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第八章 エピローグ・聖域の日常 39話 【禁忌の領域と強制的な平和】

天空の要塞が消滅したその日、大陸全土に張り巡らされた密偵たちの網を通じて、一つの「戦慄」が急速に伝播していった。


残された「七つの魔王の国」の統治者たちは、王座で震えていた。彼らがかつて競い合っていた覇権や領土拡張の野心は、たった一人の男が振るった原始的な暴力の前に、瞬時にして瓦解した。

彼らは今や、人間が治める怪物シンの領域を「禁忌のタブー」と呼んでいる。その境界線を越えることは、すなわち死と同義――いや、存在そのものを消し去られる消滅を意味するからだ。各国は決して近づかないことを誓い合い、かつての傲慢さは鳴りを潜め、極度の緊張が支配する国境が築かれた。


変化は権力者たちだけにとどまらなかった。

結界の外、荒廃したスラムや辺境の街で生きる難民たちの間では、あの「銀髪の王」の物語が伝説として語り継がれている。それは恐怖の伝承だった。


「あの王の怒りに触れてはならない」

「城の近くで争い事など起こせば、空そのものが裂けて地獄が訪れる」


そんな噂が人々の口から口へと伝わり、皮肉にもスラムの治安は劇的に改善された。以前までは絶えなかった小競り合いや、弱者を狙う犯罪の類が、まるで霧が晴れるように消えていった。


王はただ、最愛の妻を守るために怒っただけだった。しかし、その余波は世界を震わせ、力による支配の頂点に立つことで、結果として「強制的な平和」をこの地にもたらしていたのだ。


誰もが、シンの存在を畏怖し、その影を避ける。

それは、真の絶対者が君臨したことで生まれた、脆くも強固な均衡。この狂気的なまでの「静寂」こそが、王の留守を守る世界が手に入れた、唯一の平穏であった。


 

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