↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/54

第1章 第18話「開けてはいけなかった手紙」

挿絵(By みてみん)


 DAY11。

 午後11時26分。

 俺は、古い紙の最後の折り目に指をかけていた。

 12年前にもらったらしい、小さな手紙。

 表には、子どもの字でこう書かれている。

『ぜったいに、なくさないでね。』

 裏には、もう1つ。

『こまったときは、あけてね。』

 俺は今、間違いなく困っている。

 父さんの事件。

 消えた1億円。

 主催者X。

 そして、思い出せない2つの約束。

 ゆっくりと折り目を開いた。

 中には、たった1行。

『あおいへやの、ひきだしをおもいだして。』

ユウキ:「……青い部屋?」

 俺は思わず声に出した。

 住所でも、名前でもない。

 金の送金先でもない。

 青い部屋の引き出し。

 それだけだった。

 紙を裏返す。

 ほかに文字はない。

 ただ、右下に青い色鉛筆で、小さな四角が描かれていた。

 四角の中には、丸が2つ。

 俺はしばらく、それを見つめた。

 見覚えがある気がした。

 でも、何の絵なのか分からない。

     ◇

 午前0時03分。

 俺は手紙を机に置き、古い布袋を調べ直した。

 袋は色あせている。

 縫い目も少しほつれていた。

 中には手紙以外、何も入っていない。

 どうして俺は、これを12年間も持っていたんだろう。

 捨てずにいた理由すら思い出せない。

 だが、あの日の俺は、確かに約束したのだ。

『ぜったいに、なくさないでね。』

 俺は袋を閉じた。

 そして、ノートに書く。

『青い部屋の引き出し』

『四角の中に丸2つの絵』

『誰からもらったか不明』

 手紙が本物だとしても、今の事件に関係するとは限らない。

 それでも、12年前の俺にとって大切なものだったことは、確かな気がした。

     ◇

 DAY12。

 午前8時。

 食堂でレンに手紙を見せた。

レン:「……青い部屋の引き出し?」

ユウキ:「覚えがないんだ」

レン:「青い部屋って、壁が青いのか?」

ユウキ:「分からない」

レン:「引き出しって、机の?」

ユウキ:「分からない」

レン:「書いたのは誰?」

ユウキ:「分からない」

 レンは真剣な顔で頷いた。

レン:「なるほど。分からないことが分かった」

ユウキ:「調査開始5秒で終わらせるな」

 レンは笑ったあと、手紙をもう1度見た。

レン:「でもさ、これを渡した子は、ユウキが困ったときに思い出してほしかったんだろ?」

ユウキ:「……そうなのかな」

レン:「少なくとも、なくしてほしくなかったんだろうな」

 俺は手紙を見つめた。

 12年間。

 俺は約束の内容を忘れていた。

 それでも、手紙だけはなくさなかった。

     ◇

 午前9時。

 資料閲覧室には、新しい資料が公開されていた。

『青風こども生活支援センター・閉鎖時の活動記録』

 公開件数は5件。

 そのうち、全文を読めるものは2件。

 残り3件には閲覧制限がかかっている。

 俺はシオンとリナに手紙を見せた。

シオン:「青い部屋の引き出しか……」

リナ:「まずは、施設にそういう部屋があったか調べよう」

 俺たちは施設の間取り図を検索した。

 結果は1件。

『青風こども生活支援センター・施設案内図』

 画面に、古い建物の簡単な図面が表示された。

 玄関。

 食堂。

 遊戯室。

 相談室。

 事務室。

 資料保管室。

 俺は目を凝らした。

ユウキ:「青い部屋って名前はないな」

リナ:「正式名称じゃなくて、子どもたちの呼び方だったのかも」

 その可能性はある。

 8歳の子どもが書いた手紙だ。

 大人が使う部屋の名前とは限らない。

     ◇

 午前10時12分。

 ヒナが施設紹介の写真を見つけた。

ヒナ:「ユウキくん! 部屋の写真があったよ!」

 画面には、施設の内部が写っていた。

 明るい食堂。

 絵本が並ぶ遊戯室。

 小さな机が置かれた相談室。

 俺は1枚ずつ確認する。

 そして、遊戯室の写真で手が止まった。

 壁の一部が、淡い青色だった。

ユウキ:「……ここ」

 ヒナが写真を拡大する。

 青い壁。

 低い本棚。

 窓際の机。

 その机には、引き出しが2つついていた。

 俺は息をのんだ。

 手紙の右下に描かれた四角。

 その中の丸2つ。

 もしかして、あれは引き出しの取っ手だったのか。

ヒナ:「似てるね」

ユウキ:「うん。でも、これだけじゃ分からない」

 俺は手紙を並べた。

 子どもの絵と、写真の机。

 確かに似ている。

 ただ、どこにでもありそうな机だ。

 今は候補として記録しておこう。

     ◇

 午前11時。

 俺たちは閉鎖時の活動記録を読み始めた。

 1件目は、施設の備品整理について。

『閉鎖に伴い、備品の一部を関係施設へ移管』

『個人の所有物については、可能な限り本人または保護者へ返却』

 俺は文章を追った。

 もし、青い部屋の机も移管されていたら。

 その引き出しの中身は、どうなったのだろう。

 2件目は、子どもたちへの対応記録だった。

『閉鎖に伴う環境変化について、個別の説明を実施』

『一部の児童については、移動先の情報を関係者間で限定して共有』

 俺はそこで手を止めた。

ユウキ:「……限定して共有?」

 シオンが画面をのぞき込む。

シオン:「昨日までの証言ともつながるね。移動先の情報が、全職員に共有されていたわけじゃない」

リナ:「でも、なぜ限定したのかは書かれていない」

 俺は頷いた。

 昨夜のメッセージには、守られた人たちがいると書かれていた。

 だが、今の記録から分かるのは、情報の共有範囲が限定されていたということだけだ。

 理由までは分からない。

     ◇

 昼休み。

 食堂でカイトが俺に声をかけた。

カイト:「今日は何か進んだか?」

ユウキ:「昔の手紙が出てきた。青い部屋の引き出しを思い出せって書いてある」

カイト:「引き出し?」

 俺は手紙を見せた。

 カイトは右下の絵を見て、首をかしげた。

カイト:「これ、机じゃねえか?」

ユウキ:「やっぱりそう見える?」

カイト:「四角に丸2つ。引き出しの取っ手っぽい」

 そこへソウタが来た。

ソウタ:「絵だけで机と断定するなよ」

カイト:「分かってるって」

ソウタ:「お前、さっき断定しかけただろ」

カイト:「俺の推理には勢いがあるんだよ」

ソウタ:「勢いで証拠は増えない」

 レンが横から口を挟んだ。

レン:「でも、勢いで昼飯は増やせるかもしれない」

カイト:「どうやって?」

レン:「店員さんに熱意を伝える」

ソウタ:「やめろ。迷惑だ」

 俺は笑いながら、手紙をしまった。

     ◇

 午後1時30分。

 資料閲覧室へ戻った俺たちは、施設の備品移管記録を探した。

 検索結果は3件。

 そのうち、公開されているのは1件だけだった。

『備品移管概要』

 そこには、机や椅子、書籍などが、複数の関係施設へ移されたと書かれていた。

 だが、個別の備品番号や移管先は伏せられている。

ユウキ:「……机がどこへ行ったかは分からないな」

リナ:「それでも、廃棄されたとは限らないことは分かった」

 俺は頷いた。

 青い部屋の引き出し。

 もし本当にあの机なら、どこかに残っている可能性がある。

 だが、12年前の備品だ。

 今も存在するとは限らない。

     ◇

 午後3時。

 ヒナが施設紹介写真をもう1度開いた。

ヒナ:「ユウキくん、ちょっと気になることがある」

ユウキ:「何?」

 彼女は青い壁の部屋を拡大した。

 机の上には、折り紙や色鉛筆が置かれている。

 その横に、小さな箱があった。

 箱の側面には、手書きの文字。

『おもいで』

 俺は画面を見つめた。

ユウキ:「……思い出?」

ヒナ:「子どもたちが作ったものを入れてた箱なのかな」

 俺は手紙を取り出した。

『あおいへやの、ひきだしをおもいだして。』

 引き出し。

 思い出の箱。

 どちらも、青い壁の部屋にあった。

 もしかして、手紙の送り主は、そこに何かを残したのだろうか。

 だが、写真だけでは分からない。

     ◇

 午後4時。

 俺たちは今日の調査結果をまとめた。

 ホワイトボードには、新しい項目が並んでいる。

『施設の遊戯室には、青い壁の一角があった』

『そこに引き出し2つの机が写っている』

『閉鎖時、備品の一部は関係施設へ移管された』

『一部児童の移動先情報は、限定して共有されていた』

『青い壁の部屋には「おもいで」と書かれた箱があった』

 シオンが腕を組んだ。

シオン:「手紙の内容と、写真の部屋が一致する可能性は高まったね」

ソウタ:「ただし、手紙の送り主も、引き出しの中身も不明だ」

ユウキ:「うん」

 俺はホワイトボードを見つめた。

 12年前の約束。

 青い部屋。

 引き出し。

 少しずつ、手がかりがつながり始めている。

 だが、肝心の答えにはまだ届かない。

     ◇

 午後5時。

 資料閲覧室を出ると、廊下にレイがいた。

レイ:「青い部屋、見つかった?」

 俺は足を止めた。

ユウキ:「……何で知ってる?」

レイ:「さっき、共有テーブルで話してたのが聞こえたから」

 確かに、午後の調査中は何度もその話をしていた。

ユウキ:「候補は見つかった。でも、引き出しの中身までは分からない」

 レイは頷いた。

レイ:「引き出しって、何かを隠す場所でもあるけど、何かをしまっておく場所でもあるよね」

ユウキ:「……どういう意味?」

レイ:「隠したかったのか、なくしたくなかったのか。そこは違うと思う」

 俺は手紙を思い出した。

『ぜったいに、なくさないでね。』

 確かに、あの子は何かを隠そうとしたのではなく、残そうとしたのかもしれない。

 俺は頷いた。

ユウキ:「……ありがとう」

 レイは小さく手を振り、歩き去った。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、古い手紙を机に広げた。

 12年前の子どもの字。

『あおいへやの、ひきだしをおもいだして。』

 俺は目を閉じた。

 青い壁。

 低い机。

 色鉛筆。

 小さな箱。

 そして、誰かの声。

『こまったときは、あけてね』

 俺は目を開けた。

 あの日、俺は何かを受け取った。

 それをなくさないと約束した。

 でも、手紙の送り主は、なぜ青い部屋の引き出しを覚えていてほしかったのだろう。

 俺はノートに書き加えた。

『手紙は、何かを思い出すためのものかもしれない』

 そのとき、端末が震えた。

『STORE Xよりお知らせ』

 新しい情報商品が追加された。

『INFO-009:青風こども生活支援センター・備品移管記録について』

 価格は、80,000円。

ユウキ:「……また80,000円か」

 俺は商品説明を読んだ。

『本商品では、閉鎖時に移管された備品のうち、指定された1件の移管先情報を開示します』

 指定された1件。

 つまり、備品番号が分からなければ、狙った机の情報を買えるとは限らない。

 俺は購入画面を閉じた。

 今は、まだ買うべきじゃない。

 まず、机の備品番号を探そう。

 そう考えた直後。

 端末に新しい通知が届いた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『あなたが探しているのは、机ではありません。』

 俺は息をのんだ。

 続けて、文章が表示される。

『引き出しに入っていたものです。』

 俺は手紙を見つめた。

 引き出しに入っていたもの。

 何だ。

 あの日、何をしまった?

 最後の1行が表示された。

『それを見れば、あなたは2つ目の約束を思い出します。』

 俺は立ち上がった。

 やはり、青い部屋の引き出しに、約束の手がかりがある。

 だが、今はその場所すら分からない。

 俺は写真を開いた。

 青い壁。

 引き出し2つの机。

 そして、机の上に置かれた『おもいで』の箱。

 そのとき、ふと気づいた。

 写真の机。

 右側の引き出しが、少しだけ開いている。

 中に、何か白いものが見えた。

 俺は画面を拡大した。

 紙のようにも見える。

 だが、文字までは読めない。

 その白いものの端に、小さな青い印があった。

 俺は手元の手紙を見た。

 右下に描かれた、青い四角。

 その色と、よく似ていた。

ユウキ:「……まさか」

 俺は写真と手紙を並べた。

 12年前。

 青い部屋。

 引き出し。

 そして、俺が忘れた約束。

 DAY12。

 第1回投票まで、あと18日。

 俺はまだ、引き出しの中身を知らない。

 だが、そこには確かに、誰かが残したものがあったのかもしれない。

 そして、その誰かは――。

 俺がいつか困る日が来ることを、知っていたのだろうか。

第1章 第18話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


ブックマークお願いします♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。