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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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16/54

第1章 第16話「写真の左端」

挿絵(By みてみん)


 DAY10。

 午前6時18分。

 俺は目覚ましが鳴る前に目を覚ました。

 昨夜届いたメッセージが、頭から離れなかった。

『明日、写真の左端を確認してください。』

 12年前の春。

 青風こども生活支援センターの交流会で撮影された写真。

 そこには、8歳の俺と、青いビーズの飾りをつけた女の子が写っていた。

 俺はずっと、その子ばかり見ていた。

 だが、公開写真は一部が切り抜かれていた。

 左端には、まだ誰かがいたのかもしれない。

 今日、写真原本の一部が公開される。

 俺は端末を握りしめた。

ユウキ:「……今度こそ、何か分かるといいんだけどな」

     ◇

 午前8時。

 食堂へ行くと、ヒナが俺を見つけて手を振った。

ヒナ:「ユウキくん! 今日、写真の日だよ!」

ユウキ:「分かってる。俺も早く起きた」

ヒナ:「私なんて、夢に写真が出てきた!」

レン:「俺も夢を見たぞ」

ヒナ:「どんな?」

レン:「STORE Xで朝食の写真を買ったら、現物より高かった」

ユウキ:「それ、夢じゃなくてこの島で起こりそうなのが嫌だな」

 レンは真剣に頷いた。

レン:「写真だけで1,500円。実物のトーストは650円」

ヒナ:「写真家としては複雑な気持ち!」

 朝食の席に、小さな笑いが広がった。

 だが、俺の気持ちは落ち着かなかった。

 昨夜のメッセージが正しければ、写真の左端に何かがある。

 ただし、あれはSTORE Xの有料情報ではない。

 差出人不明のメッセージだ。

 内容が真実とは限らない。

 期待しすぎるな。

 俺は自分にそう言い聞かせた。

     ◇

 午前9時。

 資料閲覧室に入ると、新しい資料が公開されていた。

『地域交流イベント・写真原本』

『公開画像:6件』

『個人情報保護処理済み』

 ヒナが端末を操作する。

ヒナ:「あった! これだよ!」

 画面に、昨日まで見ていた写真が表示された。

 ただし、今度は横幅が広い。

 8歳の俺。

 青い飾りをつけた女の子。

 その周囲に、ほかの子どもたち。

 そして、公開写真では切り取られていた左側。

 俺は息を止めた。

 そこには、もう1人の子どもが写っていた。

 短い髪の、小柄な子。

 俺たちの少し後ろに立っている。

 だが、顔にはぼかしが入っていた。

ユウキ:「……この子か?」

 ヒナが拡大する。

 顔は見えない。

 服装は、淡い色の上着。

 手には、小さな紙袋を持っていた。

ヒナ:「左端には、この子がいたんだね」

 俺は画面を見つめた。

 メッセージの送り主は、この子を見ろと言っていたのだろうか。

 それとも、まだ別の何かがあるのか。

     ◇

 午前9時42分。

 シオンとリナが合流した。

 俺たちは写真を細かく確認していく。

シオン:「まず、左端の子どもが誰なのかは分からないね」

リナ:「顔が隠されているし、氏名も載っていない」

ユウキ:「でも、俺と同じ写真に写ってる」

 シオンは頷いた。

シオン:「それは確か。ただ、メッセージがこの子を指しているとは、まだ断定できない」

 俺は写真をもう1度見た。

 左端の子ども。

 紙袋。

 そして、その少し後ろ。

 白いエプロンをつけた大人が立っていた。

 顔は写っていない。

 胸元に名札らしきものがある。

ユウキ:「……待って」

 俺は画面を指さした。

ユウキ:「この人、昨日の別の写真にも写ってなかったか?」

 ヒナがすぐに写真を切り替えた。

 昼食会場の写真。

 テーブルの近くに立つ、白いエプロンの人物。

 服装が似ている。

ヒナ:「同じ人かもしれない!」

リナ:「でも、職員の制服だった可能性もあるよ」

 俺は頷いた。

 同じ服装だからといって、同一人物とは限らない。

 ただ、名札が見える写真があれば、何か分かるかもしれない。

     ◇

 午前10時15分。

 ヒナが6枚の写真を並べ、名札が写っているものを探した。

 1枚目。

 見えない。

 2枚目。

 ぼやけている。

 3枚目。

 人物が横を向いている。

 4枚目。

 胸元がテーブルで隠れている。

 5枚目。

 俺たちは画面に顔を近づけた。

 白いエプロンの人物が、子どもたちに何かを配っている。

 名札の文字が、かろうじて読めた。

『早川』

 俺は息をのんだ。

ユウキ:「……早川?」

 シオンが資料を確認する。

シオン:「青風こども生活支援センターの施設長、早川恵子」

 俺は画面を見つめた。

 新聞記事に載っていた名前。

 12年前、施設の閉鎖に関わっていた人物。

 その人が、写真に写っていた。

 ただし、名札の姓が一致しただけだ。

 同姓の職員だった可能性もある。

リナ:「本人かどうかは、別の資料で確認したいね」

 俺は頷いた。

 だが、胸の奥で何かが動いた。

 早川。

 その名前を、俺は昔から知っていた気がする。

     ◇

 午前11時。

 俺たちは施設の公開資料を検索した。

『早川恵子』

 検索結果は7件。

 その中に、施設紹介の記事があった。

『施設長・早川恵子』

 掲載されている顔写真。

 短く整えた髪。

 穏やかな表情。

 俺はしばらく、その写真を見つめた。

ユウキ:「……この人、覚えてる」

 口から言葉がこぼれた。

 ヒナが俺を見る。

ヒナ:「本当?」

ユウキ:「うん。名前は忘れてたけど……施設で会ったことがある」

 頭の中に、ぼんやりとした記憶が浮かぶ。

 廊下。

 夕方の光。

 大人の女性が、俺の目線に合わせてしゃがんでいる。

 何かを話していた。

 だが、声は思い出せない。

 俺は額に手を当てた。

ユウキ:「……何を話したんだっけ」

 シオンは静かに言った。

シオン:「無理に思い出そうとしなくていい。今分かったことだけ記録しよう」

 俺は頷いた。

 記憶は、証拠とは違う。

 それでも、12年前の出来事が少しずつ戻ってきている気がした。

     ◇

 昼休み。

 俺は食堂の窓際に座っていた。

 そこへミオがやってきた。

ミオ:「ユウキ。隣、いい?」

ユウキ:「うん」

 ミオは俺の向かいに座った。

ミオ:「写真、見られた?」

ユウキ:「ああ。左端に、もう1人子どもがいた。それから、施設長の早川さんらしい人も写ってた」

ミオ:「そっか」

ユウキ:「俺、早川さんのこと、少し覚えてるみたいなんだ」

 ミオは静かに聞いていた。

ユウキ:「でも、何を話したかまでは思い出せない」

ミオ:「12年前のことだもんね」

 俺は頷いた。

 しばらくして、ミオが言った。

ミオ:「写真って、不思議だね」

ユウキ:「どうして?」

ミオ:「写っているものは残るのに、そのとき何を思っていたかまでは残らないから」

 俺は写真を思い出した。

 笑っている8歳の俺。

 隣の女の子。

 左端の子ども。

 後ろに立つ大人。

 あの日、俺たちは何を考えていたのだろう。

ユウキ:「……確かに」

 ミオは小さく微笑んだ。

ミオ:「でも、少しずつ思い出せるといいね」

ユウキ:「うん。ありがとう」

     ◇

 午後1時30分。

 資料閲覧室へ戻ると、ソウタが俺を呼んだ。

ソウタ:「神崎。写真について、1つ気になることがある」

ユウキ:「何?」

 ソウタは写真原本の詳細情報を開いた。

 そこには、撮影日時と管理番号が記されていた。

『撮影日:12年前・春の交流会』

『管理番号:A-014』

 俺は画面を見つめた。

ユウキ:「A-014……?」

ソウタ:「ほかの写真はA-009、A-011、A-012、A-015、A-018だ」

 つまり、公開されている6枚の間には、欠けている番号がある。

ユウキ:「ほかにも写真があるってことか」

ソウタ:「少なくとも、この番号だけ見れば、そう考えるのが自然だ。ただし、欠番が写真とは限らない」

 俺は頷いた。

 A-014。

 その前後に、何が写っていたのか。

 もし連続して撮影された写真なら、人物の位置が変わっている可能性がある。

 顔が見える写真も、あるかもしれない。

     ◇

 午後3時。

 ヒナが写真の撮影順を整理した。

 A-009。

 A-011。

 A-012。

 A-014。

 A-015。

 A-018。

 公開されている6枚。

 俺たちはそれぞれの写真を見比べた。

 すると、A-014とA-015で、同じ場所が写っていることに気づいた。

 庭の一角。

 俺と女の子が立っている。

 A-014では、俺たちは手をつないでいる。

 A-015では、俺が少し左を向いていた。

 その視線の先には、左端の子どもがいる。

ユウキ:「……俺、この子を見てる」

 ヒナが頷いた。

ヒナ:「本当だ」

 俺は写真を拡大した。

 左端の子どもは、紙袋を胸に抱えている。

 そして、俺のほうへ何かを差し出しているように見えた。

 だが、手元はぼかされていた。

 何を渡そうとしていたのか、分からない。

 俺は画面を見つめた。

 昨夜のメッセージ。

『12年前のあなたが本当に見ていたのは、その人だけではありません。』

 その言葉が、少しだけ意味を持ち始めた。

     ◇

 午後4時。

 俺たちは今日の調査結果をまとめた。

 ホワイトボードには、新しい項目が並んでいる。

『写真の左端に、顔を伏せられた子どもがいた』

『白いエプロンの人物は、施設長・早川恵子の可能性がある』

『A-015では、8歳のユウキが左端の子どもを見ている』

『写真には未公開の管理番号が存在する可能性がある』

 シオンが腕を組んだ。

シオン:「これで、写真に写っている人物の候補が増えたね」

リナ:「でも、メッセージの人物が誰かは、まだ分からない」

ユウキ:「うん」

 俺はホワイトボードを見つめた。

 左端の子ども。

 青い飾りの女の子。

 施設長の早川さん。

 誰が、父さんの秘密を知っているのか。

 そして、なぜその人物が、この島にいるのか。

 まだ答えは出ない。

     ◇

 午後5時。

 資料閲覧室の閉室直前。

 俺はもう1度、写真原本の一覧を開いた。

 未公開の管理番号。

 その中に、何か手がかりがあるかもしれない。

 検索欄に入力する。

『A-013』

 結果なし。

『A-016』

 結果なし。

 俺は少し考え、別の検索語を入れた。

『写真原本 未公開』

 検索結果は1件。

 鍵のマークがついていた。

『地域交流イベント・未公開写真』

『閲覧制限中』

 俺は苦笑した。

ユウキ:「……またかよ」

 だが、今回は少し違う。

 未公開写真が存在することは確認できた。

 そこに、左端の子どもの顔が写っているかもしれない。

 俺は資料番号をノートに書き込んだ。

     ◇

 夜。

 自室に戻った俺は、今日の記録を整理していた。

『写真原本の左端に、もう1人の子ども』

『A-015では、俺がその子を見ている』

『施設長・早川恵子らしき人物が写真に写っている』

『未公開写真が存在する』

 そして、最後に書き加える。

『左端の子どもは、俺に何かを渡そうとしていた可能性がある』

 ペンを置いた。

 そのとき、端末が震えた。

『STORE Xよりお知らせ』

 新しい情報商品が追加された。

『INFO-008:地域交流イベント・未公開写真について』

 価格は、60,000円。

ユウキ:「……写真まで売るのかよ」

 思わず声が出た。

 だが、商品説明を読むと、少し違った。

『本商品では、未公開写真1枚の閲覧権限を開放します』

 1枚。

 どの写真が開放されるかは、購入前には分からない。

 俺は購入画面を閉じた。

 今は、120,000円の父さんの証言記録も残っている。

 何でも買えばいいわけじゃない。

 そう考えた直後。

 端末に新しい通知が届いた。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別メッセージ。

 俺は開いた。

『今日、あなたは写真の左端を確認しました。』

 俺は息をのんだ。

 続けて、文章が表示される。

『そこに写っていた子どもは、あなたに何かを渡そうとしていました。』

 心臓が跳ねた。

 俺たちが写真から推測したことと一致している。

 だが、何を渡そうとしていたのかは分からない。

 次の文章が表示された。

『その子が持っていたものは、青い飾りではありません。』

 俺は写真を開いた。

 左端の子ども。

 紙袋。

 ぼかされた手元。

 青い飾りではない。

 では、何だった?

 最後の1行が表示された。

『あなたは、その日、約束を2つしました。』

 俺は動けなくなった。

 約束。

 2つ?

 青い飾りの女の子と、何か約束したのか。

 それとも、左端の子どもとも?

 俺は目を閉じた。

 12年前の春。

 庭。

 笑い声。

 青いビーズ。

 そして――。

 誰かの声が、頭の奥でかすかに響いた。

『忘れないでね』

 俺は目を開けた。

 今の声は、誰のものだった?

 DAY10。

 第1回投票まで、あと20日。

 俺はまだ、2つの約束を思い出せない。

 だが、その約束が、12年前の事件につながっている気がした。

第1章 第16話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


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