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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第3章 東の森の野営訓練

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第5話・赤い木の実の魔法~辛さの暴力に涙する~

第3章 東の森の野営訓練



       第5話・赤い木の実の魔法~辛さの暴力に涙する~



 アイン……と、インス……に言われた通り、水に暫く浸けておいた赤い木の実を、まずは一粒潰してスープに加える。



 こんなものが何になるのか……と、胡乱げだったステールは、まずその一粒を潰した瞬間の、何とも言えない刺激に微かに顔を顰めた。



「……大丈夫なのかよ、これ……」


「大丈夫ですから、味を見て下さい」



 ブチブチと文句をつけるステールにキュッと首を竦めたアインに代わって、インスがさっさと味を見るようにとせかす。



「………っ!?」



 渋面でスープをひと混ぜして、少しだけ掬って味を見たステールは目を見開いて硬直した。



「……え……っと、どう、ですか……?」



 恐る恐るアインが問いかけるが、ステールは無言のままもう一粒を潰して混ぜ、味を見て、更に一粒……水に浸けていた三粒すべてをスープに入れる。


 その頃にはスープからは何とも言えないスパイシーな湯気が立ち上り、ごくりと、無意識にクロードが喉を鳴らす。



「………アインっ!」


「は、はい……っ!」



 三粒入れて味を見て、動きを止めたステールが目をかっぴらいてアインを振り返った。


 いきなり怖い顔で呼ばれて、アインは体を小さく跳ねさせて返事をする。



「どうなってるんだ! ピリッと辛くなって、身体があったかくなったぞ!!」


「え? えっと……カジャの実の辛み成分と、保温効果です! 入れ過ぎると辛くなりすぎて食べられなくなるので……!!」



 早口で言いながらずんずん近づいてくるステールに、アインも焦って説明する。



「お前も味見してみろ! うまくなったぞ!!」


「えっ!? ……んぐ……っ!?」


「ちょっ!? ステールさんっ!!」



 足を止めたステールが、アインの口にスプーンを突っ込む。


 焦ってインスが声を上げるが間に合わない。



「……っ……!!!!!!?????」



 びくんっ、と体を跳ねさせたアインの青白い顔が一瞬で真っ赤になり、ボロボロと涙があふれる。



「……え……?」


「何やってるんですかっ!! ミルクっ!! 早くっ!!」



 ぎょっとしたステールが棒立ちになる中、声もなくバタつくアインを宥めながらインスが声を上げた。



「え? いや、俺はただ……」


「いいから! 早くミルクっ!!」



 言い訳は後、と睨むインスの目に本気の殺気を感じて、慌ててステールは温めておいたミルクの入った小鍋からコップに移して差し出す。



「アイン君、ミルク、飲んでください……辛さが少しはマシになるはずです」


「ん~~~~っ!!!!」



 ボロボロと涙を流しながらも、言われるがままに口元に当てられたコップから、あたたかなミルクをコクコクと飲む。


 途中でコップを自分で両手で包むように持って、一気に飲み切った。



「……か、……らか……っ……」


「ええ。辛かったですよね……ステールさん。アイン君は、まだ子供ですよ? 大人の味覚に丁度いい辛さなんて、劇物もいいところです」



 ケホケホと噎せながら声を絞り出すアインの背を撫でて宥めながら、インスはステールを睨みつける。



「……あ……」



 漸く、この騒ぎの原因を理解したステールがバツが悪そうな顔をしてアインを見た。



「すまん……うまくなったから、つい……」


「……ん……だぃ、じょぶ……おぃ、しくな……って、よかっ……」


「……アインの分は……?」



 シュンとしたステールに、フルっと首を横に振って応じるアインはまだ涙目。


 やり取りに、クロードが首を傾げて問いかける。



「「……あ……」」



 インスとステールが同時に顔を青くした。



 調理用の焚火にかかってるスープの大鍋は一つ。


 そこにはすでに、三粒のカジャが入っている。



「……ん、大丈夫、です……ミルクも、パンも、チーズもあります」



 何でもないように言うアインに、インスもステールもクロードも、何も言えなくなってしまう。



 けれど……



(((……アイン(君)の分は、別鍋で作らないとダメだな(ですね)……)))



 三人の心の声だけは一致していた。



「あとは……ちょっとだけ、別にして、薄めて、ミルクで煮ると、柔らかくなります」


「ああ、確かに……ミルクスープにすれば辛味が和らぎますから、アイン君でも食べられるかもしれませんね……」


「……ごめんなさい……」



 ちょっと上の方に視線を向けたアインの提案に、頷いたインスだったが、すぐにアインが俯いてしまったことに首を傾げる。



「? どうして謝るんですか?」


「……僕のせいで、余計な手間……かけてしまいます……」



 抱き直して問いかけたインスに、俯いたままで囁くようにアインは答える。



(((……っ!?)))



 それを聞いた瞬間、大人たちが声を出さずに息を飲んだ。



 チラリと視線で会話する。



「ミルクスープか! 味変によさそうだな!! よし、取り分けて、両方味わってみよう!!」


「……そうだな……なら、俺が……」


「お前は近づくなっ!!」



 わざとらしいほどカラッとした大きな声でステールが言えば、手伝おう、とばかりにクロードが腰を浮かしかけ、速攻でステールに阻止される。



「……ぇ……?」


「一度に二種類の味を楽しめるのは、アイン君のおかげですね」


「え……? え……?」



 やり取りに戸惑うアインに、にこりとインスが微笑みかけると、アインはますます困惑したようにオロオロと視線を彷徨わせた。


第3章第5話をお読みいただきありがとうございます。


謎の赤い実「カジャ」の正体は、辛味と保温効果をもたらす木の実でした。


ステール作の『どろしお』スープが魔法のように美味しくなったようですが……そのテンションのまま暴走し、まさかの事態を引き起こしてしまいます。


大人には丁度いい辛さでも、幼いアインにとっては劇物レベル。


不意打ちで味見させられた結果、アインは涙目になって悶絶!


インスの逆鱗に触れることに……。


アインのための新たな「ミルクスープ」作りの行方と、優しさにあふれた大人たちのフォロー。


ドタバタな夕食準備もいよいよ大詰めです。


果たして無事、アインが食べられるスープは出来上がるのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

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※本編シリーズはこちら!

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