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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第7章 重い事実とあたたかな

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第4話・その子はひたすら真剣で~牽制するのは大人の役目~

第7章 重い事実とあたたかな



     第4話・その子はひたすら真剣で~牽制するのは大人の役目~



 一体全体、何がどうなっているのか、誰か説明して欲しい……



 切実にそう思いながらも遠い目をするペルフィーの前では、なぜか皇宮呪師こうぐうじゅしの名門、ペンティス家の出身である神官呪師しんかんじゅし見習いのシプラが、甲斐甲斐しくアインの世話を焼いていた。



「西方に多く分布している植物に関してはこの辺りだな……あっちの方は野生動物もこの辺りより凶暴で、危険な植物も多いと聞いている……あとは、魔物だけでなく、亜魔族もよく出現する地域らしいから、防衛拠点となっている都市などには皇宮呪師だけでなく、神官呪師も多く配属されているらしい……」


「……そうなんですね……あれ? でも、すごく昔は、豊かな土地だったって、ここに書いてあります……」


「ああ……確か、二万年位前だったか? 隣国によって不当に貶められた大公一家がおられて、女神様のお怒りに触れた結果、天変地異に見舞われたらしい……それを逆恨みして魔族と手を組む、何て愚かな真似をした王子がいたらしくて、そのせいで我が国の西方が荒らされたんだ……」


「え!? そうなんですか!?」


「少なくとも、歴史書にはそう記されていたな……当時は女神の巫女様の他に、聖女様も顕現されていて、お二人の祈りで辛うじて人が住める状態まで回復したんだが、魔族の巣窟になってしまった離島やら、凶悪な魔物が住み着いてしまった森、危険な動植物が繁殖した荒野なんかも残っていて、いまでも過酷な地域だ……」


「……そう、なんですね……」



 積み上げられた本の山と、次々本を持ってきながら話をするシプラと、どんどん本を読みながら疑問を差し挟むアインの様子を、若干の疎外感と、それ以上の、何とも言えない安堵を感じながら見守るペルフィーは、この二人が、いつ、どこで知り合い、どうしてこんなに親しくしているのか分からない。



 分からないが……



(シプラは本気でアインと仲が良さそうだな……俺一人では世話をしきれなくなっていたし、正直ありがたいが……大丈夫なのか?)



 そうも思うのは、この二人の様子に絶句しているのはペルフィーだけではないから。



 今も、神官呪師のみならず、皇宮呪師も多く輩出している名門、インパチェンス家の少年と、その友人であろう少年少女らが大口を開けて絶句している。



 その中でも、特にインパチェンス家の少年の目が、何というか……



(……危険、そうだな……)



 明らかに、アインを睨んでいる。



 シプラとのやり取りと、もう間もなくに迫っている長期の外出(ペルフィーはそうとだけ聞いているが、()()()()()ではないのは二人の様子から明らかだ)の準備に一生懸命なアインは気づいていない。



 ただ、シプラの方はどうやら敢えて見せつけている様子で、チラリと一瞬だけペルフィーに視線で合図を送ってきた。



(……ま、俺も、インパチェンスのガキ(あいつ)がアインを悪く言っているところには何度も出くわしているし、わざわざ()()()()来たこともあったから、何かやらかす可能性は分かっているが……)



 今、一番話題となっているペンティス家のシプラ(元・皇宮呪師長の身内)が、アインと仲良くしている様子を見せつける、というのもなかなか思い切ったものだ。



「……聖女さまは、女神さまの巫女さまとは、違うんですね……」



 読んでいた本の記述と、先ほどのシプラの解説で気づいたアインがぽつりと呟く。



「らしいな……よくは分からないけれど、聖女様は奇跡を起こせる女性らしい……豊穣をもたらしたり、人々に祝福を与えて下さったり……女神様の代行者だ、とする記述やなんかもある……巫女様は直接女神様に祝福されて、様々な偉業を成した方々だ」


「……そうなんですね……」



 持ってきた本の中から、パラパラと該当箇所を開いて示すシプラに、すごい方々なんですね……と心底感心したようにアインは言うが……



((……その、女神様の巫女様が、我が国の皇孫皇女殿下なんだよな……))



 よくは知らないが、ペルフィーはアインやクロードが皇女殿下と関わっていると聞いているし、シプラの方は直接的にその『やらかし』を曾祖父から聞いている。



 二人揃って少し遠い目になってしまったのは……まあ、致し方のないことだろう。



 アインとシプラのやり取りに、気づけばインパチェンス家の少年たちはどこか別の場所へと移動したらしく、いつの間にかいなくなっている。



 ただ、彼がこの先、何かをやらかす可能性を、ペルフィーもシプラも強く感じ取っていた。



 けれど、今は。



((……今は、できるだけ、アインに不安を感じさせないようにしてやりたい……))



 先ほどの目配せでお互いに同じことを考えていると察して、ペルフィーもシプラもその件には一切触れず、アインが求めるままに西方の資料を集めて来ては解説する。



 アイン自身も、本を読むのがすごく早くて、けれどちゃんと丁寧に、指で文字を追っていた。



 しかも、一度読んだ内容はすべて頭に入っているようで、同じことを聞いてくることもない。



 天才、という言葉が脳裏を過るが、違うとすぐに頭を振る。



((……そうしなければ()()()()()と、刷り込まれたんだ……))



 この二人が共通して知っている大きな秘密が一つだけあった。



 それが、元・神官呪師学校校長のヴィロバ=エルマーニによるアインに対する洗脳と虐待。



 その結果が、追い詰められるような詰め込み授業への極度の依存であり、それによる居場所への執着だった。



 それを、事後のケアの必要性があって、ペルフィーはヴィロバの退任が知らされた時に伝えられていたし、シプラも、曾祖父であるキプラからすべてを聞いたと当直の神官長に報告した後の事情聴取で聞かされた。



 聞いた瞬間の、二人の反応が同じであったことを知っているのは、その場に居合わせ、伝えた神官長だけだったが、お互いに感じたことは同じだろうとの無言の信頼もあって……



 就学年齢に達していない、と言うことは、文字通り幼い、と言うこと。



 それなのに、重いものを背負わされ、急き立てられているアインが、ほんの少しだけでも、ホッと息がつけるように。



 ここに居ることが負担になって、それでも、どこにも行けないからと、必死にしがみついて、我慢し続けなくてもいいように。



 二人ともが、それぞれに、できうる限りの力になりたいと、そう思っているから……



(……女神様! 同志をお与えくださり、感謝します……!)


(……ペルフィー様は、知らないことが多いから、それはそれで胃の痛い思いをされているだろうけれど、俺は俺で死にそうだ……)



 心からの感謝の祈りを捧げるペルフィーと、知りすぎてしまったがゆえに死にそうになっているシプラと。



 お互いが、お互いを同志と認めつつも若干の温度差もあるのも……まあ、致し方のないことと言えた。


第7章第4話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、アインとシプラが西方の歴史について一緒に学ぶお話です。


すっかり打ち解けた二人の姿に驚きと不満を隠せない他の生徒たちですが、ペルフィーとシプラは彼らの不穏な視線に気づき、しっかりと牽制します。


少しでも穏やかな時間を過ごさせようと、言葉を交わさずとも連携して守ろうとする頼もしい二人。


アインの抱える背景を共有する「同志」として、けれども決定的な差がそれぞれの思考にも表れていて?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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※本編シリーズはこちら!

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