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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑩~真白の森に命の雫を~  作者: norito&mikoto
第3章 東の森の野営訓練

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第1話・すべては初めての~できることを知るために~

第3章 東の森の野営訓練



       第1話・すべては初めての~できることを知るために~



「……ん……っ」



 不意に、ひやりと冷たい空気にさらされて、顔を顰めたアインがぶるりと震え、うっすらと目を開く。



「……ひどい目にあいました……」



 そのすぐそばで、ぐったりと疲れた様子のインスが小さく愚痴をこぼしている。



 皇都の東に広がる森は、皇都の南門から出て、街道を数時間進んだ先。



 真冬の森はすっかり雪化粧を纏い、足元も深い雪に埋もれている。


 森の中を流れる小川のすぐ近く。


 神官呪師しんかんじゅしたちが野営訓練の際に拠点ベースとする開けた場所にいつの間にか到着していた。



 クロードが外套の前を開け、アインを片手で抱いたまま馬から降りる。



 ギュッと音を立ててクロードの足が雪に沈み、ゆっくりと地面に下ろされたアインの足もずっぽりと埋もれてしまう。


 キンっと、耳が痛くなる程の静寂。



「……ぇ……? ……っ!! ご、ごめ……っ!!」


「アイン君は、大丈夫でしたか?」



 自分が眠ってしまっていたことに気づいて青ざめたアインに、ギュッ、ギュッと雪を踏んで歩み寄って来たインスがふわりと微笑みかける。



「……ぁ……」


「……うん。目元のクマは取れていますね……顔色が悪いようですが……疲れてしまいましたか?」



 アインの前で腰を落として、インスは手袋をした手でそっとアインの頬を両手で包む。



 何も言えなくなってしまって、ぎこちなく首を横に振ったアインは、俯いてキュッと唇を噛み、冷たくなった小さな両手(素手)を握りしめた。



 二人が話している間に、クロードとステールは小川の近くに馬を繋ぎに行って、その背に括り付けて運んできた荷物を下ろす。



「インス、アイン。俺たちで設営をするから、休憩していろ。目の届く範囲なら、多少移動してもいいぞ」


「分かりました……近くには居るようにします」



 声をかけながら、ステールは素早く地面の状態を確認し、クロードは早くも地ならしを始めている。


 様子に、頷いたインスは作業の邪魔にならないようにと、アインの手を引いてゆっくりと歩きだした。



「……ぇ……? あ、あれ……?」



 促されるように手を引かれたアインが一歩、足を踏み出すが、まず、雪から足を抜き、また雪の中に沈む、という感覚にふらついてしまう。



「……足元に気を付けて……雪の上は、歩きにくいですし、その下に何が隠れているかわかりませんから、ゆっくり、注意しながら下ろして……」


「……は、はい……」



 アインの手をしっかりと握って、転ばないように引き上げながら告げるインスに、四苦八苦しながらもアインはゆっくりと、一歩ずつ歩みを進める。



(……雪の上って、こんなに歩きにくいんだ……)



 これまでほぼ室内の平らなところでしか機能訓練をしていなかったアインは、外の世界の過酷さに絶望感を覚えた。


 それでなくてもまともに歩くことができないのに、こんな状態では足手まといどころの騒ぎではない。



 思わず泣きそうになって、潤んだ瞳が急に痛くなった。



「……ぃ……っ!?」


「アイン君!?」



 思わず足を止め、目を擦る。



 驚いて見下ろしたインスは、外気で即座に凍結した涙に目を赤くしたアインを見て慌てる。


 素早くハンカチを出して目元を軽く押さえ、ついでに鼻の辺りの凍った水分も拭い去り、そのまま抱き上げた。



「……ごめんなさい……」


「どうして謝るんですか?」



 ぎゅっと、インスの首に手を回して抱き着いて、震える声を漏らしたアインに小さく笑う。



「はじめてでしょう? 勝手が分からなくて当然です。だからこそ、色々体験して、注意するべきことや、その中でも自分ができることをちゃんと考えて、行動するための訓練です」


「……ぇ……?」



 軽く背を叩くようにして宥め、そう告げたインスはゆっくりと歩きだす。


 戸惑ったように吐息を漏らしたアインは、すぐ真横にあるインスの顔を見た。



 穏やかな眼差しでアインに微笑みかけて、注意深く歩くインスの息も白く凍えて、押し潰されそうな静寂の中でクロードとステールが設営を進める声と音。


 近くを流れる小川のコポコポという少し寂しげな高い音と、その傍に繋がれた馬たちの熱気と、首を振るたびに上がる鼻息の白い煙。



(……注意することや、できること……?)



 言われた言葉を反芻し、改めて辺りを見回す。



 白一色にも思える世界は、実は黒い木の影や、ところどころ、鮮やかな赤色の木の実まで存在してる。



(……あれ……って、もしかして……)



 その赤色に目を引き付けられるが、小川の傍に付いたことでインスはアインを地面に下ろした。


第3章第1話をお読みいただきありがとうございます。


東の森の野営拠点に到着し、ついに訓練がスタート。


しかし、室内での訓練が主だったアインにとって、雪の積もった森は一歩歩くことすら困難な過酷な環境です。


自分が足手まといになっていると痛感し、泣きそうになってしまうアイン。


それでも、インスの「体験して、できることを考えて行動するための訓練」という言葉にハッとさせられ、周囲を見渡します。


音のない真っ白な世界で、アインは一体何を見つけたのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。


ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第10弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト


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