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観測
リナは、澱の底でサクの残骸を見つけ出す。
それは、客観的なシステムから見れば、修復不可能なほどに損壊した、無意味なバイナリデータの羅列に過ぎなかった。
触れれば崩れる。
意味を与えようとした瞬間に、ほどける。
——それでも。
リナは、そのノイズに手を伸ばす。
「……サク」
名前を呼んだ瞬間、世界がわずかに「留まる」。
散っていた断片が、崩れない。
色が差す。
輪郭が生まれる。
意味が、繋がる。
それは、奇跡ではない。
観測だった。
見られたものだけが、そこに在る。
定義されたものだけが、存在する。
サクは、彼自身のデータの中にあったのではない。
リナが見ている、その事実の中にだけ、在った。
「……ここにいる」
その言葉は、証明ではない。肯定だった。
そして——
消えかけていた存在は、わずかに形を保ち続ける。
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