第百六十五話「色恋の芽吹きと進んだ関係性」
「おねえちゃんは応援してくれる?」
いろちゃんは不安そうな顔で、私に言ってきた。
気になるという言葉の裏には、単純な好奇心だけじゃないはず。
彩葉の恋の訪れを感じている和栞は彩葉の身体を抱き寄せるように引く。
応援してくれる? ……だって。あの時のわたしと一緒なのかも。
和栞は美鈴に初めて相談した日の事を思い出した――伊織とデートした後、逃げるように迎えの車に乗り込んだあの日のこと。
「わたしが一番の味方でいられるように、何だって相談に乗るからね。遠慮しなくてもいいんだよ?」
「本当に?」
彩葉の問いかけに、和栞は頼もしく胸を叩いた。
「少しはお姉ちゃんにお姉ちゃんらしいことをさせてください」
普段は一緒に居てあげられないからこそ、いろちゃんと会える時には普通の姉妹より頼りになる姉でいたい。喧嘩は一切なくて、年が近いからこそ頼りにしてもらえる時だってあるのだから。
◇◆◇◆
「小さな花束でも良くて、可愛いお花を頂きたいんです……」
和栞と彩葉は花屋の店先に着くと、彩葉が店員にイメージを伝える。
『じゃあ、飾りやすく花かごなんてどうかしら? ほら、あそこにあるバスケットに入っているタイプのものですわ』
ふたりは店主の女性が指し示すものに視線を移す。
次の瞬間には笑顔で顔を見合わせた。
「……素敵ですっ」
彩葉は美鈴にプレゼントを渡したときの顔を思い浮かべ、店主の女性の提案を飲む。
「うん、あれにしよっかっ」
三人で彩りの相談を始めたのでした。
◇◆◇◆
『ガチャ』
玄関の方から音がした。
あらかじめ、花をプレゼントするというサプライズに向けて走り出したことを知っていたので、美鈴さんと会話を埋めながら、待つこと三十分程度――和栞さんと彩葉ちゃんが帰ってきた。
「楽しくお話できた?」
美鈴さんが柔らかに問いかける。和栞さんの顔を見ていると、一瞬視線が逸れたのでこちらもドキリとした。嘘を隠すのはとても 上手な人には思えないから――
「う、うんっ。元気そうで安心した」
「……?」
美鈴は我が子の嘘を見抜くことが出来ずに、不思議そうな顔をするばかり。
「ママぁ~。お腹空いたよぉ~」
彩葉ちゃんは間髪入れずに話題を逸らす。
「そうねっ。ちょっと早いけど、お誕生日ランチにしましょっ」
「私、手伝うぅ~」
「彩葉ちゃん、ありがとう」
「おかあさん。わたしも……」
和栞はふたりに混ざって配膳の準備をしようとすると、美鈴に制止される。
「何言ってるのっ! 和栞ちゃんは伊織くんと楽しみに待ってて?」
「う、うん。……って、ええっ??」
和栞は美鈴が伊織の事を下の名前で呼んだことを聞き逃しはしなかった。
「あなたたちが外出している間に、私は伊織くんと仲良くなったんだからっ」
人差し指を立てて、和栞に自慢した美鈴の姿を見て、伊織は得も言われぬむず痒い気持ちがしたのでした。
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