に付けられている。
なら、12年前の交流会で書かれた「04」は、正式なD-04という管理番号ではない可能性が高い。
数字が一致している理由は、まだ説明できない。
◇
午前11時。
活動記録の末尾に、参加児童の班分けについて記載があった。
『工作活動は4つの班に分かれて実施』
俺は身を乗り出した。
ユウキ:「4つの班……?」
リナが画面をスクロールする。
『班番号は01〜04』
俺は布袋から古い手紙を取り出した。
裏側の「04」。
青い色鉛筆で書かれた、小さな数字。
ユウキ:「……これ、班番号かもしれない」
ソウタが頷いた。
ソウタ:「少なくとも、閉鎖時に付けられた管理番号だと決めつけるより自然だ」
俺は手紙を見つめた。
もし04が班番号なら、D-04との一致は偶然かもしれない。
昨日70,000円で確認したのは、D-04が遊戯室にあったという事実だけだ。
俺の手紙とのつながりは、まだ証明できていなかった。
◇
昼休み。
食堂でミオと向かい合った。
ユウキ:「手紙の04、班番号かもしれないんだ」
ミオ:「工作活動の?」
ユウキ:「うん。4つの班があったらしい」
ミオは頷いた。
ミオ:「じゃあ、同じ班だった子が分かれば、何か思い出せるかもしれないね」
ユウキ:「そうなんだよ。でも、班の名簿が見つからなくて」
俺はため息をついた。
ミオは少し考えてから言った。
ミオ:「名簿がなくても、班ごとの写真が残っているかもしれないよ」
俺は顔を上げた。
ユウキ:「……写真」
これまで見てきたのは、交流会の全体写真ばかりだった。
班ごとの写真があれば。
04班にいた子どもたちが分かるかもしれない。
ユウキ:「ありがとう。午後、探してみる」
ミオ:「うん」
俺は勢いよくスープを飲もうとした。
その瞬間、昨日の失敗を思い出して手を止めた。
ミオ:「今日は冷ましてから飲むんだね」
ユウキ:「同じ事件を2日連続で起こすわけにはいかないからな」
ミオが小さく笑った。
◇
午後1時。
俺たちは交流会の写真資料を調べ始めた。
公開されている写真は6枚。
A-009、A-011、A-012、A-014、A-015、A-018。
そのほかに未公開写真があることは分かっているが、内容は不明だ。
ヒナが1枚ずつ開いていく。
ヒナ:「班の札とか、写ってないかな」
A-009。
全体写真。
A-011。
工作中の子どもたち。
A-012。
窓際机の写真。
A-014。
左端に、顔のぼやけた子ども。
A-015。
紙袋を持った人物が写る。
A-018。
活動終了後の集合風景。
俺たちは写真を拡大して確認した。
だが、班番号が読めるものはなかった。
シオンが言った。
シオン:「未公開写真に班ごとの記録がある可能性はある。でも、今は分からないね」
俺は頷いた。
INFO-008なら、未公開写真を1枚開示できる。
価格は60,000円。
ただし、どの写真が出るのか、購入前には分からない。
今は手を出せなかった。
◇
午後2時20分。
俺はA-012をもう1度開いた。
青い壁の遊戯室。
窓際机。
その上に置かれた『おもいで』の箱。
箱の横には、折りたたまれた紙がある。
昨日見つけたものだ。
俺は古い手紙を取り出し、画面の紙と見比べた。
形は似ている。
だが、写真だけでは同じ紙か分からない。
俺が諦めかけたとき、ヒナが言った。
ヒナ:「あれ? 箱の側面、何か貼ってない?」
俺は画面を拡大した。
箱の右側。
小さな紙片が貼られている。
文字はぼやけているが、青い色が見えた。
ユウキ:「……番号?」
ヒナが首を傾げた。
ヒナ:「たぶん。でも読めないね」
俺は写真を保存した。
もし、あの箱が班ごとに分けられていたなら。
手紙の「04」は、箱へ入れるための印だったのかもしれない。
◇
午後3時。
ナナが資料閲覧室に来た。
俺は今日見つけた班分けの記録を見せた。
ユウキ:「交流会では、01から04までの班があったんだ」
ナナは画面を見つめた。
ナナ:「……班」
ユウキ:「何か覚えてる?」
彼女はしばらく黙っていた。
やがて、小さく答えた。
ナナ:「工作のとき、同じ色の札をつけてた気がする」
ヒナ:「札?」
ナナ:「うん。服につける、小さい紙の札」
俺は写真を開いた。
子どもたちの胸元。
拡大しても、文字は読めない。
だが、何人かに四角い札がついているように見えた。
ユウキ:「……確かに、何かある」
ナナは首を傾げた。
ナナ:「私が何番だったかは、分からないけど」
ユウキ:「それでも助かった。ありがとう」
彼女は小さく頷いた。
◇
午後4時。
俺たちは今日の情報を整理した。
『交流会の工作活動は01〜04の4班』
『手紙の04は、班番号の可能性がある』
『閉鎖時保管品D-04との関係は未証明』
『子どもたちは班ごとの札を身につけていた可能性がある』
『A-012の「おもいで」箱の側面に、青い紙片が見える』
シオンがホワイトボードを見つめた。
シオン:「次は班ごとの記録を探す。それと、D-04がどの段階で預けられたのか」
俺は頷いた。
昨夜のメッセージが正しければ、D-04を書いた人物と引き出しへ入れた人物は違う。
なら、手紙は誰かの手を渡っている。
その経路を調べることが、約束の相手へ近づく道になるはずだ。
◇
午後5時。
資料閲覧室を出ると、廊下でレイとすれ違った。
レイ:「今日は何か見つかった?」
ユウキ:「04が班番号かもしれないって分かった」
レイ:「なるほど」
レイは少し考えてから言った。
レイ:「数字の意味が2つあると、厄介だね」
ユウキ:「うん。D-04と04班。どっちも関係してるのか、片方は偶然なのか……」
レイ:「まずは、混ぜずに調べることだね」
俺は頷いた。
それが、今の俺にできることだった。
◇
夜。
自室に戻った俺は、手紙を広げた。
青い四角。
丸2つ。
裏側の「04」。
そして、写真に写る『おもいで』の箱。
俺はノートに書いた。
『04=班番号?』
『D-04=閉鎖時保管品』
『同じ数字でも、同じ意味とは限らない』
そのとき、端末が震えた。
『神崎ユウキ様へ』
差出人不明の個別メッセージ。
俺は画面を開いた。
『04班に、たどり着きましたね。』
俺は息をのんだ。
続けて、文章が表示される。
『その班には、あなたが約束を交わした相手がいました。』
俺は手紙を握りしめた。
04班。
そこに、俺の忘れた相手がいた。
最後の文章が表示された。
『ですが、あなたが探しているものを引き出しへ入れた人物は、04班の子どもではありません。』
俺は動けなくなった。
04班の子どもではない。
なら、別の班の子どもか。
それとも、職員か。
俺は昨日の記録を思い出した。
遊戯室の私物確認を担当した、水瀬真紀。
受領担当者の、早川恵子。
だが、どちらかが入れたと決めつける根拠はない。
俺はノートに、新しい疑問を書き込んだ。
『04班の約束相手は誰か』
『引き出しへ入れた人物は誰か』
DAY18。
第1回投票まで、あと12日。
俺はまだ、2つ目の約束を思い出せない。
それでも、12年前の青い部屋で、少なくとも2人が何かをつないでいた可能性が見えてきた。
俺に手紙を渡した誰か。
そして、引き出しへ何かを残した誰か。
その2人を結ぶものが、D-04なのかもしれなかった。
第1章 第24話 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。
ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!
**「Xはこの人だと思う!」**
**「このセリフが怪しい!」**
**「この行動、もしかして伏線?」**
**「この人物は逆にXではなさそう」**
など、どんな予想・考察でも大歓迎です。
もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。
皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。
そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!
果たして――
**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**
あなたの推理、お待ちしています!
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