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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第7章 重い事実とあたたかな

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第3話・急転直下の変化に狼狽え~たった一歩の歩み寄り~

第7章 重い事実とあたたかな



     第3話・急転直下の変化に狼狽え~たった一歩の歩み寄り~



 とてつもない恐怖に襲われた野営訓練から、呪師じゅし寮に戻ってきたアインは心底混乱していた。



「すまない! 何も知らないくせに、酷いことを言った!!」



 疲労困憊のアインが、クロードに抱きかかえられて呪師寮の部屋に戻ってすぐ。


 同室の兄弟子であるペルフィーが授業から戻ってくるよりも早くに押しかけて来たのは、先日図書殿で会った皇宮呪師長こうぐうじゅしちょうの曾孫であるという青年。



「「………………」」



 まだクロードが帰る前で、部屋にはアインと、押しかけて来たシプラと、三人だけ。



 部屋についてすぐ、まるで待ち受けていたかのようにやってきて、いきなり床に蹲るようにして言い出したシプラに思考が停止してしまう。



 本当は、声を大にして謝罪したいシプラではあったが、大きな声では言えない話をしなければいけないので、潜めがち。


 それでも、真剣に言っていることは分かって……



(……え……? なにが? なんで???)



 なぜ、シプラがこんなことを言い出したのか、こんな風に床に蹲っているのか全く分からなくて混乱する。



「……ひいお爺様に……お会いして、五年前からの一連のことを、伺ったんだ……」


「「……っ!?」」



 声を、できうる限り潜めて告げたシプラの言葉に絶句する。



 素早くクロードは部屋の外を確認し、近くに人がいないかを確かめた。



 幸い、今の時間帯は殆どの生徒が授業中で、近隣の部屋も空室状態。


 不用意に聞き耳を立てている者もいないようだったが、それでも声を極力潜めたシプラの判断を評価する。



「……お前が、どれだけ大変な目にあっていたのかも、全部、伺った……ひいお爺様を、助けてくれたことも……」


「っ。ぼ、僕は……っ」



 違う。悪いのは自分だ。


 自分が、インスが酷い目にあわされていたことを目の当たりにして、勝手な判断で行動した。


 誰にも、何も知らせることもなく、見習いでしかないのに、勝手に力を使ったから……


 だから皇孫皇女の専属護衛騎士団長であるファン卿ディアスにも叱られて、神剣にも身体をズタズタにされた。



「……ここ数日、寮にいなかった理由も、先生から伺った……ごめん……俺、何も知らなくて……お前が、一生懸命、自分にできることを探して、勉強していただけだったのに……勝手な思い込みで酷いことを言った……」


「……………っ」



 続けられた言葉に、ずきりと胸の奥が痛む。



 シプラの言った通りになってしまった、野営訓練の結果が……土気色の顔をして、苦しげに痙攣しているインスの姿が、脳裏に甦る。



 シリウムやクロード、ステールは自分のせいではないと、言ってくれたけれども……でも、思うのだ。


 自分が、余計なことを言わなければ、やっぱり、こんなことは起こらなかったのではないか? と。



「謝って済むとは思っていない……許して欲しいとも言わない……ただ、知っていてくれ。俺は、お前を否定しない」


「……っ……!?」



 言われた言葉に目を見張る。



「お前がいたから、ひいお爺様は助かった……お前のおかげで、俺たちは、ひいお爺様を取り戻すことができた……ありがとう……」


「……ぁ……」



 その、心からの感謝を、真っ直ぐに向けられた好意を、感じ取って、アインの唇が震えた。



 こんなことを、誰かに言われるのは初めてだ。



 確かに、気にかけてくれる人、よくしてくれる人、愛してくれるヒトは……いるけれど。


 彼らはみんな、役にも立たない自分を、守ってくれているひとたちだ。



「これからは、俺は、俺自身の意思で、お前の助けになる。何ができるかは分からないけれど、不当な悪意や、謂れのない糾弾や、困った時の手助けくらいなら、きっとできるから……」



 これは俺がやりたくて勝手にすることだ。



 そう言って、漸く顔を上げたシプラは、憑き物が落ちたかのような、すっきりとした顔でニッと笑った。



「俺は、()()を、ひいお爺様に聞かされた……だから、他の誰にも、相談できないことでも、聞いてやれる」


「「……っ……!?」」



 シプラのその言葉に、クロードもハッと息を飲む。



 そうだ、国家機密まみれで下手に誰にも、何も言えないアインが、何かを相談したくなっても、これまではすべてを知っているのは最上層部の……神官長クラスの神官たちだけ。



 同室の兄弟子として、アインが呪師寮に引き取られてからずっと、世話をしてくれていたペルフィーにさえ、何も言えなかった。



 それが……



(……この青年が、本当に、全部を聞いたのなら、アインの話し相手になれる……)



 そのことに、無表情なままの顔の下で、クロードがほっと息を吐く。



 けれど……



(……ご迷惑、じゃない、かな……? お忙しいだろうし……)



 アインの方は困惑気味で、何とも言えずにオロオロとしている。



「……無理に、とは言わないし、聞いたところで、何ができるわけでもないだろうけれど……それだけ、知っておいてくれればいい……」



 そんな様子に笑って告げたシプラは、いつでも声をかけてくれ、これからは、俺からも声をかけるから……あ、迷惑だったり、忙しい時はちゃんと教えてくれよな? とだけ言って去っていく。



「「……………」」



 嵐のような出来事に、クロードとアインが、それぞれ違った気持ちで沈黙してしまったのは……まあ致し方のないことであろう。



 とにもかくにも、こうして神官呪師しんかんじゅし学校の呪師寮内に、アインの事情を知る生徒が一人、誕生したことだけは確かだった。


第7章第3話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、過酷な野営訓練から戻ったアインのもとに、シプラが押しかけてくるお話です。


キプラからすべての真実を知らされたシプラは、以前の己の行いを深く恥じ、アインに誠心誠意の謝罪をします。


そして、これからは自分の意思でアインの力になると真っ直ぐに宣言。


その急激な態度の変化に戸惑うアインと、相談相手になれる存在に少し安堵するクロード。


呪師寮に新たな味方が誕生しましたが、果たして……?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


※本編シリーズはこちら!

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