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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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23/60

第1章 第23話「70,000円の引継票」

挿絵(By みてみん)


 DAY17。

 午前7時10分。

 俺は古い手紙を、もう1度光に透かしていた。

 青い色鉛筆で描かれた四角と、丸2つ。

 裏側に隠れるように書かれた「04」。

 昨日、青風こども生活支援センターの保管品記録から、D-04という管理番号を見つけた。

 そして、遊戯室の窓際机に残されていた私物を、施設長の早川恵子が受け取った記録も見つかった。

 引継票の作成担当者は、水瀬真紀。

 ナナのお母さんだった。

 ただし、D-04がその机から見つかったものかは、まだ分からない。

 昨夜、STORE Xに追加されたINFO-012。

『遊戯室・保管品引継票について』

 価格は70,000円。

 購入すれば、遊戯室から移送された保管品の管理番号と分類が分かる。

 俺は端末を伏せた。

 今日は、これを買うべきか決めなければならない。

     ◇

 午前8時。

 食堂でレンに相談すると、彼は残高画面を開いた。

レン:「70,000円か。最初の頃なら勢いで買ってたかもな」

ユウキ:「今は生活費も減ってるからな」

レン:「俺、昨日からパンを1個減らしてる」

ユウキ:「節約してるのか?」

レン:「いや、カイトに返済してる」

 隣の席でカイトが頷いた。

カイト:「あと1個だ」

ユウキ:「まだパンの借金残ってたのかよ」

 レンは真剣な顔で言った。

レン:「金の貸し借りより怖いぞ。食堂で毎朝、債権者と目が合うんだから」

 笑いながらも、俺は残高を確認した。

 調査に使える金は、無限じゃない。

 父さんの証言記録も、まだ未購入のままだ。

 俺の過去を調べるためだけに、みんなへ負担を頼み続けるわけにはいかなかった。

     ◇

 午前9時。

 資料閲覧室に、シオン、リナ、ソウタ、ヒナが集まった。

 俺はINFO-012の商品説明をホワイトボードに書き出した。

『価格:70,000円』

『開示内容:遊戯室から移送された保管品の管理番号および分類』

『開示されない内容:持ち主・預け入れ者・個別の中身・現在の保管先』

 シオンが頷いた。

シオン:「買えば、D-04が遊戯室にあったかどうかは確認できるね」

ソウタ:「ただし、一覧にD-04がなかった場合、手紙の04とD-04を結びつける根拠は弱くなる」

リナ:「逆に、一覧にあっても、ユウキの手紙との関係はまだ証明できない」

ユウキ:「……そうだな」

 70,000円で得られるのは、答えそのものじゃない。

 仮説を1つ確かめるための情報だ。

 俺は少し考えてから言った。

ユウキ:「今回は、俺が多めに出す。俺の手紙から始まった調査だから」

 シオンは俺を見た。

シオン:「それなら、無理のない範囲を先に決めよう」

 俺は頷いた。

     ◇

 午前10時。

 俺たちは食堂で、参加者たちに調査の進展を共有した。

 青い壁の遊戯室。

 窓際机の引き出し。

 D-04という管理番号。

 そして、ナナの母親が引継票の作成を担当していたこと。

 ナナ本人が話してくれた内容については、彼女の許可を得た範囲だけ伝えた。

ユウキ:「この情報を買っても、D-04の中身までは分からない。だから、出資は任意でお願いしたい」

 最初に手を上げたのはカイトだった。

カイト:「俺は出す。あの机のこと、気になるしな」

アカリ:「私も少しなら!」

ヒナ:「写真の謎にも関係してるかもしれないし、私も!」

 ハルカは残高を確認してから言った。

ハルカ:「今回は見送るわ。来月の生活費が入るまで、余裕を残しておきたいの」

ユウキ:「うん。無理しないで」

 セナも今回は見送った。

 ナナは少し迷ってから、手を上げた。

ナナ:「……私も、2,000円なら」

ユウキ:「ナナ、無理しなくていいんだぞ」

ナナ:「うん。でも、お母さんの名前が出てきたから。私も知りたい」

 俺は頷いた。

 最終的に、共同購入へ参加することになったのは11人。

 俺が15,000円。

 レン、シオン、リナ、ソウタが各7,000円。

 カイトとレイが各6,000円。

 ヒナ、アカリ、ミオが各4,000円。

 ナナが3,000円。

 合計70,000円。

 俺たちは、それぞれSTORE Xへ直接支払った。

     ◇

 午前10時38分。

 最後の入金が完了すると、全員の端末が震えた。

『INFO-012 購入完了』

 俺はすぐに開いた。

『青風こども生活支援センター』

『遊戯室・保管品引継票』

 その下に、管理番号と分類が並んでいた。

『B-03:文具・学用品』

『B-07:文具・学用品』

『C-02:写真・印刷物』

『D-04:手紙・メモ類』

『E-01:小型記念品』

『F-02:その他』

 俺は息を止めた。

ユウキ:「……あった」

 D-04。

 確かに、遊戯室から移送された保管品の中にあった。

 ヒナが俺の肩越しに画面を見た。

ヒナ:「本当にD-04だ!」

 俺は古い手紙を取り出した。

 右下の「04」。

 そして、画面の「D-04」。

 数字は一致している。

 だが、これだけで同じものだと断定することはできない。

 俺は手紙を握りしめた。

ユウキ:「……ようやく、ここまで来た」

     ◇

 午前11時。

 俺たちは購入した情報を整理した。

 シオンがホワイトボードに書く。

『D-04は、遊戯室から移送された保管品』

『分類は手紙・メモ類』

『個別の内容・持ち主・預け入れ者は未判明』

 ソウタが言った。

ソウタ:「次にINFO-011を買えば、D-04の個別記録は見られる」

 価格は100,000円。

 俺は首を横に振った。

ユウキ:「今日は買わない。まずは、ほかの資料を調べたい」

 シオンが頷いた。

シオン:「いい判断だと思う。引継票から、別の公開資料につながる可能性もあるからね」

 俺は画面を見つめた。

 D-04。

 それが、俺の忘れた約束に関係しているのか。

 まだ答えは出ていない。

     ◇

 昼休み。

 食堂でミオと向かい合って座った。

ミオ:「D-04、遊戯室にあったんだね」

ユウキ:「うん。手紙の数字と一致してる」

ミオ:「よかったね」

ユウキ:「でも、まだ中身は分からない。100,000円の情報を買えば分かるかもしれないけど」

 ミオは静かに頷いた。

ミオ:「急がなくてもいいと思うよ」

ユウキ:「……そうだな」

 俺はスープを飲んだ。

 今日のスープは、少し熱かった。

ユウキ:「あっつ!」

 ミオが俺を見た。

ミオ:「大丈夫?」

ユウキ:「舌が事件現場になった」

 ミオは小さく笑った。

ミオ:「ちゃんと冷ましてから飲んでね」

ユウキ:「12年前の真相より、目の前のスープのほうが危険だった」

 俺も笑った。

 こんな時間が、今はありがたかった。

     ◇

 午後1時30分。

 資料閲覧室へ戻った俺たちは、D-04に関連する公開資料を検索した。

 検索結果は2件。

『閉鎖時保管品・個別記録』

『保管品返却状況・分類別集計』

 個別記録は閲覧制限中。

 返却状況の集計は、すでに確認したものだった。

 手紙・メモ類4件のうち、返却済み2件、返却未確認2件。

 D-04がどちらに含まれるかは分からない。

 俺は端末を閉じかけた。

 そのとき、リナが言った。

リナ:「待って。引継票の関連資料欄に、別の文書がある」

 俺は画面を見た。

『遊戯室・私物確認作業日誌』

 鍵のマークはついていない。

 俺たちは顔を見合わせた。

ユウキ:「……開ける?」

リナ:「もちろん」

     ◇

 午後2時。

 作業日誌には、閉鎖準備の様子が短く記されていた。

『遊戯室の備品および私物を確認』

『窓際机の引き出し内に、児童の私物と思われる品を発見』

『発見品は分類後、事務室へ移送』

 俺は画面を見つめた。

 窓際机。

 引き出し。

 私物。

 そして、遊戯室から移送されたD-04。

 すべてが、同じ場所へ近づいている。

 だが、作業日誌には、D-04の番号は書かれていなかった。

 俺は深く息を吐いた。

ユウキ:「……あと少しなのにな」

 ヒナが画面を見つめる。

ヒナ:「でも、今日だけでかなり進んだよ」

 俺は頷いた。

 そうだ。

 焦ってはいけない。

     ◇

 午後3時。

 ナナが資料閲覧室にやってきた。

ナナ:「ユウキくん。少し、いい?」

ユウキ:「うん。どうした?」

 彼女は小さなメモを持っていた。

ナナ:「昨日、お母さんの名前を見てから、少し思い出したことがあるの」

 俺は黙って待った。

ナナ:「青い部屋で、手紙を書いたことがあるって話したよね」

ユウキ:「うん」

ナナ:「そのとき、私……誰かに、渡してほしいって頼んだ気がする」

 俺は息をのんだ。

ユウキ:「誰に?」

 ナナは首を横に振った。

ナナ:「そこまでは思い出せない。でも、直接渡せなかったんだと思う」

 俺は古い手紙を見た。

 誰かが俺に渡したもの。

 そして、引き出しに残されたもの。

 もし、直接渡せなかった手紙が、そこに置かれていたのなら。

 俺はナナを見た。

ユウキ:「その手紙、どんなことを書いたか覚えてる?」

 ナナは少し考えた。

ナナ:「……ごめん。まだ分からない」

ユウキ:「いや、ありがとう」

 俺は頷いた。

 無理に思い出してもらうつもりはなかった。

     ◇

 午後4時。

 俺たちは今日の調査結果をまとめた。

 ホワイトボードには、次の項目が並んでいる。

『D-04は遊戯室から移送された』

『分類は手紙・メモ類』

『窓際机の引き出しから私物が見つかっている』

『D-04がその引き出しにあったかは未確認』

『ナナには、誰かに手紙を渡してほしいと頼んだ記憶がある』

 シオンが腕を組んだ。

シオン:「D-04とユウキの手紙の関係は、まだ仮説だね」

ユウキ:「うん」

 俺はホワイトボードを見つめた。

 でも、昨日よりは確実に近づいている。

 12年前の約束。

 青い部屋。

 D-04。

 そして、ナナの記憶。

 それぞれが、少しずつ重なり始めていた。

     ◇

 午後5時。

 資料閲覧室を出ると、廊下にレイがいた。

レイ:「D-04、見つかったんだね」

ユウキ:「うん。でも、まだ中身は分からない」

 レイは頷いた。

レイ:「中身を見る前に、誰がそこへ置いたのかを調べるのも大事かもね」

ユウキ:「……そうだな」

 俺は古い手紙を取り出した。

 青い四角。

 丸2つ。

 そして、「04」。

 12年前の誰かが残した、小さな印。

 その意味を、俺はまだ知らない。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、今日の記録を整理した。

『D-04は遊戯室から移送された』

『個別記録は未購入』

『預け入れ者は未判明』

『ナナは、誰かに手紙を渡してほしいと頼んだ記憶がある』

 俺はペンを置いた。

 そのとき、端末が震えた。

『STORE Xよりお知らせ』

 新しい情報商品が追加された。

『INFO-013:閉鎖時保管品・受領記録について』

 価格は、60,000円。

 俺は商品説明を開いた。

『本商品では、指定された保管品1件について、受領担当者および受領時の記録を開示します』

 D-04を指定すれば、受領時の記録が見られる。

 だが、預け入れ者や持ち主まで分かるとは書かれていない。

 俺は購入画面を閉じた。

 明日、みんなと相談しよう。

 そう考えた直後。

 端末に新しい通知が届いた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『D-04が遊戯室にあったことを確認しましたね。』

 俺は息をのんだ。

 続けて、文章が表示される。

『あなたが探しているものは、確かにその部屋に残されていました。』

 俺は手紙を握りしめた。

 その部屋に残されていたもの。

 D-04。

 やはり、関係があるのか。

 最後の文章が表示された。

『ただし、D-04を書いた人物と、引き出しへ入れた人物は同じではありません。』

 俺は動けなくなった。

 書いた人物。

 引き出しへ入れた人物。

 そして、俺に手紙を渡した人物。

 12年前の青い部屋で、いったい何があった?

 俺はノートに、新しい調査項目を書き込んだ。

『D-04を書いた人物』

『D-04を引き出しへ入れた人物』

 DAY17。

 第1回投票まで、あと13日。

 俺はまだ、2つ目の約束を思い出せない。

 だが、D-04には、少なくとも2人の行動が関わっているらしい。

 そして、その2人のうち、どちらかが――。

 俺の忘れた約束の相手なのかもしれなかった。

第1章 第23話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


ブックマークお願いします♪


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