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僕らの一億円ゲーム〜この中に、主催者Xがいる〜  作者: こよみん
第1章

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13/54

第1章 第13話「90,000円の共同購入」

挿絵(By みてみん)


 DAY7。

 午後8時14分。

 俺は共有リビングへ向かいながら、端末に表示された文章を読み返していた。

『誰かを守るためだったとしても、許されるとは限りません。』

 昨夜から続く、差出人不明のメッセージ。

 父さんが動かした金には、理事会の事前承認を確認できる記録がなかった。

 それでも、送金先は分からない。

 何のために動かしたのかも分からない。

 俺は父さんを信じたい。

 だが、信じたいという気持ちだけで、記録に残った問題を消すことはできない。

 そのことを、メッセージの送り主は知っているようだった。

 共有リビングの扉を開けると、レンがソファでくつろいでいた。

レン:「お、ユウキ。どうした?」

ユウキ:「新しい情報商品が出た。みんなに相談したい」

レン:「いくら?」

ユウキ:「90,000円」

レン:「……俺、今すごく大事な用事を思い出した」

ユウキ:「何だよ」

レン:「節約」

 俺は笑いながら、全員に集合メッセージを送った。

     ◇

 午後8時30分。

 13人が共有リビングに集まった。

 モニターには、INFO-006の商品画面が表示されている。

『青風未来基金の承認記録について』

『価格:90,000円』

 アカリが目を丸くした。

アカリ:「90,000円!? 昨日より高くなってない?」

カイト:「情報って、こんなに金かかるのかよ」

ソウタ:「価格と情報量が比例する保証はない。そこが問題だ」

 俺は頷いた。

 INFO-005は70,000円だった。

 そこで分かったのは、1億円の資金移動が単一の取引ではなかったという事実だけ。

 重要な情報ではあったが、内訳までは分からなかった。

ユウキ:「今回も、90,000円払えば全部分かるわけじゃない。承認記録の確認結果を1件だけ開示するって書いてある」

シオン:「そこは全員で理解しておこう」

 シオンが端末を操作し、共同購入の説明を映した。

 各自がSTORE Xへ直接支払い、合計額が商品価格に達すると情報が開示される仕組みだ。

 参加者同士で残高を送ることはできない。

 だから、今回の共同購入は、前にやったような口約束の割り勘とは違う。

リナ:「13人で均等に負担すると、1人あたり約6,923円だね」

レン:「端数が気持ち悪いな」

ソウタ:「気持ちの問題ではない」

レン:「俺の気持ちにも承認をくれよ」

 小さな笑いが起きた。

 だが、全員が支払うことに同意しているわけではない。

 ハルカが手を上げた。

ハルカ:「私は、情報を調べることには賛成。でも、今月の生活費も考えたいな」

セナ:「無理して払う必要はないと思う」

ナナ:「……私も、少し考えたい」

 俺は頷いた。

ユウキ:「もちろん。これは俺の父さんの事件でもあるし、みんなに負担を押しつけたくない」

 すると、カイトが腕を組んだ。

カイト:「でも、その事件が俺たちを集めた理由と関係してるかもしれねえんだろ?」

ユウキ:「まだ確定してないけどな」

カイト:「だったら、俺にも調べる理由はある」

 リナも頷いた。

リナ:「少なくとも、ここまで何度も同じ事件の情報が出てきてる。無関係だと決めつける理由もないよ」

 俺は2人に頭を下げた。

     ◇

 シオンはホワイトボードに、購入条件を書き出した。

『目標額:90,000円』

『購入成立後、情報は13人全員へ共有』

『支払額は各自で決定』

『購入者の個別負担額は、本人が公表しない限り共有しない』

 俺は最後の項目を見た。

ユウキ:「誰がいくら払ったか、ほかの人には分からないのか?」

シオン:「共同購入画面には、集まった合計額だけが表示されている。個別の履歴は本人の端末に残るみたいだね」

ソウタ:「なら、金額から人物を推測するのは難しいな」

レイ:「誰かの支払いを監視するための仕組みじゃないんだろうね」

 レイはそう言って、画面を眺めた。

 俺は自分の残高を確認した。

 最初に支給された100,000円。

 INFO-001の共同購入で支払った5,000円。

 それに、これまでの食費。

 まだ余裕はある。

 だが、残り23日を考えれば、大きな出費は避けたい。

 それでも。

ユウキ:「俺は10,000円出す」

 最初に宣言した。

レン:「じゃあ俺も10,000円」

カイト:「俺も」

シオン:「僕も10,000円にする」

リナ:「私も10,000円」

ソウタ:「必要な情報だと判断する。10,000円出そう」

 6人で60,000円。

 ヒナが手を上げた。

ヒナ:「私も5,000円なら出せる!」

アカリ:「じゃあ私も5,000円!」

 合計70,000円。

 あと20,000円。

 レイが静かに口を開いた。

レイ:「僕も5,000円出すよ」

 合計75,000円。

 ミオが端末を見てから言った。

ミオ:「私も5,000円なら」

 合計80,000円。

 あと10,000円。

 ハルカ、ナナ、セナは、まだ支払うか決めていない。

 俺は3人を見た。

ユウキ:「無理しなくていいから」

 ハルカは少し考えてから、首を横に振った。

ハルカ:「私は今回は見送るね。生活費を残しておきたいから」

セナ:「私も。ごめんね」

ユウキ:「謝らないでくれ」

 ナナは端末を見つめていた。

 やがて、小さく手を上げる。

ナナ:「……私、5,000円出す」

ユウキ:「ナナ、大丈夫?」

ナナ:「うん。自分で決めたから」

 合計85,000円。

 あと5,000円。

 俺は残高を見た。

 追加で払えない額ではない。

 だが、俺が口を開く前に、レイが言った。

レイ:「残りは僕が出すよ」

 そう言って端末を操作する。

 数秒後。

『共同購入額:90,000円』

『購入成立』

 電子音が鳴った。

     ◇

 モニターに白い画面が表示された。

『INFO-006:青風未来基金の承認記録について』

 俺は思わず身を乗り出した。

 全員が黙る。

 やがて、文章が表示された。

『12年前、問題となった資金移動のうち、少なくとも1件について、必要な理事会の事前承認は得られていませんでした。』

 俺は息をのんだ。

 昨日の議事録では、事前承認を確認できないと書かれていた。

 だが、今回の情報は違う。

 必要な承認は、得られていなかった。

 そこまで確認された情報だ。

ソウタ:「……少なくとも1件、か」

リナ:「ほかの取引については、これだけじゃ分からないね」

シオン:「承認されなかった送金があったことは確定した。でも、誰が実行した取引なのかは書かれていない」

 俺は画面を見つめた。

 父さんが関わった資金移動。

 その中に、承認されていないものがあったのだろうか。

 だが、今回の文章だけでは、父さんが実行した取引だと断定できない。

 それでも、胸が重くなる。

ユウキ:「……これで、90,000円か」

レン:「情報屋、商売うますぎだろ」

 レンの声には、いつもの明るさがなかった。

 俺はゆっくり息を吐いた。

 期待していたのは、送金先につながる手がかりだった。

 だが、手に入ったのは、手続きに問題があったという確かな事実。

 父さんを信じたい俺にとって、簡単に受け止められる内容ではなかった。

     ◇

 情報共有が終わると、シオンが全員に向き直った。

シオン:「今日の情報を、どう扱うか決めておきたい」

カイト:「どう扱うって?」

シオン:「これを根拠に、誰かをXだと決めつけないこと。承認されなかった送金と、主催者Xの正体は、まだ直接つながっていない」

 ソウタが頷く。

ソウタ:「そのとおり。今の段階で分かっているのは、12年前の資金移動に問題があったということだけだ」

 俺は少し安心した。

 ここにいる誰かが、父さんの事件について知っている可能性はある。

 だが、それだけでXだとは言えない。

 この島では、疑いが簡単に広がる。

 だからこそ、分かったことと、まだ分からないことを分けておかなければならない。

 そのとき、ナナが小さく口を開いた。

ナナ:「……ユウキくん」

ユウキ:「何?」

ナナ:「今日の情報、つらかったよね」

 俺は少し驚いた。

ユウキ:「……うん。でも、知れてよかったと思う」

 ナナは小さく頷いた。

ナナ:「そっか」

 彼女は何か言いかけた。

 だが、結局そのまま口を閉じた。

     ◇

 午後10時。

 俺は1人で北側の展望台へ向かった。

 夜の海は暗く、遠くに小さな灯りが見えるだけだった。

 風が強い。

 俺は手すりに寄りかかり、端末を開いた。

『必要な理事会の事前承認は得られていませんでした。』

 何度読んでも、意味は変わらない。

 父さんは、何をしたのだろう。

 金を動かした。

 そのことは認めていた。

 でも、移動先は明らかにしなかった。

 そして、少なくとも1件の送金には、必要な承認がなかった。

 俺は空を見上げた。

ユウキ:「……父さん」

 12年前、俺は父さんを責めた。

 なぜ何も話してくれないのか。

 なぜ、みんなに疑われるようなことをしたのか。

 父さんは、答えてくれなかった。

 いや。

 答えられなかったのかもしれない。

 だが、だからといって、何をしてもよかったわけじゃない。

 俺は今日、そのことを初めて自分の言葉で考えられた気がした。

     ◇

 展望台から戻る途中、ミオとすれ違った。

ミオ:「ユウキ。こんな時間に散歩?」

ユウキ:「ちょっと考え事」

ミオ:「そっか」

 彼女は俺の隣に並んだ。

 しばらく、2人で歩く。

ユウキ:「今日の情報、どう思った?」

 ミオは少し考えた。

ミオ:「必要な承認がなかったことは、確かなんだと思う」

ユウキ:「うん」

ミオ:「でも、それだけで送金の目的や、最終的に誰が金を使ったのかまでは分からないよね」

 俺は頷いた。

ユウキ:「そうなんだ。そこが、まだ分からない」

 ミオは静かに俺を見た。

ミオ:「ユウキは、これからも調べる?」

ユウキ:「もちろん」

 即答だった。

 自分でも驚いた。

 昨日までの俺なら、嫌な事実を知るのが怖くて、少し迷っていたかもしれない。

 でも、今は違う。

ユウキ:「父さんが何をしたのか、ちゃんと知りたい。たとえ、俺が望んでた答えじゃなくても」

 ミオは小さく微笑んだ。

ミオ:「……うん」

 その表情が、なぜか少しだけ寂しそうに見えた。

 だが、俺が理由を尋ねる前に、彼女は前を向いた。

     ◇

 自室へ戻ったのは、午後11時を過ぎた頃だった。

 俺は今日の記録をノートにまとめた。

『INFO-006:90,000円』

『少なくとも1件の資金移動について、必要な理事会の事前承認なし』

『送金の実行者、送金先、金額は未判明』

『共同購入により13人全員へ共有』

 最後に、今日の気持ちを書き加える。

『父さんを信じたい。でも、事実から目を背けない』

 ペンを置いた。

 そのとき、端末が震えた。

『資料閲覧室よりお知らせ』

 俺は画面を開く。

『DAY8より、追加資料を公開します』

『公開対象:青風未来基金・関係者証言記録』

 俺は息をのんだ。

 証言記録。

 12年前、事件に関わった人たちが何を話したのか。

 そこに、父さんの言葉も残っているかもしれない。

 さらに、もう1行。

『一部の証言には、閲覧制限があります』

 俺は苦笑した。

ユウキ:「……また制限かよ」

 だが、今度は少し違う。

 俺たちは、13人で情報を買った。

 それぞれが、自分の意思で金を出した。

 全員が同じ金額を払ったわけじゃない。

 それでも、手に入れた情報は全員で共有した。

 この島では、誰かを疑わなければならない。

 だが、協力することもできる。

 俺は端末を閉じ、明日の予定を書いた。

『DAY8:関係者証言記録を調べる』

 その直後。

 画面がもう1度点灯した。

『神崎ユウキ様へ』

 差出人不明の個別通知。

 俺は開いた。

『明日、証言記録を読む前に確認してください。』

 続けて、文章が表示される。

『あなたのお父さんが最後まで明かさなかったのは、金額ではありません。』

 俺は息を止めた。

 金額ではない。

 では、何を隠していた?

 次の文章が表示された。

『その送金によって、守られた人たちがいます。』

 俺は端末を握りしめた。

 守られた人たち。

 父さんは、誰かを守るために金を動かしたのか。

 だが、それが本当だとしても、承認を得なかった理由にはならない。

 そして、なぜその人たちのことを、12年間も話さなかった?

 最後の1行が表示された。

『ただし、守られなかった人もいます。』

 俺は動けなくなった。

 誰かを守るためだった。

 でも、守られなかった人もいる。

 その言葉が、胸の奥に重く沈んだ。

 DAY7。

 第1回投票まで、あと23日。

 父さんの事件は、単なる金の問題ではないのかもしれない。

 そこには、12年前の誰かの人生が関わっている。

 そして俺は、まだその名前すら知らなかった。

第1章 第13話 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この作品では、物語の中に少しずつ「主催者X」につながるヒントを散りばめています。


ぜひ皆さんの推理を聞かせてください!


**「Xはこの人だと思う!」**


**「このセリフが怪しい!」**


**「この行動、もしかして伏線?」**


**「この人物は逆にXではなさそう」**


など、どんな予想・考察でも大歓迎です。


もちろん、物語そのものについての感想や「このキャラが好き!」といったコメントも、とても嬉しいです。


皆さんが現時点で**誰をXだと予想しているのか**、ぜひ感想欄で教えてください。


そして「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、評価やレビューで応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


果たして――


**13人の中に潜む主催者Xは誰なのか?**


あなたの推理、お待ちしています!


毎日19時10分と20時10分更新予定です!!


ブックマークお願いします♪


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