断章:『再始動』
全身を生命維持装置に接続したチューブに覆われ、安楽椅子に座る男が一人。生気はなく、打ち捨てられた人形のようにぐったりとしている。その視線の先に、『ゆりかご』はあった。
『ゆりかご』という呼び名は中に収められている『それら』に由来していたから、客観的には不愛想で温かみに欠けた、強化プラスチックとガラスの装置に過ぎなかった。
その中に収められているのは、四人の胎児である。それらからは本来あるべき命の躍動は感じられなかった。
一人の胎児を取り囲むように、三人の胎児が配置されている様は、宗教的な意味合いを持つ象徴的な文様の一部のようにも、機械を構成する部品のようにも見えた。
男は背もたれに体重を預け、真っ黒な板のようにうつろな瞳から覗き込むような視線を目の前の『ゆりかご』の中に投げかけている。
彼の脳内に声なきイメージが語り掛ける。
『▽『オーガ・インストーラ』の再起動が確認されました。部位は『右腕』、単体での実行能力値は20%。起動中の『心臓』を含めた計画実行能力値及び実現可能性の再評価を行います」
「—承認。計画:『ブレインシード』が再始動します。』
「よくやった『赤』—。」
男は口元を動かすのさえ難儀な様子で薄い笑みを浮かべた。
「登ってこい、高い、高い、マメノキを伝って―ジャック。愛しい僕の息子」
彼は窓の外に広がる青空を見る。一筋に伸びる樹を幻視するその視線には、それまでに見られなかった光が宿っていた。




