第六章 天変地異の進軍 31話:【瓦礫の果ての再会】
轟音と共に要塞の絶対結界が完全に崩壊し、誇り高き城壁が粉々に砕け散った。舞い上がる土煙が晴れると、そこにはこの世の理から外れたような光景が広がっていた。
瓦礫の向こう側から、銀髪の王が姿を現す。
王のダークルビーの瞳は、怒りに充血し、獲物を探す飢えた獣の如く、周囲の生存者を射抜いていた。彼が歩むだけで大地が悲鳴を上げ、その視線が触れるだけで、生き残っていた天使たちの魂が戦慄で凍りつく。
彼は荒れ果てた広間を見渡す。そこには、崩落した天井と、紫の雷火に焼かれた天使たちの残骸が転がっていた。
そして、瓦礫の山の中で、王は静かに佇む一人の女を見つけた。
女王アリシア。
その姿を視界に捉えた瞬間、王の瞳から、世界を焼き尽くさんとしていた狂気が一瞬だけ霧散した。代わりに浮かんだのは、言葉にできないほど深い「安堵」だった。
アリシアは傷つき、埃にまみれていながらも、その表情にはかつてないほどの輝きが宿っている。彼女は王の瞳を真っ直ぐに見つめ返し、妖艶に微笑んだ。
「……遅かったわね、貴方」
彼女は、まるで日常の帰り道を待っていたかのように、そう囁いた。
その言葉は、王の魂を揺さぶり、彼を再び「夫」へと引き戻す合図だった。
周囲で天使たちの悲鳴が上がる中、王は返事の代わりに歩幅を詰め、瓦礫を蹴り飛ばして女王の元へ突き進む。
王と女王の再会。
その背後で、かつて天空を統べていた要塞は、音を立てて完全に崩壊の時を迎えようとしていた。




