だい5わ:わたしのまほうが「すごい」?……そんなの、わたしがいちばん知ってるし
自分の塔に引きこもって数日。私はある重大な問題にぶつかっていた。
「お城のご飯、おいしいけど飽きた。もっと、こうガツンとくる甘いものが食べたい」前の世界でストレスが溜まったとき、いつも食べていたあのご褒美スイーツ。でもこの世界には、そんなオシャレなものはない。
「ないなら、作ればいいだけだよね」私はまた空気を読まずに、お城の広い中庭に飛び出した。
そこでは庭師の人たちが「今年は雨が少なくて、名産の果物が全滅だ」って泣きそうになっていた。
「ちょっとそこ、邪魔。魔法使うからどいて」庭師さんたちの困惑をスルーして、私は地面に手を当てる。
(私が食べたいのは、最高に甘くてジューシーな果物がのったパフェ! そのための材料、今すぐここで育って!)ドクン、と私のわがままな魔力が大地に流れ込む。
すると、枯れかけていた木々がいっせいに輝き始めて、見たこともないような大きな果実がボコボコ実りだした。それだけじゃない。地面からは魔法の力で冷やされた、アイスクリームみたいな冷たい霧まで溢れ出している。
「な、なんだこれは! 伝説の豊穣魔法か!? 国が救われたぞ!」庭師も、通りかかった貴族も、みんな膝をついて拝みだした。でも、私の目的はただ一つ。
「よし、いい感じのイチゴ。アルヴィスさん、これ持って帰るから手伝って」後ろで口をあんぐり開けていたアルヴィスを引きずって、私は自分の塔に戻った。周りからは「聖女様!」「救世主!」なんて声が聞こえるけど、私には関係ない。
「ラルラリア、君は本当に、自分の欲求に正直なんだな。だが、おかげで多くの人が救われた。ありがとう」「お礼なんていりません。私が食べたかっただけだし」塔に帰って、二人で特大のパフェを作って食べた。アルヴィスは「甘すぎる」って困り顔をしていたけど、一口食べるたびに、なんだか嬉しそうに笑う。
「ラルラリア。君の魔法は、君が思うよりずっと、みんなを幸せにしているんだぞ」「ふん。そんなの、私が一番知ってるし」前の世界では「自分勝手」って怒られた私の力が、ここでは「幸せ」の種になる。もしかして私、本当にこの世界に来てよかったのかも。




