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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第2章 冒険の準備は痛みを伴い

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第3話・図書殿でぶつかる~彼の知ってる正義の下に~

※本話には、登場人物に対する強い拒絶や暴言のシーンが含まれます。


ご不安を感じる方は、ご注意の上お読みください。






第2章 冒険の準備は痛みを伴い



      第3話・図書殿でぶつかる~彼の知ってる正義の下に~



 シプラ=ペンティスは十七歳の神官呪師しんかんじゅし見習いだ。



 神殿奥にある図書殿を訪れたシプラは、考え事をしながら奥へと進む。



 彼は、長く皇宮呪師長こうぐうじゅしちょうを務めていたキプラ=ペンティスの曾孫で、本来であれば皇宮呪師になった方がより才能を発揮できると入学試験の適性検査では言われた。



 もちろん、シプラ自身もそうだろうな……と思ったのは、ペンティス家が()()()()()()()であるから。



 それでも、シプラが神官呪師を目指したのには当然理由があった。



 幼いころから尊敬し、憧れていた曾祖父、キプラが、入学許可を与えられる十三歳になる少し前からおかしくなってしまったから。



 いや、表面的には変わっていないように見えた。


 けれど、それまでなら絶対にしなかったであろう采配を繰り返し、かと言って自分が前線に出る事は一切なくなり、家に帰ってくることもほぼなくなってしまったのだ。



 はじめは、何が起きたのか全く分からなくて、家族どころか一族全員が混乱状態に陥った。


 そのうち、父や兄姉、叔伯父、叔伯母、いとこなど、すべての皇宮呪師として勤めていた家族や親せきが、少しずつ、キプラの周辺から遠ざけられていった。



 あからさまな排除ではない。


 ただ単に、適材適所に人員を配置しただけ。


 だから表立って不満をぶつけることもできず……けれど、特に討伐隊に所属していた家族や親類縁者に対しても多少無茶な任務への投入が続き、彼らもどんどん疲弊して行って、一族全体が暗い影に包まれてしまったようになった。



 呪師学校入学前であったシプラは、五年前、皇宮で起きた事故の前後に会ったのが最後。


 直前と、直後で人が変わったように感じて、一人戦慄した。



 その時はまだ、両親も、兄弟姉妹も、誰もシプラの感じたことを理解してくれなかったけれど……


 一年も経たないうちに、彼らも曾祖父が変わってしまったことを理解し、シプラが感じた違和感を認めた。



 そして、もしかしたらと思いついたのが……皇宮で起こった事故で曾祖父は何らかの呪いか何かにかけられてしまったのではないか? という疑惑。



 だって、おかしいのだ。



 皇宮で起きた事故で、皇太子ご夫妻までもが亡くなって、生き残ったのはほんの数名で、そのうち、キプラ以外は全員退職している。



 事故に巻き込まれて、今もまだ皇宮に居るのは、ジニア・プローフ・ジャネット皇女……愛称をジャンヌ様という皇孫皇女殿下と、その弟君であるジョン皇子……カルロス・グラジオス・ジョーン皇孫皇子殿下……そして、お二人の幼馴染で今はジャンヌ様の専属護衛騎士団の団長をしておられるファン卿ディアス爵子……子供だった方々だけ。



 更に、皇子殿下が直後から病に臥せり、最近までずっと闘病生活を続けておられた、というのも……不自然だ。



 皇子殿下も呪いにかけられているのではないか? ひいお爺様は、皇子殿下と共に呪いをかけられてしまったのでは?



 シプラはそう考え、解呪や浄化を学ぶために神官呪師を目指した。



 ところが、昨年末。


 とある見習い呪師によって魔法で攻撃された曾祖父は、一旦主神殿の医務殿に……それもなぜか隔離棟に搬送され、年明けに皇宮から復帰を勧告されたのにそれを辞退し、一神官として余生を過ごすと表明した……らしい。



 シプラはキプラに会うことができていないので……面会の申請は出してある……先に会った家族からの手紙でそれらを知った。



(……ひいお爺様が、本当にご自分の意思でそうなさる、と仰るなら……反対する理由はないけれど……)



 けれど、では曾祖父の呪いは解けて、元の曾祖父に戻ってくれたのか?


 それとも、何かに……誰かに無理やり、退任させられ、家族からも引き離すために神殿に押し込んだのではないか?



 そんな疑問もあって、今後の進路に悩んでいた。



(……一旦、神官呪師を目指してしまった以上、今から皇宮呪師に転身しても……それに、俺が神殿から離れたら、ひいお爺様の様子をつぶさに確認できる者が神殿からいなくなってしまう……)



 今は見習いでしかないが、神官位を取得し、呪師学校を卒業すればもう少し自由に神殿内を動き回ることもできる。



 誰かに無理やり神殿に押し込められたのだとしたら、誰か一人くらい、いつでも曾祖父と連絡を取り合って、助けになれる位置にいた方がいい。



 そうなると、今後はさらに上位となる神官呪師を目指すための専門分野を選択するか……中級までで呪師としての学習は終了し、神官として上位を目指すかのどちらか。



 正直、これまで血のにじむような努力を重ねて、向いてもいない神官呪師の修行に励んできたのだから、ここで終えてしまうのも挫折したようで嫌だ。



 かといって、明確に専攻したい分野が分からなくなってしまっている。



「……どうしたものか……」



 呟きながら足を止め、天を仰ぐ。



「…………は?」



 その視界に、書棚の上の方で座り込んで本を読んでいる子供が入ってきて、思わず絶句した。



 棚に、完全に乗り上げ、膝を抱えるような体勢で、何かの本を一心に読み込んでいる子供は、本来ならこんなところに居るはずがない存在。



 だって、呪師学校の入学年齢は十三歳以上。


 それより幼い……せいぜい三歳ほどの体格で、一応は五歳ほどとされている子供が、なぜこんなところに居るのか?



 それ以前の問題で……



(……よく、俺の前に姿を現せたな……!)



 一瞬にして、シプラの中で怒りが沸き上がる。



 曾祖父であるキプラを、魔法で攻撃したと言われているのが、この子ども……呪師学校に居てはならない異物。



「そこで何をしている!!」


「ぇ? ……ぁっ……」



 いきなり大きな声で怒鳴られて、びっくりした子供……アインがギョッとして顔を上げ、下から見上げるシプラに気づく。



「……ご、ごめ……っ!?」


「っ!? バカっ!! 急に……っ!!」



 慌てて立ち上がったアインは、バランスを崩して棚の上でふらつく。


 焦ったシプラが声を上げるが、体勢を立て直しきれなかったアインが落下する方が早かった。



(……あっ……!?)


「おいっ!!」



 声を上げることもできずに落ちてきたアインを、咄嗟に抱き止める。


 ばさりと、音を立ててアインが読んでいた本が床に落ちた。



「……ぁ……?」


「……何をしていた……?」



 抱き止められて、目をパチパチさせるアインを渋面で見下ろし、硬質な声が誰何する。



「……ぇ……っと……本、を……」


「お前はバカか? なぜはしごもないのに棚の上にいた? 魔法でも使ったのか? ひいお爺様を攻撃したように?」


「……ぇ……?」



 アインの、遠慮がちな……聞き方次第によっては後ろめたそうな答えに、シプラはますます渋面になり、言いながらアインを床に下ろす。



 戸惑って首を傾げるアインと一緒に落ちてきた本をシプラは拾い上げた。



「……薬草・毒草図鑑……なんだ? 今度は誰かに毒でも盛る気か?」


「えっ!? ち、ちがいま……」



 低い声で問われて驚く。


 そんなことは考えたこともなかった。


 けれど、シプラはアインの返答など聞いていない。



「キプラ=ペンティスは、俺のひいお爺様だ……」


「……っ!?」



 言い訳を断ち切るように睨まれて、アインは息を飲む。



「……お前に殺されかけ、引退に追い込まれ、神殿に閉じ込められることになった、キプラ=ペンティスの曾孫だ……よく、俺の前にそののんきな顔を晒せたもんだな? 人殺しが……」


「……………っ」



 すうっと、シプラの紅紫の瞳から温度が消えて行って、氷のような鋭い殺気を増し、アインを睨む。


 何も言えなくなって、アインはただ、息を飲んでシプラを見つめた。



「なぜ、お前はここに居る? 罪びとが、のんきに読書? お前の居場所なんて、どこにもないんだよ……」


「……っ……!!??」



 明確な拒絶と、否定の言葉。


 それは、シプラが思っているほど軽いものではなかった。


 けれども、それをアインは口には出せない。



「……二度と俺の前に姿を現すな……俺はお前を許さない……」


「……ご……め……」


「そんなもの、聞きたくない!! お前の自己満足になど、付き合うものかっ!!」


「……っ!!??」



 思わず謝罪を口に仕掛けたアインを遮って、シプラは乱暴に拾い上げた本を棚に戻す。


 戻しながら怒鳴りつけ、びくりと震えたアインから顔を背けてそのまま図書殿を後にする。



「……………………」



 ひとり、その場に取り残されたアインは、真っ青になってその場に蹲る。



 分かっていた。


 自分がいていい場所など、どこにもない、と……



 だって、神さまが、アインを『居ない者(アイン)』と告げたのだから。



「……ごめ……なさ……っ」



 誰に向けてのものとも分からない、謝罪の言葉が唇から零れ落ちる。



 留まることを知らない涙が、ジワリと制服の袖を濡らしていく。



 そうして、授業が終わって、急いで迎えに来たペルフィーがアインを見つけた時には……



(何があったんだよ……っ!!)



 アインは保護された当初、呪師寮に連れて来られた当初と同じ、怯えて、人の顔色を窺っていた時のアインに戻っていた。


第2章第3話をお読みいただきありがとうございます。


図書殿で身動きが取れなくなっていたアインの前に現れたのは、キプラの曾孫であるシプラでした。


曾祖父を追い込んだアインに対し、シプラは容赦のない拒絶と怒りの言葉を投げつけます。


真実を知らないシプラの言葉によって、自分の居場所のなさを突きつけられ、保護された当初のように泣き崩れてしまったアイン。


過酷な野営訓練を前に、彼はどうなってしまうのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


※本編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


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