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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第5章 雪下の宝を散りばめて

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第5話・彼は彼で一生懸命~気遣いできても大雑把~

第5章 雪下の宝を散りばめて



       第5話・彼は彼で一生懸命~気遣いできても大雑把~



 夕食材料と、明日の朝食の材料を兼ねて狩猟と採取に出かけたステールは、まず最初に午前中の散策でアインが示した雪中兎せっちゅううさぎの巣穴を確認する。



「……マジかよ……本当にあった……」



 確認して、アインが示した木の根元、雪に隠されるようにして存在していた巣穴を見つけて思わず呟く。



 雪中兎は、雪に同化するほど真っ白な体毛の少し大きな兎。


 水分を熱に変換して体温を保つ性質を持っているため、冬眠をしない。


 冬の野草などを餌にするので、独特の香りと芳醇な旨味を持っていて……実は超高級食材。


 当然、毛皮も超高級品として取引される。



 何しろ、白すぎて見つけられないし、巣穴を見つけるのはさらに至難の業……のはず。



 それを、あっさりと見つけ出したアインのカンというか何かに若干引き気味になりつつも、折角の美味しいお肉と高級毛皮。


 逃がす手はないので数羽捕まえて絞めておく。



「今夜こそは肉を焼いて食うか……クロードには触らせないようにしないと……後は……毛皮で小物でも作らせるのも手だな……」



 せっかく、初日だからと持ち込んだ生肉を黒焦げの生焼けにされた恨みは忘れていない。


 インスが表面の焦げを落として、中の生肉部分を薄切りにして入れろ、と言いださなければ一口も食えずに廃棄するところだった。



 そして、一羽分から取れる毛皮の量はたかが知れているので、ほんの数羽でできるのはせいぜい小物くらいだろう。



「……まあ、あれはあれで、独特の香ばしさというか、辛味との相性は抜群だったな……っと、そうだ! アインが入れろと言った、あの赤い実……この辺りにもあるかな……?」



 思い出して辺りを見回すが、どうやらこの辺りにはなさそうだ。



「……他の場所も見てみるか……」



 少し考えて、範囲を広げることにする。



 そうすると、アインが色々と見つけたのと似たような地形の場所もまた見つかり、午前中と同じように探してみれば雪下草や寒球草が見つかって口元が緩む。



 この二つは持ち込んだ根菜とも似た感じだからステールにも使いやすい。


 あとは、寒冷茸くらいなら使い道も思いつくが、流石に香草は無理だ。



「……臭みを消したり、風味を良くしたりというのは分かるんだが……使い方も量もいまいちよく分からんからな……」



 下手に手を出して、分量を間違えた結果、とんでもない味になっては困る。



 その点、昨日の赤い実は少しの間水に浸けておき、指で潰して入れるだけ。



 昨夜の三粒が自分的には一番だったが、今朝の二粒でも悪くはなかった。


 アインが、一粒ずつ入れて味を見た後で足すように言ってくれたので、どう変化していくのかも分かっているから使いやすい。



「……う~ん……」



 どこかにないかな? と改めて周囲を見渡す。



「お! あった、あった!」



 ぐるりと見まわした視界の先。


 低い木の葉陰に鈴なりに実のるそれを見つけて摘み取る。



「よっし、今夜も三粒入れて、昨日よりうまく仕上げてやるぜ!」



 ニヤリと笑って、ステールは野営拠点に戻ると早速、昼にインスたちがやっていたような下ごしらえを始めた。



 まずは、アインが起きてこないうちに絞めた雪中兎の処理から。



 まだ幼いアインに、見習い呪師じゅしが初めて討伐訓練に出る時に課せられる絶対の殺生をさせるつもりがない以上、できる限りそれを彷彿とさせる情景は見せるべきではないというのは、午前中に散策に出た際、インスと視線で会話して決めてあった。



 だから、解体済みの状態であるならともかく、解体前や解体中は見られないようにしておく必要がある。



 馬を繋いだ小川の近くでさばき、生肉の塊、と言える状態にしてから拠点に持ち込むと、まずは湯を沸かし、兎肉は一口大に切り分け、串に刺して塩を振っておく。



 大分小さくなった干し肉の塊を慎重に削いで、一度茹でて余分な塩と獣臭さを取り除いた。



 昼にインスたちがやっていた……と言いつつも、実際のところ、重い鍋など動かせない二人に代わってほぼステールがやっていた……処理を再現していく。



 ただ……



「……流石に、あんなチマチマした大きさは、なぁ……」



 根菜や、採取してきた野草はきれいに洗って皮を剥きはしたものの、ざっくりと適当に切っただけ。


 干し肉を削いだり、野菜を切ったりしていたのはインスだったので、それが何を意味する行動なのかをステールは理解していない。



 だから、大きい方が食いでがある! との信条の下、大雑把に切り分けておく。


 ここで、野菜の下茹でもしないのは、その理由が分かっていないからだろう。



 けれど、ベースとなる下処理済みの干し肉から煮出したスープの香りは昨夜とは違い、それだけで自然と鼻歌混じりで作業が進む。



 そうして……



「……お? そろそろ煮えて来たか……?」



 グラグラと煮えたぎる大鍋には、昨夜よりは大分マシなスープが出来上がりを待っていた。


第5章第5話をお読みいただきありがとうございます。


ステールによる夕食準備のお話をお届けしました。


昼間の料理の差を埋めようと、インスたちを真似て下ごしらえに挑むステール。


意味も分からず大雑把に進めてしまいますが、それでも良い香りのするスープが煮立ってきて、すっかりご機嫌な様子です。


自信満々で準備したリベンジの夕食はどうなるのか……?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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