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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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19/54

第1章 第19話「引き出しの中に残されたもの」

挿絵(By みてみん)


 DAY13。

 午前7時12分。

 俺は机の上に、2つのものを並べていた。

 12年前にもらった、小さな手紙。

 そして、青風こども生活支援センターの遊戯室を写した写真。

 手紙には、子どもの字でこう書かれている。

『あおいへやの、ひきだしをおもいだして。』

 写真には、青い壁の前に置かれた机が写っていた。

 右側の引き出しが少し開き、その奥には白いものが見える。

 ただし、写真は粗い。紙なのか、別の物なのかも判別できない。

 俺は手紙の右下に描かれた絵を見た。

 四角の中に、丸が2つ。

 机の引き出しを描いたようにも見える。

ユウキ:「……似てるだけかもしれないんだよな」

 差出人不明のメッセージは、引き出しの中身を見れば2つ目の約束を思い出すと言っていた。

 だが、その言葉もまだ確認できていない。

 まずは、机を特定する。

 俺はノートにそう書いて、部屋を出た。

     ◇

 午前8時。

 食堂でレンに写真を見せると、彼は真剣な顔で画面をのぞき込んだ。

レン:「右の引き出し、開いてるな」

ユウキ:「うん。中に何かある」

レン:「白いものか……」

 レンはしばらく考え込んだ。

レン:「俺には、ティッシュに見える」

ユウキ:「12年前の事件を解く鍵がティッシュだったら、どうしよう」

レン:「しかも使いかけ」

ユウキ:「やめろ。俺の思い出を急に衛生問題にするな」

 レンは笑ったあと、写真を返した。

レン:「でも、引き出しの中身を探すなら、まず机がどこへ行ったかだよな」

ユウキ:「そのためには備品番号が必要なんだ」

 STORE Xには、備品1件の移管先を調べられるINFO-009がある。

 価格は80,000円。

 ただし、調べたい備品を指定しなければならない。

 番号を間違えれば、別の机の移管先を買ってしまう可能性もある。

レン:「じゃあ今日は、80,000円を使わないための調査だな」

ユウキ:「そういうこと」

     ◇

 午前9時。

 資料閲覧室で、シオン、リナ、ソウタ、ヒナと合流した。

 俺たちは施設の備品記録を探した。

 最初に見つかったのは、古い備品分類表だった。

『机類』

『椅子類』

『書架類』

『保管箱類』

 しかし、個別の備品番号は載っていない。

ソウタ:「分類表だけじゃ特定できないな」

リナ:「写真に備品管理シールが写ってないかな」

 ヒナが遊戯室の写真を拡大した。

 机の側面。

 引き出しの下。

 脚の部分。

 だが、番号らしきものは見えない。

ヒナ:「うーん。撮影された角度が悪いね」

ユウキ:「別の写真には?」

ヒナ:「探してみる!」

 俺たちは公開されている施設紹介写真を、1枚ずつ確認した。

     ◇

 午前10時24分。

 ヒナが声を上げた。

ヒナ:「あった! 同じ部屋!」

 画面には、青い壁の遊戯室が写っていた。

 先ほどの写真とは、少し違う角度だ。

 机の前に子どもが座っている。

 机の右側面には、小さな白いシールが貼られていた。

ユウキ:「これ、番号じゃないか?」

 ヒナが拡大する。

 だが、文字は潰れている。

 かろうじて読めるのは、先頭の2文字だけ。

『Y-』

シオン:「遊戯室の備品番号かもしれないね」

ソウタ:「ただし、Yが何を表すかは不明だ」

 俺はノートに書いた。

『机の側面に管理シール』

『番号の先頭はY-の可能性』

 これだけでは、まだINFO-009で指定できない。

 だが、昨日よりは前に進んだ。

     ◇

 午前11時。

 リナが別の資料を見つけた。

リナ:「閉鎖前の備品点検記録があるよ」

 俺たちは画面を確認した。

 記録には、備品の状態が簡単にまとめられていた。

『遊戯室・机類:使用可能』

『遊戯室・椅子類:一部修繕要』

『遊戯室・書架類:使用可能』

 そして、備考欄。

『引き出し付き机1台について、取っ手の緩みを確認』

 俺は顔を上げた。

ユウキ:「引き出し付きの机!」

 シオンが頷く。

シオン:「写真の机と一致する可能性がある」

 だが、備品番号は伏せられていた。

 俺は思わず机に突っ伏した。

ユウキ:「ここまで来て、また伏せ字か……」

レン:「この施設、12年後に俺たちが調べることを予想してたんじゃないか?」

ソウタ:「そんなわけないだろ」

レン:「じゃあ、伏せ字を売るために島を作った?」

ソウタ:「そっちのほうが話が大きくなってる」

 俺は笑いながら顔を上げた。

 番号は分からない。

 でも、引き出し付きの机が備品記録に残っていることは確認できた。

     ◇

 昼休み。

 食堂でカイトに調査結果を話すと、彼は写真を見て言った。

カイト:「この机、取っ手が片方だけ少し下がってねえか?」

ユウキ:「え?」

 俺は写真を拡大した。

 確かに、右側の取っ手が少し傾いているように見える。

カイト:「点検記録の『取っ手の緩み』って、これかもしれねえな」

 俺は思わず頷いた。

ユウキ:「そうか。写真と点検記録をつなげられるかもしれない」

ソウタ:「写真の角度による見え方もある。まだ確定ではないぞ」

カイト:「分かってるって。でも、現場仕事してたから、こういうのは気になるんだよ」

 カイトはもう1度写真を見た。

カイト:「机そのものを探すなら、特徴は多いほうがいい」

 俺はノートに書き加えた。

『右側の取っ手に緩みの可能性』

 小さなことでも、手がかりになる。

     ◇

 午後1時30分。

 俺たちは備品移管記録を読み直した。

 そこには、閉鎖時の作業について、短い説明があった。

『備品の移管に際しては、管理番号と状態を照合』

『個人の所有物が残存している場合は、別途確認』

 俺はそこで手を止めた。

ユウキ:「……個人の所有物?」

 リナが画面をのぞき込む。

リナ:「引き出しの中に私物があれば、机と一緒に移管されず、別に保管された可能性があるね」

 俺は息をのんだ。

 今まで、机を探すことばかり考えていた。

 だが、引き出しの中身が先に取り出されていたら。

 机の移管先を調べても、目的のものは見つからない。

シオン:「INFO-009を買う前に分かってよかったね」

ユウキ:「ああ……」

 80,000円を払って机の移管先が分かっても、そこに中身があるとは限らない。

 俺は購入を急がなかったことに、少し安心した。

     ◇

 午後2時45分。

 俺たちは『個人の所有物』に関する記録を検索した。

 結果は2件。

 1件目は、一般的な返却手順。

 2件目は、閉鎖時の保管品一覧だった。

『閉鎖時保管品一覧』

『閲覧制限中』

 俺は画面を見つめた。

ユウキ:「……こっちかもしれない」

 シオンが頷く。

シオン:「机の中身が取り出されていたなら、保管品一覧に記録が残っている可能性がある」

 だが、一覧は読めない。

 俺は資料の詳細情報を開いた。

 そこには、管理部署が記されていた。

『青風こども生活支援センター 事務室』

 そして、管理責任者の欄。

『早川恵子』

 俺は息をのんだ。

 施設長の早川さん。

 写真にも写っていた人物だ。

 父さんの事件について、どこまで知っていたのだろう。

 そして、閉鎖時に残された子どもたちの私物を、どう扱ったのだろう。

     ◇

 午後4時。

 俺たちは調査結果をまとめた。

 ホワイトボードには、今日分かったことが並んでいる。

『青い壁の遊戯室に、引き出し付き机があった』

『机の側面には管理シールが貼られていた』

『閉鎖前の点検記録に、取っ手の緩い机が記載されている』

『移管時、残された私物は別途確認される手順だった』

『閉鎖時保管品一覧は閲覧制限中』

 ソウタが腕を組んだ。

ソウタ:「つまり、机を追うだけでは不十分だ」

ユウキ:「うん。中身が別に保管されていた可能性がある」

リナ:「まずは保管品一覧を調べる方法を探そう」

 俺は頷いた。

 青い部屋の引き出し。

 そこに何かがあったとしても、今は別の場所に移されているかもしれない。

 手紙の送り主は、そこまで知っていたのだろうか。

 それとも、8歳の俺に、ただ思い出してほしかっただけなのか。

     ◇

 午後5時。

 資料閲覧室を出ると、廊下にミオがいた。

ミオ:「ユウキ。今日はどうだった?」

ユウキ:「机の中身が、別に保管されてたかもしれないって分かった」

ミオ:「そっか」

ユウキ:「俺、ずっと机を探せばいいと思ってた。でも、探すべきものは机じゃないんだよな」

 ミオは静かに頷いた。

ミオ:「大切なものって、入れ物より中身のほうが大事だもんね」

 俺は笑った。

ユウキ:「そうだな」

 少し歩いてから、俺は手紙を取り出した。

ユウキ:「これ、12年間持ってたんだ。何で持ってたかも忘れてたのに」

 ミオは手紙を見た。

ミオ:「なくさなかったんだね」

ユウキ:「……うん」

 俺は手紙を丁寧に折りたたんだ。

 約束を忘れていた。

 でも、なくさなかった。

 それだけは、12年前の誰かに伝えたいと思った。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、ノートを開いた。

『机の移管先を調べても、中身が見つかるとは限らない』

『閉鎖時保管品一覧を確認する必要がある』

 その下に、もう1行。

『早川恵子は、保管品一覧の管理責任者だった』

 俺はペンを置いた。

 そのとき、端末が震えた。

『STORE Xよりお知らせ』

 新しい情報商品が追加された。

『INFO-010:閉鎖時保管品一覧について』

 価格は、50,000円。

 俺は商品説明を開いた。

『本商品では、閉鎖時保管品一覧に記載された品目の分類および件数を開示します』

 品目の分類と件数。

 個別の持ち主や保管先までは分からない。

 それでも、机の引き出しに残されていたものが、保管品に含まれているかもしれない。

 俺は購入画面を閉じた。

 明日、みんなに相談しよう。

 そう考えた直後。

 端末に新しい通知が届いた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『あなたは、引き出しの中身を探しています。』

 続けて、文章が表示される。

『でも、そこに入っていたものは、1つではありません。』

 俺は息をのんだ。

 1つではない?

 手紙には、引き出しを思い出してと書かれていた。

 だが、中身が1つだとは書かれていない。

 次の文章が表示された。

『あなたが約束した相手は、2人です。』

 俺は動けなくなった。

 2つの約束。

 2人の相手。

 青い飾りの女の子。

 左端の子ども。

 まさか、あの2人と、それぞれ約束したのか。

 だが、まだ分からない。

 最後の1行が表示された。

『そのうち1人は、あなたが何をなくしたのか知っています。』

 俺は手紙を握りしめた。

 何をなくした?

 手紙は、ここにある。

 12年間、なくさずに持っていた。

 では、俺がなくしたものとは何だ?

 俺は写真を開いた。

 8歳の俺。

 青い飾りの女の子。

 左端の子ども。

 そのとき、ふと気づいた。

 俺は、手紙をなくしていない。

 でも――。

 約束した相手の名前を、忘れている。

ユウキ:「……名前?」

 俺は写真を見つめた。

 12年前。

 俺は、誰かと約束した。

 そして、その名前を忘れた。

 DAY13。

 第1回投票まで、あと17日。

 俺はまだ、2人の名前を思い出せない。

 だが、引き出しの中に残されていたものが、俺の失った記憶につながっている。

 その可能性だけは、確かに大きくなっていた。

第1章 第19話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


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