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第六章  天変地異の進軍 32話:【地図から消える聖域】

瓦礫の中で再会を果たした二人だが、周囲にはまだ、往生際悪く命乞いをする魔王たちが蠢いている。シンは愛しい妻を視界に収めながらも、その視線の端で、逃げ惑うかつての敵を見据えた。


退路など、最初から存在しなかったのだ。


シンは言葉を発することなく、ただゆっくりと大地に拳をかざした。それは術式を編むような魔法ではない。地面の奥底、数キロ下に眠る地殻エネルギーそのものを強制的に揺さぶるための、原始的で重厚な一撃の予備動作だった。


空に浮かんでいたはずの天使族の要塞、そしてその周囲に広がる防衛都市が、王の意思に共鳴して激しく震え始める。建物が悲鳴を上げ、大地が波打つ。「ここから先は聖域ではない。貴様らの居場所など、この世界には一寸たりとも残されていない」という、王の絶対的な宣言だった。


魔王たちが恐怖に顔を引きつらせ、何かを叫ぼうとした。しかし、シンはそれを冷徹に遮る。


「お前たちに、かける言葉などない」


王の呟きは、判決の宣告だった。

シンが右拳を、真っ直ぐに大地――要塞の中枢――へと突き下ろす。


その瞬間、大気が停止し、沈黙が世界を支配した。

次の瞬間、要塞の足元で巨大なマグマの奔流が噴き上がり、大地が断層となって引き裂かれる。数千年の歴史を誇った天空の要塞、そしてそこを拠点としていた魔王の国が、文字通り地図の上から抹消されることが決定した。


シンは瓦礫の中で崩壊を見届けることもなく、ただアリシアだけを見つめていた。

世界がどうなろうと、王にとっては取るに足らない余興に過ぎなかった。彼の視界には今、ただ最愛の妻の安らぎだけが存在していた


 

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