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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第4章 野営訓練の食事情

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第1話・そこにあるものを組み合わせ~初日の夜の和やかな~

第4章 野営訓練の食事情



     第1話・そこにあるものを組み合わせ~初日の夜の和やかな~



 別の鍋にスパイシーになったスープを分け、そこにさらに水を足して辛味を薄める。


 ひと煮立ちさせ、具材の火の通り具合も改めて確認してからミルクを加えると、立ち昇る湯気までもがまろやかな柔らかさを纏う。



 ほう……っと、軽く目を開いて感心したステールは、まずはインスに辛みを見て貰おうと少し器に入れて差し出した。



 インスは無言で受け取ると、まずはその見た目と香りを確かめる。



 最初にステールが作ったごった煮と呼ぶのもおこがましい泥臭い塩水煮の濁った色合いに、カジャを加えた結果、赤茶色の油が浮く濃い琥珀色のスープを薄め、ミルクを混ぜたことによってくすんだ薄茶色に変化していた。



 香りも、刺すような刺激は薄れ、まろやかな刺激を感じるので、大分マシにはなっていそうだ。



「「「……………」」」



 慎重に一口含むインスを、全員が食い入るように見つめる。



「……………」



 ゆっくりと舌の上で転がして、特に辛みを注意深く感じ取った。



「………ど、どうだ……」



 ごくりと、唾を飲み込んでステールが問いかけると、インスは少し、困ったように眉を下げた。



「辛さは大分よくなりましたが……ぼけてますね……」


「……ああ~」



 返答に、がっくりとステールは肩を落とす。



「……インス様、僕も、味、見てみても、大丈夫そうですか……?」



 くいくいっと、アインがインスの袖を引く。



「ああ……大丈夫だと思いますよ……」



 おねだりするような様子に微笑んで、インスはよく冷ましたスープを少しだけアインの口に運んだ。



「「「………………」」」



 今度は、先ほどのインスと同じように、ゆっくりと舌の上で転がすようにして味を確かめるアインを食い入るように見つめる。



「ん……。ちょっとだけ、チーズ入れると、もっとおいしくなります」


「ああ……確かに……そうだ、ステールさん、黒焦げになったお肉、どうしました?」



 ちょっと考えるようにして言ったアインに、インスは頷き、思い出して確認する。



「あ? クロードが黒焦げにした生焼け肉の塊か? どうするんだ?」



 チーズね……と、頷いたステールは、いきなりの言葉に困惑しつつ、ダメになった肉塊を取り出す。



「表面を削って、中の、まだ生焼けの部分だけを薄く切ってスープに入れて下さい。それで食べられると思います」


「なるほど! 分かった、ちょっと待て」



 言われて、パッと表情を明るくしたステールが手早く作業を進める。



 そして……



「よし! できたぞ!!」



 ステールがそう言った時には、すっかり日は暮れ、明かりの届かない森は何かが潜んでいそうな不気味な暗さに閉ざされていた。



 神官呪師しんかんじゅし見習いたちの野営訓練で使われる設営地は、木々が切られて広く場所が開けられている。


 だから、見上げると暗い夜空一面を埋め尽くす銀の星と、かけ始めて少しした楕円の月が煌々と輝いているのが見えた。



「……何とか、まともに食べられそうなものが出来上がりましたね……」



 深皿にたっぷりと盛られたスープと、硬く焼かれた黒パンと、ハードチーズを切ったものを渡されて、ホッとインスが息を吐く。



「うるさい」



 渋面になったステールが、アインの分を差し出す。



「……ぁ……」


「おっと……」



 しかし、受け取ろうとしたアインの手が空ぶって、傾きかけた器にステールが慌てて態勢を整えた。



「ステールさん、アイン君に渡す時は、ちゃんと両手で受け取るのを確認して下さい」



 咎めるような視線を向けつつ、代わりに受け取ったインスが、温度なども確かめながらアインの胸の前に器を持っていく。



「……ごめんなさい……」


「あ~。悪い……。気を付ける……」



 俯いて唇を噛むアインと、バツが悪そうに後ろ頭を掻くステールにそっと息を吐いた。



「アイン君は悪くありません。こんな熱いものを手渡ししようとしているのに、きちんと確認せずに手を離そうとしたステールさんが悪いのです。相手が熱さで反射的に手を離してしまうことだって、考えられますからね」



 ムッと、わざと眉を顰めて言えば、ステールは軽く肩を竦めてその通りだな、と返す。



 言いながら、クロードの分をよそって渡し、自分の分も盛り付けると、どっかりと腰を下ろした。



「とりあえず、冷める前に食うぞ。それと、インス。お前はもっと体重を増やす必要があるからな、最低でも十皿分は食え」


「無茶言わないで下さいよ!!」



 ニヤリと笑ったステールの言葉に、それまで責めるような発言を繰り返していたインスが一気に青ざめる。



 いくら何でも十皿はない。



「……二十皿くらいは、イケそうだぞ……」



 神に食前の祈りを捧げ、さっさと食べ始めたクロードの言葉に……



「……………」


「だとよ?」


「……ぇ? ……ぇ……っ、と……?」



 インスは絶句し、ステールは大笑いし、アインはオロオロする。



「……とりあえず、いただきましょうか……」



 もう、先のことは考えないでおこう、と現実逃避を決めて、インスはにこりとアインを促した。


第4章第1話をお読みいただきありがとうございます。


波乱万丈だった夕食作りも一段落し、星空の下での穏やかな(?)食事の時間が始まろうとしています。


不器用なステールの配膳ミスを的確に叱り、アインには優しく寄り添うインス。


しかし、そんなインスを絶望の淵に突き落としたのが、ステールからの「十皿食べろ」という無茶振りと、横から聞こえてきたクロードの「二十皿イケる」という衝撃の発言(笑)。


満天の星空の下、絶望的なノルマを前に現実逃避を決めたインスの明日はどっちだ!?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

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※本編シリーズはこちら!

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