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第三章  禁断の外出 18話:【墜落する神の眷属】

惨劇の光景を、空の彼方から冷徹な眼差しで見つめる影があった。天使族の中でも魔王に近い地位にいる高位の使徒である。


「やはり、シンを揺さぶるにはあの女を傷つけるのが一番有効だな」


使徒は口元に歪んだ笑みを浮かべる。しかし、彼らは重大なことを見落としていた。王の怒りを煽ることは、世界そのものの理を覆すことと同義であるという「諸刃の剣」であることに。


「奪え。あの女の命と、王の理を共に断ち切るのだ」


使徒の合図と共に、雲間に隠れていたピクシーの群れが一斉に急降下した。鋭い爪と翼を武器に、血に汚れたアリシアの元へ殺到する。


「させん!」


地響きと共にレヴォルテが躍り出る。圧倒的な膂力で宙を舞うピクシーたちを次々と鷲掴みにすると、そのまま地面へ叩きつけた。コンクリートが砕け、ピクシーの肉体が汚泥に沈む。

同時に、エルサが素早くアリシアの周囲へ複雑な術式を展開した。


「女王、伏せてください!」


エルサの多重魔法結界が、降り注ぐ光の矢を弾き飛ばす。


その最中、シンは動かなかった。彼は血に染まったアリシアを抱き寄せたまま、空の彼方に潜む高位の使徒を見定めていた。シンの瞳が、獲物を捕らえた獣のように妖しく光る。


「動くなよ、エルサ。女王を守れ」


シンが踏み込んだ瞬間、大地が陥没した。

音速を超えた跳躍。シンの姿は一瞬で視界から消え、次の瞬間には、一番高い空で高みの見物を決め込んでいた天使の使徒の正面へと現れた。


「――お前か。私の妻を傷つけたのは」


使徒が驚愕に目を見開いた直後、シンの拳が空を切る。

その一撃は、小手先のものなどではない。世界そのものをねじ伏せるほどの質量を伴った暴力。

拳が使徒の胸を貫いた瞬間、使徒の肉体は抵抗する間もなく粉々に砕け散り、その余波だけで周囲の空間が歪んだ。


シンはそのまま重力に従い、空から地上へと急降下する。

墜落した拳が大地に突き刺さると、凄まじい衝撃波が広場を襲った。地面は広範囲にわたってくり抜かれ、クレーターの底から瓦礫が舞い上がる。


舞い散る塵の向こうで、レヴォルテとエルサが息を呑んで王を見つめていた。

そこには、愛する人を傷つけられた王の、冷徹で無慈悲な怒りの形が残されていた

 

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