表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/42

第五章  人質ではない女王 25話:【深淵からの静寂】

 「あの王も、この枷で繋がれた女を盾にされれば手出しはできまい」


魔王の一人が、誇らしげにアリシアの顎を指先で持ち上げた。彼らにとって、この黒髪の女王は、かつてないほどの力を振るうシンを無力化するための、ただの「便利な道具」でしかなかった。

彼らは、アリシアがただ守られるだけの存在であり、人質という立場に屈して命乞いをする者だと信じ切っていた。


決定的な見誤りだった。


アリシアは、自分に向けられる汚らわしい指先を冷めた目で見つめていた。彼女は人質として震えているのではない。自身の「女王としての実力」を隠し持ちながら、敵の陣容と、その器の小ささを冷静に見定めていたのだ。


――この程度の者たちが、彼を止めるつもりだったのか。


彼女はため息をつくように、魔王たちの勝ち誇った顔を一人ひとり値踏みした。

かつて自分が配給の列で見守った子供たちの瞳には、未来に対する僅かな光があった。しかし、今目の前にいるこの高位の者たちの瞳には、権力と慢心という、あまりに底の浅い濁りしかない。


結果は、あまりに残念なものだった。


「期待した私が馬鹿だったわ」


アリシアが静かに呟くと、魔王たちが怪訝そうな顔で眉をひそめる。


「何を言っている?」


「あなたたちは強欲で、傲慢で……そして、本当に救いようがないほどに無知だということ。シンが私を奪い返すために、どれほどの速度で境界を越えてきたか、今のあなたたちには想像もつかないでしょうね」


アリシアの言葉が終わるか終わらないかの瞬間、要塞全体が大きく揺れた。

物理的な地震ではない。要塞を取り囲む「聖域の結界」が、何者かによる圧倒的な質量で、内側から悲鳴を上げているのだ。


地平線の彼方から歩いてくるのは、人間ではない。ましてやここは天空だ。

世界そのものを私物化し、ただ「愛する者」の無事だけを目的として歩む、荒ぶる理。


魔王たちは杯を落とした。

彼らが最強の盾だと信じていた結界に、目に見えるほどの「亀裂」が走り始めていたからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ