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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第3章 東の森の野営訓練

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第4話・皇宮護衛官の野営飯~それは到底料理と言えず~

第3章 東の森の野営訓練



      第4話・皇宮護衛官の野営飯~それは到底料理と言えず~



 まさかの事実。


 優秀な神殿護衛官であり、皇女殿下の専属護衛騎士団長が直々にスカウトした、孤児院出身のクロードが料理下手。



「……そうなんですか……」



 何がどうしたのかを問いかけたインスに、見ろよこれ! と手にした黒い塊を突き付けたステールの説明を聞いて、インスが最初に口にしたのはその言葉。



「そうなんですか……じゃないんだよ! クロード(こいつ)が食材や調理器具に手を出そうとしたら止めてくれ。ダメにされる……」



 せっかく今夜の夕食用にと準備した肉の塊……初日の夜くらいは持ち込み食材も使おうと用意してあった……を黒焦げ生焼けにされて、半分涙目になったステールが溜め息を吐く。



「……すまん……」



 しゅんと項垂れる……表情は変わっているように見えない……クロードは、もういいから調理用の焚火に近づくなと言われ、少し離れたところに腰を下ろす。



「……つまり、今夜はその、材料を水で煮ただけのシロモノですか?」


「シロモノっていうな! ちゃんと滋味あふれるスープだぞ!! あと、黒パンとチーズとミルクは無事だ」



 胸を張って言うステールに溜め息。



 ただ雪を溶かして濾過した後に沸かしただけのお湯に、塩を大量にまぶして保存性を高めた干し肉のそぎ切りと、根菜を洗って適当に切ってぶち込んで煮ただけのものをスープとは呼びたくない。



 よく言って雑多煮……実態はただの水煮、いや、塩水煮か。



「……塩の味と、せいぜい干し肉の脂……野菜の甘みも少しは……ありますかね……? いや、雑味ばかりでばらばらな食感になるでしょうから、料理とも呼べないような……?」



 味の想像がついて溜め息しか出ないインスに、文句が多い! とステールが怒鳴る。



「……ん……?」



 と、流石に騒がしくし過ぎたのか、インスの腕の中で眠っていたアインがモゾりと動く。



「ああ。目が覚めましたか? おはようございます、アイン君」


「ん……ぉ、はよぅ……ござ……ます……」



 ふわりと微笑んで声をかけたインスに、まだ少し寝ぼけた感じで目を擦りながらアインも挨拶を返す。



 その手をそっと掴んで止めたインスは、アインの身体を毛布に包んだまま向きを変えて自分の膝に座らせた。



「……しおに……?」



 くんっ……と、鍋から漂う香りをかいで、こてりとアインが首を傾げる。



「スープだ。干し肉と根菜のスープ」



 ぷっと、小さくインスが噴き出し、ステールが渋面を作ってアインを睨んだ。



「……? おにく、もどしましたか?」


「は? もどす?」



 キョトンとしたアインの問いかけに、ステールは何のことだと首を傾げた。



「干し肉は、塩分が高くて、そのまま煮るとしょっぱくて、獣臭い感じになっちゃいますよ?」


「う……っ」



 当たり前の口調で語る推定五歳児に、反論できなくて言葉に詰まる。



「そうですね……だから、調理前に下処理が必要になりますが……切っただけですね」


「……ぇ……?」



 よく知っていましたね、と頭を撫でつつ告げるインスの言葉に、アインは信じられないとばかりに目を丸くする。



「大丈夫だ! 生肉じゃないんだ、煮れば食える!!」



 ほら、とステールが味見用に少しだけスープもどきを器に入れて差し出す。



 インスが受け取ってよく冷まして一口含み……



「……うん。想像通りの味ですね……」



 何とも言えない微妙な表情で頷く。



「? そうなんですか?」



 こてりと首を傾げるアインに、残ったスープもどきを味見させる。



「……………」



 ほんの少しだけ口に含んで、ゆっくりと舌で転がすようにして味を確かめたアインは……



「……どろしお……?」


「食えるだろうがっ!!」



 思わず小さく呟いてステールの怒鳴られ、キュッと首を竦めた。



「ステールさん。大きな声を出さないで下さい」



 よしよしとアインの頭を撫でて宥めながら、インスがステールを睨む。



 アインはただ、素直に感想を言っただけ。


 別にマズいとも、いらないとも、食べられないとも言っていない。



「……クロード、あそこ……赤いの、見えますか……?」


「……? これか……?」



 半分涙目になって、それでもアインは何かを指さしてクロードを呼ぶ。



 アインが指さす方……高い木の枝にぽつぽつと残る赤い小さな木の実を見つけ、クロードが無造作に摘み取る。



 五粒ほどがその大きな掌の上に乗せられてアインの前に差し出された。


「ありがとうございます」


「……ん……」



 受け取って、微かに微笑んだアインに、クロードもかすかに口元に笑みを浮かべ、そっと頭をひと撫でする。



 クロードに取って貰った赤い木の実を、アインはじっと、観察した。



「……カジャ、ですね……」


「! はい……インス様、ご存じだったんですね……」



 アインを抱いているインスが一緒に観察して、その小さな正円の深紅を見た。



「カジャ?」



 ステールが何の話だとばかりに眉を顰めると、アインはその手の赤い木の実をステールに向かって差し出した。



「あの……ステール様、これ、少し水に浸けておくと柔らかくなって、指でつぶせるようになるので、一粒ずつ、スープに足してみて下さい」


「は? それを?」


「ステールさん。アイン君の言う通りにしてみて下さい」



 アインの言葉に、ますます眉を顰めるステールは、インスに重ねて言われて胡乱げな表情で受け取ると、一応、言われた通りにまず水に浸ける。


 一粒ずつ入れろ、と言われたので、とりあえず三粒ほどを浸けてみた。


第3章第4話をお読みいただきありがとうございます。


ステール作のワイルドすぎる「どろしお」スープを前に、インスの冷ややかなツッコミとアインの無邪気な(しかし的確な)指摘が冴え渡ります(笑)。


完璧超人に見えるクロードの「料理下手」という可愛らしい弱点も飛び出し、彼らの意外な素顔が次々と見えてきました。


そんな中、アインが提案した「赤い木の実」の追加。


果たしてその結果、ステールの作ったスープはどう変わるのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


※番外編シリーズはこちら!

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※本編シリーズはこちら!

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