第四章 拉致計画の完遂 21話:【永遠の渇望】
エルサは震える手で千里眼の術式を展開し、アリシアが幽閉された座標を割り出した。それを報告するため、再び玉座の間へと足を運ぶ。
王シンは玉座に座り、一見すると冷静さを取り戻したかのように見えた。だが、その背中から放たれる気配は、かつてないほどに歪んでいる。
「お前たちにわかるか?」
シンは低く、どこか遠い響きの声で問いかけた。
「何千年という途方もない時間を生きる中で、彼女だけが……唯一、俺の飢えを満たしてくれた。だが、かつての彼女たちは短命で、何度も何度も、苦しみに喘ぎながら命を散らす彼女を看取ってきた。そのたび、俺は死に物狂いで彼女を探し続けた」
シンは立ち上がり、アリシアがいつも立っていた窓際へと歩み寄る。そこは、外の世界の濁った熱気が渦巻く場所だ。
「今世の彼女はハーフという、この世界では忌み嫌われる血を引いている。だが、その呪いのおかげで彼女は長命となり、俺と共に永遠という時間を生きられるはずだったんだ」
シンが振り返る。そこには怒りも悲しみもなく、ただ執着の成れの果てのような、透き通った虚無が広がっていた。
「悪いが……俺は、何を犠牲にしても彼女を取り戻す。世界が滅びようが知ったことではない。出陣の準備をしろ」
その言葉は、軍令というよりも呪文に近かった。
レヴォルテとエルサは、王の魂がすでに境界を越えてしまったことを悟り、深く頭を垂れる。
「隠密隊とともに先行します。必ずや女王を探し当てます」
エルサが鋭い眼差しで応え、足早に玉座の間を後にした。続いて、レヴォルテもまた、武人としての誇りなどとうに捨てたような足取りで軍備の準備に取り掛かる。
すべては、女王アリシアを取り戻すために。
シンの背中を見送る者はもういない。玉座の間には、王の歪んだ愛と、それを叶えるための冷徹な殺意だけが満ちていた。




