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第二章  宰相と門番の仕事 12話:【楽園を守るための汚れ仕事】

エルサの千里眼が、難民の群れに紛れ込んだ「毒」を正確に射抜いた。


「……気になる人物がいますね。降りましょう」


エルサはレヴォルテに短く告げると、検問所の塔から螺旋階段を静かに降りた。彼らが通る扉は、王から特別に許可を得た二人だけが通行を許される「境界の裏口」である。扉を抜けた先には、冷たい風に晒されながら楽園への門を求める難民たちがひしめいていた。


エルサが難民たちの前に姿を現すと、群衆は畏怖の念を抱き、自然と道を開ける。エルサは容赦のない視線で群れを見やり、無機質な声で告げた。


「右から三番目、排除」


名指しされた男は一瞬、呆然と立ち尽くしたが、すぐに表情を歪め、懐から魔導ナイフを抜き放った。その形相は常軌を逸しており、結界そのものを破壊せんとばかりに狂気的な叫びを上げて突撃する。


しかし、男が王の結界に触れることは叶わなかった。

風を切る音すらさせず、レヴォルテが目の前に現れ、巨大な拳を一閃させた。鈍い破砕音と共に、男の身体は跡形もなく吹き飛ばされ、石畳に赤い飛沫が散る。


「排除」


エルサは血飛沫を浴び、その整った顔を真っ赤に濡らした。しかし、彼は瞬き一つせず、微塵も表情を変えない。まるで日常の瑣末な掃除を終えたかのように、ただ淡々と次の標的を物色する。


「次。左、四番目。同じく魔導兵器を隠匿している。排除を」


再び、巨漢の拳が唸りを上げる。

この光景は、古城で慈愛を振りまく女王には、死んでも見せることができない「汚れ」そのものだった。彼女の聖域を、彼女自身の清廉さを守るために。二人は、誰からも称賛されることのない、血塗られた防波堤であり続けていた。


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