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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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第1章 第2話「最初の秘密」

挿絵(By みてみん)


 この島には、12年前の事件を知っている人間がいる。

 拾った紙には、そう書かれていた。

 俺はその紙をポケットに押し込み、参加者たちの後を追った。

 誰が書いたのか。

 何のために俺へ渡したのか。

 そもそも、本当に俺宛てなのか。

 考えるべきことは山ほどあった。

 ただ、今の俺にはもっと切実な問題がある。

 腹が減った。

 昨日の夜から、まともなものを食べていない。

 1億円を手に入れる前に餓死したら、さすがに笑えない。

     ◇

 中央施設を出ると、参加者たちは係員に案内され、居住棟へ向かった。

 建物は3階建てで、外観は小さなリゾートホテルのようだった。

 1階には共有リビングと洗濯室。

 2階と3階には個室が並んでいる。

 各部屋の扉には、参加者の名前が表示されていた。

レン:「おお、個室じゃん! もっとこう、13人で雑魚寝する感じかと思ってた」

カイト:「365日も雑魚寝だったら、投票より先に寝床の奪い合いが始まるだろ」

レン:「俺、寝相いいよ?」

ソウタ:「自分で確認できない情報を断言するな」

レン:「寝相にまで証拠求められるの?」

 思わず笑ってしまった。

 ついさっきまで、誰もが誰かを疑っていた。

 それなのに、こんなくだらない会話で少しだけ空気が和らぐ。

 人間って、案外単純なのかもしれない。

 もっとも、ソウタだけは真顔だった。

 あいつ、本気で寝相の証明を求めていそうだ。

 俺に割り当てられたのは、2階の207号室。

 扉に端末をかざすと、電子音とともに鍵が開いた。

 室内にはベッド、机、クローゼット、シャワールーム。

 窓からは海が見える。

 想像以上に快適だった。

ユウキ:「……俺のアパートより広いな」

 しかも、こっちは家賃がかからない。

 無職の俺にとって、すでに待遇改善である。

 いや、感心している場合じゃない。

 荷物を置き、改めて部屋を確認する。

 机の上には、島内の案内冊子と小型端末が置かれていた。

 端末には俺の名前と、生活費の残高が表示されている。

『神崎ユウキ』

『生活費残高:100,000円』

 画面を操作すると、STORE Xの商品一覧が開いた。

 食料、日用品、衣類。

 そして、少し下にスクロールしたところで、妙な項目を見つけた。

『INFORMATION』

 情報。

 商品として売られているらしい。

 試しに開こうとすると、注意書きが表示された。

『情報商品の購入には、所定の対価が必要です』

『販売される情報は事実に基づきますが、商品ごとに開示範囲が異なります』

 つまり、嘘の情報を売るわけではない。

 ただし、知りたいことを全部教えてくれるとも限らない。

ユウキ:「……嫌な商売だな」

 誰がこんな仕組みを考えたんだ。

 そう思ったところで、主催者Xの存在が頭をよぎった。

 俺は端末を閉じた。

     ◇

 昼食の時間になると、13人全員が食堂に集まった。

 広い室内には長いテーブルが並び、窓の向こうには海が広がっている。

 食事はSTORE Xで購入する方式だった。

 端末で注文すると、厨房の受け取り口に料理が用意される。

 俺は迷わずカレーを選んだ。

 価格は800円。

 生活費から引き落とされ、残高が99,200円になる。

 その隣で、レンが端末を見ながら固まっていた。

ユウキ:「どうした?」

レン:「いや、ステーキがあるんだよ」

ユウキ:「いいじゃん」

レン:「でも、4,500円」

ユウキ:「高いな」

レン:「1億円ゲームに参加した初日の昼飯がカレーって、夢がなくない?」

ユウキ:「365日あるんだぞ。初日から飛ばしたら後悔するだろ」

レン:「……正論が貧乏くさい」

ユウキ:「無職に言うな」

 結局、レンもカレーを注文した。

 俺たちは仲良く800円の昼食を受け取る。

 1億円を目指す男2人の、堅実すぎる船出だった。

 席に着くと、アカリが手を振った。

アカリ:「ユウキくん、レンくん! こっち空いてるよ!」

 長いテーブルには、すでに何人かが集まっていた。

 ミオ、ナナ、ハルカ、ヒナ。

 向かいにはシオンとリナも座っている。

 俺たちが加わると、ヒナがカメラを構えた。

ヒナ:「記念に撮ろうよ! 島で最初のご飯!」

レン:「いいね。俺、真ん中がいい」

アカリ:「自分から言うんだ」

レン:「写真は立ち位置が命だから」

 ヒナがシャッターを切る。

 画面を確認した彼女は、なぜか首をかしげた。

ヒナ:「あれ? レンくんだけブレてる」

レン:「なんで!?」

ソウタ:「撮影中にポーズを変えていたからだろ」

 いつの間にか近くに来ていたソウタが、冷静に原因を指摘した。

 レンは肩を落とした。

 その様子を見て、ナナまで笑っていた。

 少なくとも今この瞬間だけは、普通の同世代の集まりに見える。

 主催者Xが、この中にいるなんて。

 そう考えると、不思議な気分だった。

     ◇

 食事が終わる頃、シオンが口を開いた。

シオン:「少し確認したいことがある」

 彼はノートをテーブルに置いた。

シオン:「全員、招待状は同じ内容だった?」

 空気が変わる。

カイト:「どういう意味だ?」

シオン:「俺の招待状には、参加者が13人であることと、365日間のゲームだという説明があった。ほかの人も同じか確認したい」

リナ:「私も同じ。最大1億円って書いてあった」

アカリ:「私もだよ」

 次々に声が上がる。

 どうやら、基本条件は共通しているらしい。

 だが、俺には気になることがあった。

 招待状に書かれていた、12年前の出来事という言葉。

 あれも全員に届いていたのだろうか。

ユウキ:「……招待状に、ほかの文章はなかった?」

シオン:「ほか?」

ユウキ:「その……個人的なこととか」

 シオンの視線が俺に向く。

シオン:「君の招待状にはあったの?」

 しまった。

 聞き方を間違えた。

 俺は一瞬、答えに詰まった。

ユウキ:「……あった」

 ここで否定しても、話がややこしくなるだけだ。

 俺は正直に答えた。

ユウキ:「12年前の出来事について、確かめたいことがあるはずだって」

 テーブルが静かになった。

 最初に反応したのは、ナナだった。

ナナ:「……12年前?」

 その声が、少し震えていた。

アカリ:「ナナちゃん?」

ナナ:「ううん。何でもない」

 ナナは慌てて首を振る。

 だが、その反応を見逃さなかった人物がいた。

レイ:「俺の招待状にも、過去に関する文章があったよ」

 少し離れた席から、レイが言った。

 いつから話を聞いていたのだろう。

レイ:「ただし、君と同じ文章かは分からない」

シオン:「内容を教えてもらえる?」

レイ:「今はやめておく」

ソウタ:「なぜ?」

レイ:「俺が話した内容を、ほかの人が自分の記憶と勘違いするかもしれないから」

 なるほど。

 筋は通っている。

 ただ、本当にそれだけが理由なのかは分からない。

 俺がレイを見つめていると、ミオが静かに口を開いた。

ミオ:「招待状に書かれていたことを、全部ここで話す必要はないと思う」

シオン:「理由は?」

ミオ:「まだ、お互いのことを何も知らないから」

 ミオはテーブルを見渡した。

ミオ:「話したくないことまで、今すぐ話さなくてもいいんじゃないかな」

ハルカ:「私もそう思う。まずは生活に慣れることが先だよ」

 ハルカが頷く。

 シオンは少し考えたあと、ノートを閉じた。

シオン:「分かった。今日のところは、ここまでにしよう」

 話し合いは終わった。

 けれど、俺の中では何も終わっていなかった。

 ナナの反応。

 レイの言葉。

 そして、ミオが話し合いを止めた理由。

 全員が何かを隠しているように見える。

 いや、実際に隠しているのかもしれない。

 ただし、秘密があることと、Xであることは別だ。

 俺は自分にそう言い聞かせた。

     ◇

 夕方。

 俺は1人で居住棟の外に出た。

 海から吹く風が、昼間の熱を少しずつ冷ましていく。

 ポケットから、ホールで拾った紙を取り出した。

『13人の中に、12年前の事件を知っている人間がいる。』

 やはり、気になる。

 今日の話し合いで、少なくとも俺以外にも過去に関する文章を受け取った人がいると分かった。

 なら、この紙を書いた人物も、その過去を知っているのだろうか。

 俺は紙を裏返した。

『あなたが知っている事件は、本当に事実ですか?』

 その文字を見つめていると、背後から声がした。

カイト:「ユウキ、何してんだ?」

 振り向くと、カイトが立っていた。

 手には、島内の案内冊子を持っている。

ユウキ:「ちょっと散歩」

カイト:「そうか。俺も施設を見て回ってた」

 カイトは俺の手元に視線を落とした。

カイト:「……それ、何だ?」

 反射的に紙を握りしめる。

ユウキ:「ああ、ちょっとしたメモ」

カイト:「ふうん」

 カイトはそれ以上聞かなかった。

 代わりに、海の向こうを指さした。

カイト:「あの管理棟、立ち入り禁止らしいぜ」

ユウキ:「管理棟?」

カイト:「ああ。島の設備を管理してる建物だってさ」

 少し離れた場所に、窓の少ない建物が見えた。

カイト:「何かあったときに困るから、場所だけ確認しておこうと思ってな」

ユウキ:「なるほど」

カイト:「ま、俺たちが勝手に入ったら怒られるだろうけど」

 カイトは笑った。

 俺もつられて笑う。

 そのとき、居住棟の入口から声がした。

ヒナ:「カイトくーん! さっきの写真、送るねー!」

カイト:「おう!」

 ヒナはカメラを掲げている。

 どうやら、島の風景を撮り歩いていたらしい。

 俺はふと、あることに気づいた。

 ヒナは船の中でも、ホールでも、何枚も写真を撮っていた。

 もし、あの紙を置いた人物が写っていたら。

ユウキ:「……ヒナ!」

ヒナ:「なにー?」

ユウキ:「今日撮った写真、見せてもらってもいい?」

ヒナ:「いいよ! いっぱいあるけど!」

 彼女は嬉しそうに駆け寄ってきた。

 カメラの画面を操作し、撮影した写真を順番に表示する。

 船内。

 港。

 中央施設。

 ホール。

 そして、昼食の写真。

 何枚目かで、俺は指を止めた。

ユウキ:「……これ」

ヒナ:「ああ、ホールの写真だね」

 写真には、ゲーム開始前のホールが写っていた。

 13脚の椅子。

 巨大なモニター。

 そして、まだ誰も座っていない俺の席。

 その足元に、小さな白い紙が落ちていた。

 俺が拾った、あの紙だ。

ユウキ:「……最初から、あったのか」

ヒナ:「ん?」

ユウキ:「いや、何でもない」

 少なくとも、ゲーム説明が始まる前には置かれていた。

 それなら、参加者の誰かが事前に置いたのか。

 それとも、運営側が用意したのか。

 写真を拡大しようとした、そのとき。

ヒナ:「あれ? これ、変だな」

ユウキ:「何が?」

ヒナ:「撮ったとき、気づかなかったんだけど……」

 ヒナが画面を拡大する。

 ホールの奥。

 参加者用の13脚とは別に、壁際に小さな机が写っていた。

 その上に、黒い封筒が置かれている。

 俺に届いた招待状と、同じ色だった。

 封筒の表面には、銀色の文字。

 画質が粗く、全部は読めない。

 けれど、最後の1文字だけは見えた。

『X』

 俺は息をのんだ。

 13人の中に、主催者Xがいる。

 なら、あの封筒は誰のものだ?

 ヒナが首をかしげる。

ヒナ:「これ、誰かの忘れ物かな?」

 俺は答えられなかった。

 写真に写る黒い封筒。

 そして、俺のポケットにある白い紙。

 2つの落とし物が、偶然同じ場所にあったとは思えなかった。

 だが、もっと気になることがあった。

 ヒナが撮影した写真には、黒い封筒のすぐ近くに、人影が写っていた。

 顔は見えない。

 服装も、はっきりとは分からない。

 ただ、その人物の手には――。

 俺が拾ったものと同じ、小さな白い紙が握られていた。

 俺は画面を見つめた。

 DAY1。

 まだ誰も、Xに投票していない。

 それなのに、誰かがもう動き始めている。

 この島で最初に俺へ秘密を渡したのは、一体誰なんだ。

第1章 第2話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


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