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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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20/60

第1章 第20話「50,000円の保管品一覧」

挿絵(By みてみん)


 DAY14。

 午前7時18分。

 俺は、古い布袋から手紙を取り出した。

『ぜったいに、なくさないでね。』

 12年前、誰かが俺に渡したもの。

 昨夜のメッセージによれば、俺が約束した相手は2人いるらしい。

 ただし、それは差出人不明の言葉だ。事実だと確認できたわけじゃない。

 俺が今、確かに持っているのは、この手紙だけ。

 そして、手紙に書かれた『青い部屋の引き出し』という手がかり。

 昨日、引き出しの中身が閉鎖時の保管品として扱われた可能性にたどり着いた。

 STORE Xには、その一覧の分類と件数を開示する情報が追加されている。

 価格は50,000円。

 安くはない。

 しかも、買ったところで、探しているものが見つかる保証もない。

ユウキ:「……まずは相談だな」

 俺は手紙を丁寧に折り、布袋へ戻した。

     ◇

 午前8時。

 食堂でレンに話すと、彼はすぐに首をかしげた。

レン:「50,000円払って、分かるのが分類と件数だけ?」

ユウキ:「そう。持ち主や保管先は分からない」

レン:「俺だったら、50,000円払ったら中身まで見せてほしいけどな」

ソウタ:「それは商品説明を読んでから言え」

レン:「読んだから言ってるんだよ。文句を言う権利くらいあるだろ」

 ソウタはため息をついた。

ソウタ:「買う前に文句を言ってるだけ、まだ健全か」

 俺は2人に端末を見せた。

 INFO-010。

『閉鎖時保管品一覧に記載された品目の分類および件数を開示します』

 説明はそれだけだ。

ソウタ:「買うなら、何が分かれば次に進めるのかを先に決めるべきだ」

ユウキ:「保管品に紙類があるか。あとは、机の中から取り出されたものが含まれるか……かな」

ソウタ:「後者は、この商品だけじゃ分からない可能性が高い」

 そのとおりだった。

 俺は頷いた。

ユウキ:「じゃあ、買うとしても、次の調査先を絞るためだな」

     ◇

 午前9時。

 資料閲覧室に集まった俺たちは、INFO-010について話し合った。

 シオンがホワイトボードに価格を書いた。

『INFO-010 50,000円』

 続けて、商品説明から分かる範囲を書き出す。

『分かること:保管品の分類・件数』

『分からないこと:持ち主・個別の内容・現在の保管先』

リナ:「これなら、50,000円の価値があるか判断しやすいね」

ヒナ:「でも、私たちが探してるものが何なのか、まだ分からないんだよね」

ユウキ:「うん。手紙には引き出しを思い出してとしか書かれてない」

 シオンが俺を見た。

シオン:「ユウキ。1つ確認していい?」

ユウキ:「何?」

シオン:「その手紙を調べることと、父親の事件を調べることは、今の段階では別の目的だよね」

 俺は少し考えた。

 父さんの事件。

 青風の閉鎖。

 12年前の約束。

 同じ時期の出来事ではある。

 でも、手紙が資金移動の証拠だとは分かっていない。

ユウキ:「……そうだな。俺個人の記憶を探すために、みんなのお金を使ってもらうことになる」

 シオンは頷いた。

シオン:「だから、共同購入するなら、その点は明確にしたほうがいい」

 俺はホワイトボードを見つめた。

 正しい指摘だった。

     ◇

 午前10時。

 俺は食堂に集まっていた参加者たちへ、調査内容を説明した。

 13人全員が、話を聞いてくれた。

 古い手紙のこと。

 青い壁の遊戯室。

 引き出し付きの机。

 閉鎖時保管品一覧。

 そして、50,000円の情報商品。

ユウキ:「正直に言うと、これが父さんの事件につながるかは分からない。俺の昔の約束を調べるための情報かもしれない」

 少しの沈黙が流れた。

 最初に口を開いたのは、アカリだった。

アカリ:「でも、青風の閉鎖時に何が残されてたかは、私たちも知っていい情報だと思う」

ハルカ:「そうね。ただ、今後も情報を買うなら、生活費との兼ね合いは考えないと」

 ハルカの言葉に、何人かが頷いた。

 俺たちの生活費は、1人あたり月100,000円。

 食事にも日用品にも金がかかる。

 無制限に調査へ使えるわけじゃない。

セナ:「私は今回は出さないでおくね。調査には協力したいけど、今月の残りが少し心配だから」

ユウキ:「分かった。ありがとう」

 無理に出してもらうつもりはない。

 そこへミオが口を開いた。

ミオ:「私は少しなら出せるよ」

 俺は彼女を見た。

ユウキ:「いいのか?」

ミオ:「うん。青風のこと、私も知りたいから」

 その言葉に、俺は小さく頷いた。

     ◇

 午前10時30分。

 結局、INFO-010は共同購入することになった。

 参加者と負担額は、次のとおりだ。

 俺、レン、シオン、リナ、ソウタが各5,000円。

 ヒナ、アカリ、カイト、レイ、ミオが各3,000円。

 ナナとハルカが各2,000円。

 セナが今回は見送り。

 合計44,000円。

 あと6,000円足りない。

レン:「惜しいな。あと少しなのに」

カイト:「俺、追加で3,000円出すぞ」

レイ:「じゃあ、残り3,000円は僕が」

 これで50,000円。

 俺たちはSTORE Xの共同購入画面を開いた。

 各自が指定額を直接支払う。

 全額が集まった時点で、情報が全員に開示される仕組みだ。

 最後の入金が完了すると、端末が一斉に震えた。

『INFO-010 購入完了』

 俺は画面を開いた。

     ◇

 午前10時42分。

 公開された情報は、想像していたより短かった。

『青風こども生活支援センター・閉鎖時保管品一覧』

『分類および件数』

 衣類・布製品 8件。

 文具・学用品 11件。

 写真・印刷物 6件。

 手紙・メモ類 4件。

 小型記念品 5件。

 その他 3件。

 合計37件。

 俺は画面を見つめた。

ユウキ:「……手紙・メモ類が4件」

 ヒナが身を乗り出す。

ヒナ:「写真・印刷物も6件ある!」

 シオンは情報を読み直した。

シオン:「ただし、どれが遊戯室の引き出しにあったものかは分からない」

リナ:「持ち主も不明だね」

 分かっている。

 でも、何もないと思っていた場所に、記録が残っていた。

 その事実だけで、胸が少し熱くなった。

     ◇

 午前11時。

 俺たちは、開示された分類をホワイトボードに書き出した。

『手紙・メモ類 4件』

『写真・印刷物 6件』

『小型記念品 5件』

 俺は古い手紙を取り出した。

 小さな紙。

 子どもの字。

 青い部屋の引き出し。

 もし、引き出しに残されたものも手紙だったなら。

 この4件の中に、何かあるかもしれない。

ソウタ:「神崎。その手紙はお前が持ってるんだから、閉鎖時の保管品一覧に入っているとは限らないぞ」

ユウキ:「うん。探してるのは、もう1つのほうだ」

 俺は言ってから、少し驚いた。

 もう1つ。

 昨夜のメッセージでは、引き出しに入っていたものは1つではないと書かれていた。

 俺は、知らないうちにその言葉を前提にしていた。

ユウキ:「……いや、もう1つあるかどうかも、まだ分からない」

 ソウタは頷いた。

ソウタ:「それでいい。仮説として残そう」

     ◇

 昼休み。

 食堂でミオと向かい合って座った。

ミオ:「少し進んだね」

ユウキ:「うん。でも、買った情報だけじゃ、まだ中身は分からない」

ミオ:「そうだね」

 俺はスープをひと口飲んだ。

ユウキ:「50,000円も使って、分類と件数だけって、改めて考えるとすごい商売だよな」

ミオ:「必要な人には、必要な情報だからね」

ユウキ:「STORE Xの料金設定、絶妙に嫌なところを突いてくる」

 ミオは小さく笑った。

ミオ:「ユウキ、今日はサラダ食べた?」

ユウキ:「食べた」

ミオ:「本当に?」

ユウキ:「今日は証人がいる。レンに聞いてくれ」

 少し離れた席から、レンが手を上げた。

レン:「見たぞ! ユウキはちゃんと食べてた!」

 俺は得意げに頷いた。

 すると、レンが続けた。

レン:「俺の皿に移してな!」

ユウキ:「おい!」

 ミオは口元を押さえて笑った。

 こんな時間があるから、俺はまだこの島で息ができているのかもしれない。

     ◇

 午後1時30分。

 俺たちは保管品一覧に関する追加資料を探した。

 検索結果は2件。

『閉鎖時保管品・管理手順』

『閉鎖時保管品・個別記録』

 前者は公開。

 後者は閲覧制限中。

 管理手順には、こう書かれていた。

『保管品には、分類ごとに管理番号を付与する』

『本人または正当な受領者への返却時には、受領記録を残す』

『返却されなかった品目については、保管状況を定期確認する』

 俺はそこで手を止めた。

ユウキ:「……返却記録があるんだ」

 リナが頷く。

リナ:「保管品一覧だけじゃなく、返却されたかどうかの記録もあるはずだね」

 もし、探しているものが保管品に含まれていたとして。

 すでに誰かへ返却されている可能性もある。

 その場合、今の保管先を調べるだけでは見つからない。

 俺たちは、新しい調査項目を追加した。

『保管品の返却記録』

     ◇

 午後3時。

 ヒナが、施設紹介写真をもう1度開いた。

ヒナ:「ねえ、この『おもいで』の箱って、分類だと何になるんだろう?」

 机の上に置かれた、小さな箱。

 側面には手書きで『おもいで』。

ユウキ:「小型記念品……かな?」

リナ:「箱自体なら『その他』かもしれないし、中身は別々に分類されたかもしれない」

 俺は写真を見つめた。

 あの箱は、ただの工作用品入れだったのかもしれない。

 それとも、子どもたちが大切なものを入れていたのか。

 分からない。

 ただ、気になることが1つあった。

 机の右側の引き出しは、少し開いている。

 そのすぐ上に、『おもいで』の箱がある。

 俺はノートに書いた。

『引き出しと箱の関係は不明』

 小さなことでも、忘れないように。

     ◇

 午後4時。

 俺たちは今日の調査結果をまとめた。

 ホワイトボードには、次の項目が並んでいる。

『閉鎖時保管品は合計37件』

『手紙・メモ類は4件』

『写真・印刷物は6件』

『小型記念品は5件』

『保管品には管理番号が付与されている』

『返却時には受領記録が残される』

 シオンが腕を組んだ。

シオン:「次は、個別記録か返却記録だね」

ソウタ:「ただし、閲覧制限がある。無料で見られるとは限らない」

ユウキ:「分かってる」

 俺はホワイトボードを見つめた。

 父さんの証言記録も、まだ買えていない。

 承認記録の調査も途中だ。

 俺の昔の約束ばかり追っていていいのか。

 そんな迷いが、胸の中にあった。

     ◇

 午後5時。

 資料閲覧室を出ると、廊下にナナがいた。

ナナ:「ユウキくん。今日、保管品のこと調べてたんだよね」

ユウキ:「うん。閉鎖時に残されてたものが37件あったって分かった」

 ナナは小さく頷いた。

ナナ:「……手紙も、あった?」

ユウキ:「4件あった」

 彼女は少し黙った。

 それから、静かに言った。

ナナ:「……そうなんだ」

 俺はナナを見た。

ユウキ:「何か覚えてる?」

 ナナは首を横に振りかけて、止まった。

ナナ:「はっきりとは、覚えてない。でも……」

 彼女は視線を落とした。

ナナ:「青風で、誰かに手紙を書いたことはある気がする」

 俺は息をのんだ。

ユウキ:「誰に?」

ナナ:「……分からない」

 ナナは困ったように笑った。

ナナ:「ごめんね。こんな曖昧なことしか言えなくて」

ユウキ:「いや、ありがとう」

 俺は頷いた。

 12年前のことを、みんな少しずつ覚えている。

 でも、誰も全体を思い出せない。

 その断片が、いつかつながるのだろうか。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、今日の記録を整理した。

 50,000円で買った情報。

 37件の保管品。

 4件の手紙・メモ類。

 そして、ナナの曖昧な記憶。

 俺は古い手紙を取り出した。

『ぜったいに、なくさないでね。』

 俺は約束を守った。

 少なくとも、この手紙だけは。

 だが、もう1つの約束は、まだ思い出せない。

 そのとき、端末が震えた。

『STORE Xよりお知らせ』

 新しい情報商品が追加された。

『INFO-011:閉鎖時保管品・個別記録について』

 価格は、100,000円。

 俺は商品説明を開いた。

『本商品では、閉鎖時保管品のうち、指定された1件の個別記録を開示します』

 また、指定された1件。

 管理番号が必要になる。

 俺は苦笑した。

ユウキ:「……番号を探せってことか」

 そう考えた直後。

 端末に新しい通知が届いた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『あなたが探しているものには、管理番号が付けられています。』

 俺は息をのんだ。

 続けて、文章が表示される。

『ただし、その番号は、青い部屋の机には書かれていません。』

 俺は手紙を見つめた。

 机の番号ではない。

 保管品の番号。

 なら、どこに残っている?

 最後の1行が表示された。

『あなたは、その番号を、すでに見ています。』

 俺は動けなくなった。

 すでに見ている?

 今日の資料か。

 写真か。

 それとも、もっと前に見たものか。

 俺はノートを開き、これまでの記録を読み返した。

 写真の管理番号。

 A-014。

 A-015。

 備品管理シール。

 Y-。

 保管品一覧。

 37件。

 そして――。

 俺は手を止めた。

 古い手紙の右下。

 青い色鉛筆で描かれた、小さな四角。

 その中に、丸が2つ。

 俺は手紙を持ち上げ、光に透かした。

 すると、紙の裏側から、かすかに文字のようなものが見えた。

 俺は目を凝らした。

 そこには、青い色鉛筆で、小さく数字が書かれていた。

『04』

ユウキ:「……04?」

 俺は息をのんだ。

 ただの落書きかもしれない。

 保管品の番号とは限らない。

 でも、これまで気づかなかった数字が、確かにそこにあった。

 DAY14。

 第1回投票まで、あと16日。

 俺はまだ、引き出しの中身を知らない。

 だが、12年前の誰かが残した手紙には、俺が見落としていた小さな数字が隠れていた。

 その数字が何を意味するのか。

 俺は、まだ知らなかった。

第1章 第20話 完

『僕らの1億円ゲーム』第1章 第11〜20話まとめ

あらすじ

ユウキたちは、12年前の「青風未来基金1億円消失事件」を調査。共同購入したSTORE Xの情報から、問題となった資金移動の少なくとも1件に、必要な理事会の事前承認がなかったことが判明する。

さらに、当時の証言記録や交流会の写真を調べる中で、ユウキは青い飾りをつけた少女と、写真の左端に写る別の子どもに注目する。差出人不明のメッセージは、ユウキが12年前に2人と約束したことを示唆していた。

ユウキは長年持ち続けていた布袋から古い手紙を発見。そこには「青い部屋の引き出しを思い出して」と書かれていた。調査の結果、青い壁の遊戯室に引き出し付きの机があったことが分かる。

第20話では、50,000円で閉鎖時保管品の情報を共同購入。手紙・メモ類が4件残されていたと判明する。そしてユウキは、古い手紙に隠れていた数字「04」を発見する。

判明した重要事項・伏線

- 資金移動: 少なくとも1件は理事会の事前承認なし。ただし、送金者・金額・使途は未判明。

- 証言記録: 全8件のうち5件が閲覧制限中。父・神崎直人の証言も未公開。

- 写真: 青い飾りの少女、左端の子ども、施設長・早川恵子らしき人物が写る。未公開写真も存在する。

- 約束: 匿名メッセージによれば、ユウキは12年前に2人と約束した。1つは再会、もう1つは渡されたものに関する約束。

- 手紙: 「ぜったいに、なくさないでね」「あおいへやの、ひきだしをおもいだして」と記載。隠れた数字「04」を発見。

- 保管品: 全37件。うち手紙・メモ類4件、写真・印刷物6件、小型記念品5件。

- 未解決: 約束した2人の正体、引き出しの中身、「04」の意味、匿名メッセージの送り主。

現在DAY14。第1回X投票まで、あと16日。

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