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第五章  人質ではない女王 28話:【挟撃災厄

女王による内部からの奇襲が、要塞の防衛システムを完全に死滅させた瞬間だった。

要塞の堅牢な外壁が、轟音と共に悲鳴を上げた。


「ズゥゥゥゥンッ!!」


地響きという言葉では生ぬるい。それは天そのものが歪む音だった。

天使族が誇った絶対結界の壁に、まるで神の手が直接穿ったかのような、巨大な「人の指の形」をした穴が開く。砕け散った防壁の隙間から、地上の光を遮るほどの巨大な影が、内側を覗き込んだ。

そこに宿るのは、深淵より深いダークルビーの瞳。


「こ、ここは天空の城だぞ……! ありえない、物理的に届くはずが……!」


魔王たちは、己の傲慢さが招いた結末に顔を青ざめさせ、我先にと逃げ場を探し始める。しかし、要塞を維持する天使族たちは、自らの聖域を捨てるわけにはいかず、震える足で踏ん張っていた。


だが、その抵抗は無意味だった。

瓦礫を吹き飛ばし、舞い上がる土煙の向こうに、この世のものとは思えない殺気を纏った銀髪の王が、静かに、そして圧倒的な存在感で立ち尽くしている。


要塞の内部では、女王アリシアが指先から放つ紫の雷火が、逃げ惑う者たちの退路を容赦なく焼き払っていた。

外側からは、壁を素手で引き裂き、蹂躙し続ける王の暴力。


挟み撃ち。逃げ場を完全に失った魔王たちの顔には、もはや怒りも焦りもない。ただ、絶対的な「死」という絶望だけが、残酷な現実として刻み込まれていた。


王は一歩、また一歩と、粉砕した外壁を乗り越えて要塞へと歩み入る。

踏みしめるたびに床が沈み、空間が歪む。

王の目的はただ一つ、目の前で雷火を操り、誰よりも美しく、誰よりも恐ろしく輝く、最愛の女王の元へ到達することだけだった。


その再会の時、この天空の要塞は、文字通り「塵」と化す。

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