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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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第1章 第1話「13人目の招待状」

**一年間、孤島で暮らすだけで――1億円。**


そんな招待状が届いたら、あなたは参加しますか?


集められたのは、全員20歳の男女13人。


食料もある。


寝る場所もある。


生活費も支給される。


嫌になれば、途中で島を出ることもできる。


ただ一年間暮らすだけ。


――そのはずだった。


しかし、このゲームには一つだけ、とんでもない秘密がある。


**「参加者13人の中に、ゲームを作った主催者Xがいる」**


隣で笑っている人間が、Xかもしれない。


一番信用している人間が、Xかもしれない。


そして、自分が信じている「真実」さえ、間違った解釈なのかもしれない。


なぜ、この13人が選ばれたのか。


なぜ、賞金は1億円なのか。


そして――主催者Xは誰なのか。


すべての答えは、365日間の中にあります。


何気ない会話。


小さな違和感。


見落としてしまいそうな行動。


ぜひ、Xの正体を推理してみてください。


最後まで信じられるのは、誰なのか。


――1億円を懸けた、365日間の心理ゲーム。


**開幕です。**


挿絵(By みてみん)


 1億円あれば、人生は変わるのだろうか。

 少なくとも、俺はそう信じたかった。

 神崎ユウキ。20歳。無職。

 高校卒業後に就職した会社を辞めてから、もう半年が経つ。

 今日も求人サイトを開き、応募条件を眺め、結局どこにも応募しないまま昼を迎えた。

 机の上には、昨夜食べたカップ麺の容器。

 財布には3,240円。

 そして、引き出しの奥には、12年前の新聞記事が眠っている。

『青風未来基金から1億円消失。会計担当者に横領疑惑』

 会計担当者とは、俺の父親のことだ。

 父さんは事件について何も話さなかった。

 俺も、いつしか聞かなくなった。

 真相を知るのが怖かったからかもしれない。

 そんな俺のもとに、黒い封筒が届いた。

 差出人の名前はない。

 封を切ると、厚手のカードと小さな端末が入っていた。

『神崎ユウキ様』

『あなたを、1億円ゲームへご招待いたします』

ユウキ:「……何だ、これ」

 悪質な冗談だと思った。

 だが、次の文章を見て、笑えなくなった。

『あなたには、12年前の出来事について、確かめたいことがあるはずです』

 カードを持つ指に力が入る。

 どうして、俺の過去を知っている?

 端末の画面には、参加条件が表示されていた。

 参加者は13人。全員20歳。

 ゲーム期間は365日。

 最後まで残った参加者には、1人につき最大1億円。

 そして、画面の下には2つのボタン。

『参加する』

『参加しない』

 詐欺かもしれない。

 危険な企画かもしれない。

 それでも、俺は画面を閉じられなかった。

 1億円が欲しい。

 人生を変えたい。

 父さんの事件についても、知りたい。

 どれが本当の理由なのか、自分でも分からなかった。

ユウキ:「……参加する」

 指先が画面に触れる。

『参加を受け付けました』

 続けて、集合場所と日時が表示された。

 最後に、短い注意書きが現れる。

『招待状の内容を第三者に開示しないでください』

 俺は端末を伏せた。

 部屋は、さっきまでと何も変わらない。

 なのに、もう元の生活には戻れないような気がした。

     ◇

 指定された港に着いたのは、翌朝6時だった。

 停泊していたのは、白い中型船。

 乗船口には、黒い制服を着た係員が立っていた。

係員:「神崎ユウキ様ですね。こちらへどうぞ」

ユウキ:「あの、主催者の人は?」

係員:「島でご案内いたします」

ユウキ:「このゲーム、本当に賞金が出るんですか?」

係員:「契約内容をご確認のうえ、ご自身でご判断ください」

 何を聞いても、用意された答えしか返ってこない。

 船内へ入ると、すでに何人かが集まっていた。

 最初に声をかけてきたのは、明るい茶髪の男だった。

レン:「お、最後の人?」

ユウキ:「たぶん。神崎ユウキです」

レン:「一ノ瀬レン。よろしく。いやあ、みんな若いね。俺も20歳だけど」

 レンは笑いながら、周囲を見渡した。

レン:「しかし、すごいよな。こんな船まで用意して。主催者、相当金持ちなんじゃない?」

 その隣で、眼鏡をかけた男が口を開いた。

ソウタ:「金持ちかどうかは分からない。船を借りただけかもしれないだろ」

レン:「細かいなあ」

ソウタ:「黒川ソウタ。こういう企画は、細かいところを確認したほうがいい」

 ソウタは手元の端末を操作していた。

 画面には、参加規約らしき文章が並んでいる。

 少し離れた席では、銀髪の男が窓の外を眺めていた。

 俺と目が合うと、彼は軽く会釈した。

レイ:「九条レイ。よろしく」

 それだけ言うと、また海へ視線を戻す。

 必要以上に話すつもりはないらしい。

 船内の後方では、短髪の男が係員に何かを尋ねていた。

カイト:「島に医療設備はあるんだよな?」

係員:「ございます」

カイト:「緊急時の搬送は?」

係員:「対応手順を用意しております」

カイト:「ならいい。堂島カイトだ。よろしくな」

 カイトは俺に気づくと、気さくに手を上げた。

 その近くには、濃紺の髪をした男が座っている。

 膝の上には、小さなノート。

 彼は係員の返答を聞くたび、何かを書き込んでいた。

ユウキ:「何をメモしてるんですか?」

シオン:「説明されたこと。後で言った、言わないになるのは面倒だから」

 男はペンを止めた。

シオン:「藤堂シオン。君も、契約書は読んでおいたほうがいい」

 正論だった。

 ただ、シオンのノートには、俺が乗船する前の説明まで記録されているらしい。

 慎重な人なんだろう。

 俺はそう思って席を探した。

     ◇

 窓際では、女の子がカメラを構えていた。

ヒナ:「あっ、そこ立ってて! 海がすごく綺麗に写るから!」

ユウキ:「俺が邪魔ってこと?」

ヒナ:「違う違う! 人が入ったほうがいい感じになるの!」

 シャッター音が響く。

ヒナ:「ありがと! 小鳥遊ヒナです。写真、あとで見せるね!」

 その声に、近くの女の子が笑った。

アカリ:「ヒナちゃん、もう全員撮ってるんじゃない?」

ヒナ:「まだだよ。撮らせてくれない人もいるし」

アカリ:「そりゃそうでしょ。あ、私は桜庭アカリ。よろしくね」

 ピンクがかった茶髪のアカリは、初対面とは思えないほど自然に話しかけてくれた。

 彼女の隣には、淡い髪色の女の子が座っている。

ナナ:「水瀬ナナです。よろしくお願いします」

 ナナは小さく頭を下げた。

アカリ:「そんな緊張しなくても大丈夫だって」

ナナ:「だって、知らない人ばっかりだし……」

 俺も同じ気持ちだった。

 別の席では、青みがかった黒髪の女の子が端末を見つめている。

リナ:「ねえ、これ。参加規約の更新日時、招待状が届く前になってる」

ユウキ:「え?」

リナ:「あ、別に変ってわけじゃないよ。事前に用意したんだろうし」

 彼女は画面を閉じた。

リナ:「天宮リナ。こういうの、つい確認しちゃうんだよね」

 通路を挟んだ席には、落ち着いた雰囲気の女の子がいた。

 ダークブラウンの髪を揺らしながら、ナナにペットボトルを渡している。

ハルカ:「船酔いしそうなら、今のうちに飲んでおいたほうがいいよ」

ナナ:「ありがとう、ハルカちゃん」

ハルカ:「橘ハルカです。よろしくね、ユウキくん」

 名前を伝える前に呼ばれ、少し驚いた。

ハルカ:「さっき、レンくんとの会話が聞こえたから」

ユウキ:「ああ、なるほど」

 さらに奥では、淡いラベンダー色の髪の女の子が、救急用品の入った小さなポーチを確認していた。

セナ:「あ、これ? 念のため持ってきたの」

ユウキ:「準備いいね」

セナ:「相沢セナです。看護の勉強をしてるから、つい」

 彼女は微笑んだ。

セナ:「何も起きないのが1番だけどね」

 その言葉に、誰も反論しなかった。

 最後に、俺は窓際の空席へ向かった。

 隣には、黒髪の女の子が座っていた。

 長い髪と、紫がかった瞳。

 彼女は俺を見ると、穏やかに微笑んだ。

ミオ:「ここ、空いてるよ」

ユウキ:「ありがとう」

ミオ:「白石ミオです。よろしくね」

ユウキ:「神崎ユウキ。よろしく」

 名前を聞いた瞬間、胸の奥に小さな違和感が生まれた。

 白石。

 どこかで聞いたことがあるような。

 けれど、思い出せない。

ミオ:「どうかした?」

ユウキ:「いや。なんでもない」

 俺が座ると、船内アナウンスが流れた。

『参加者13人の乗船を確認しました。これより出航いたします』

 船がゆっくりと港を離れていく。

 こうして俺たちは、名前しか知らない12人とともに、見知らぬ島へ向かうことになった。

     ◇

 島が見えたのは、出航から約2時間後だった。

 青い海に囲まれた、緑の多い島。

 中央には大きな施設があり、周囲には複数の建物が並んでいる。

 まるで、小さな町を丸ごと用意したような光景だった。

ヒナ:「すごい! ここで365日暮らすの?」

カイト:「設備は思ったよりまともそうだな」

ソウタ:「外部との通信は制限されるらしい。そこが問題だろ」

レン:「まあまあ。まずは見てから考えようぜ」

 船を降りた俺たちは、中央施設のホールへ案内された。

 室内には13脚の椅子。

 正面には巨大なモニターが設置されていた。

 椅子には、それぞれ参加者の名前が記されている。

 全員が着席すると、照明が落ちた。

『WELCOME』

 モニターに白い文字が浮かぶ。

 続いて、機械的な音声が流れ始めた。

運営音声:「参加者の皆様。1億円ゲームへようこそ」

 ホールが静まり返る。

運営音声:「本日をDAY1とし、皆様には365日間、この島で共同生活を送っていただきます」

 画面には島の地図が映し出された。

 居住棟、食堂、投票室、管理棟。

 そして、STORE Xと表示された建物。

運営音声:「生活費として、毎月1人につき100,000円を支給します。食料、日用品、衣類などはSTORE Xで購入できます」

運営音声:「また、所定の手続きによる途中退出も可能です。ただし、退出した場合、賞金を受け取る資格を永久に失います」

 100,000円の生活費。

 最大1億円の賞金。

 説明だけ聞けば、破格の待遇だった。

 だが、そんなうまい話だけで終わるはずがない。

運営音声:「続いて、本ゲームの最重要ルールを説明します」

 モニターが暗転した。

 中央に、赤い文字が現れる。

『主催者X』

運営音声:「このゲームを企画した主催者Xは、参加者13人の中に存在します」

 数秒間、誰も声を出さなかった。

レン:「……え?」

ソウタ:「どういう意味だ?」

運営音声:「皆様のうち1人が、主催者Xです」

 俺は周囲を見渡した。

 レイは腕を組んだまま、表情を変えない。

 シオンはノートに何かを書き込んでいる。

 リナはモニターの説明を確認し、カイトは険しい顔で係員を見た。

 ヒナはカメラを膝に置き、アカリは隣のナナに声をかけていた。

 レンは苦笑いを浮かべ、ソウタは説明の続きを待っている。

 ハルカは静かに周囲を見渡し、セナは両手を握っていた。

 ミオも、他の参加者と同じようにモニターを見つめている。

 この中の誰かが、俺たちを集めた。

 それだけは確かなのだ。

運営音声:「皆様には、定期的にX投票を行っていただきます。第1回投票はDAY30に実施します」

 画面にルールが表示される。

 全員の投票が必須。

 自己投票も可能。

 最多得票者が判定対象となり、Xかどうかが判定される。

 最多得票が同数なら、対象者は決まらず、判定も行われない。

 Xではないと確定した人物は、それ以降の投票対象から外れる。ただし、投票権は失わない。

運営音声:「なお、主催者Xもゲーム開始後に運営システムの判定を自由に変更することはできません」

シオン:「質問があります」

 シオンが手を上げた。

シオン:「Xではないと判定された人は、その後も島に残るんですか?」

運営音声:「はい。退出を選択しない限り、共同生活を継続します」

ソウタ:「投票結果は全員に公開されるのか?」

運営音声:「各候補者の得票数と判定結果を公開します。個人の投票先は公開しません」

レン:「じゃあ、誰が誰に入れたかは分からないわけだ」

 レンが笑みを消した。

レン:「……それ、結構怖くない?」

 誰も答えなかった。

 さっきまで名前を教え合っていた相手が、急に遠く感じられる。

 誰かが笑っても、その笑顔に別の意味を探してしまう。

 誰かが黙っていても、何かを隠しているように見える。

 まだゲームは始まったばかりなのに。

 俺たちはもう、互いを疑い始めていた。

     ◇

運営音声:「最後に、主催者Xからのメッセージをお伝えします」

 画面に、白い文字が浮かび上がった。

『13人の皆様へ。』

『あなたたちは、無作為に選ばれたわけではありません。』

『この島で過ごす365日間が、それぞれの人生を見つめ直す時間になることを願っています。』

 俺は画面を見つめた。

 無作為ではない。

 つまり、Xは俺たち全員を選んだということか。

 何のために?

 その答えは、続く文章にも書かれていなかった。

『第1回投票まで、あと29日。』

『どうぞ、有意義な時間をお過ごしください。』

 照明が戻る。

 運営音声は、それきり何も話さなくなった。

 最初に口を開いたのはカイトだった。

カイト:「とりあえず、部屋を確認しようぜ。考えるのはそのあとだ」

アカリ:「そうだね。ずっとここにいても仕方ないし」

 参加者たちが立ち上がる。

 俺も席を離れようとしたとき、足元に紙が落ちているのを見つけた。

 小さく折り畳まれた、白い紙。

 誰かの落とし物だろうか。

 拾い上げると、内側に文字が書かれていた。

『13人の中に、12年前の事件を知っている人間がいる。』

 息が止まった。

 12年前の事件。

 まさか、青風未来基金のことか?

 顔を上げる。

 すでに何人かはホールを出ていた。

 レイは扉の近くで立ち止まり、ソウタはシオンに何かを尋ねている。

 ヒナは壁の案内板を撮影し、リナは端末を操作していた。

 ミオはアカリたちと話している。

 誰が紙を落としたのか、分からない。

 そもそも、落としたのか。

 わざと置いたのか。

ユウキ:「……何なんだよ、これ」

 紙を裏返す。

 そこには、もう1行だけ書かれていた。

『あなたが知っている事件は、本当に事実ですか?』

 俺は紙を握りしめた。

 父さんの顔が浮かぶ。

 あの日、何も話してくれなかった父さんの顔が。

 もし、この島に真相を知る人間がいるなら。

 俺は、そいつを見つけたい。

 だが、問題が1つある。

 この紙を書いた人物が、俺に真実を教えようとしているとは限らない。

 むしろ、俺を誘導しようとしているのかもしれない。

 そして、その人物こそが――。

 俺はホールを出ていく参加者たちを見つめた。

 誰もが普通の20歳に見えた。

 笑う人。

 黙る人。

 周囲を気遣う人。

 規則を確認する人。

 写真を撮る人。

 その中の誰かが、俺たち13人をこの島へ招待した。

 誰かが、1億円を用意した。

 誰かが、12年前の事件を知っている。

 けれど、それが同じ人物なのかさえ、今の俺には分からなかった。

 ポケットに紙をしまい、俺はみんなの後を追った。

 DAY1。

 第1回投票まで、あと29日。

 俺の1億円ゲームが、始まった。

第1章 第1話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


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