第6話 似合うだけじゃ決められない
火曜日の夜、クローゼットから出した服をベッドへ並べてみると、思っていたより色が少なかった。
白いシャツ、紺のシャツ、黒と灰色のTシャツ。それぞれ何枚かあるので、着るものに困ってはいない。ただ、買い替えるときも、同じようなものを選んでいたのだと分かった。
袖口が擦れた白いシャツを持ち上げ、畳んで脇へ置いた。土曜日に買うのは、その代わりになるものだ。薄くて、手持ちのズボンに合わせられて、家で洗えるもの。一枚三千円くらいまでなら、今月の小遣いから出せる。
そこまで考えて、ベッドに並んだ服をスマホで撮った。
藤崎さんへ送ろうとして、彼女が別れ際に言ったことを思い出す。
当日まで、見てない方がいいから。
彼女の着るものは、土曜日まで分からない。俺の方は送っても構わない気もしたが、結局、写真はそのまま残すだけにした。店へ行ったとき、手持ちと比べるのに使えるだろう。
水曜日は、朝からその話をしたわけではなかった。藤崎さんとは数学の問題を確認し、高瀬さんが放課後に見に行くという映画の話を聞いた。
木曜日の昼には、高瀬さんが、ちゃんと見られた、と報告してくれた。俺が前に話したのとは別の作品だったが、背景も気になって見てしまったらしい。
「普段、そんなに見ないところなのに」
「話、分かんなくならなかった?」
「大丈夫。さすがにずっと看板だけ見てないから」
そう言われて笑った横で、藤崎さんが、次に見るとき私も探しちゃいそう、と話していた。
金曜日の小テストでは、月曜に二人で確認した形の問題が出た。返却は来週だが、終わった直後、藤崎さんはノートを開いて、符号のところは合ってた、と小さく喜んでいる。
「全部は?」
「それはまだ分かんない。今、喜べるとこだけ喜んでる」
「じゃあ、そこはおめでとう」
彼女は、ありがとう、と笑い、それから声を落とした。
「明日、一時ね」
「うん。時計の下」
「また二十分前とかに来なくていいよ」
「この前は、電車が一本早かっただけだろ」
「今回は歩いて来られるもんね」
そう言って、彼女は次の授業の教科書を出した。俺も前を向いたが、土曜日が近づいているのは、時間割を見なくても分かった。
それでも、土曜日の広場へ着いたのは、一時の十分前だった。
先週まで出店が並んでいた場所には、いつものベンチが戻っている。小さな子どもが植え込みの周りを歩き、その後ろを大人が追っていた。
俺は時計の下に立ち、広場へ入ってくる道を見た。今日は灰色のTシャツに、黒いズボンを合わせている。紺のシャツと迷ったが、同じ格好で待っていたら、先週の日曜日をもう一度始めるみたいで、別のものにした。
五分もたたないうちに、藤崎さんが見えた。
白いシャツの上に薄い黒のカーディガンを羽織り、淡い黄色のスカートをはいている。足元は、この前と同じ白いスニーカーだった。
髪は高い位置で一つに結ばれていて、歩くたびに、後ろで毛先が揺れた。
声をかけるより先に彼女が俺を見つけ、片手を上げる。俺も同じように手を上げてから、二歩ほど前へ出た。
「お待たせ。やっぱり早いじゃん」
「まだ十分前だったから、前より遅い」
「私も早く着いたけどね。……何かついてる?」
見ていたのが分かったらしく、藤崎さんが自分の袖へ目を落とした。
「いや。髪、結んでるんだなって」
「あ、こっちか。今日、暑そうだったから」
彼女は顔の横に落ちた髪を指で寄せた。いつも隠れている首筋が見えて、俺は一度、彼女の目へ視線を戻す。
「似合うと思う」
そう言うと、藤崎さんの指が止まった。
「……ほんと?」
「うん。いつもと違うから、すぐ気づいた」
「そっか。じゃあ、これにしてよかった」
彼女は少し笑い、鞄の肩紐を持ち直した。その後で俺の方を見て、今日は灰色なんだね、と言う。
「一応、違う色も持ってる」
「疑ってないよ。今日は何買うか、考えてきた?」
「薄いシャツ。一枚で着てもいいし、Tシャツの上に着られるやつ」
「いいね。私もそんなの見たい」
話しながら広場を抜け、駅前の商業施設へ向かった。彼女は歩き始めてから、昼は食べた、と聞いてきた。
「食べた。焼きそば」
「私、そうめん。お姉ちゃんが急に食べたいって言い出して」
「もう夏みたいだな」
「ね。今から冷たいのばっかり食べてたら、八月どうしよう」
「温かいのに戻るんじゃないか」
「一周しちゃう?」
そんなことを話している間に、自動ドアが開いた。冷えた空気が腕へ当たり、藤崎さんがカーディガンの前を少し寄せる。
俺も、薄い羽織りを買うのは正解かもしれないと思った。
最初に入った店は、いつも俺が一人で見ている店だった。
入口には半袖のシャツが並び、その横に、少し袖の長いものも掛かっている。藤崎さんはすぐに何かを取るのではなく、値札を見てから、俺の方へ顔を向けた。
「予算、どれくらいにする?」
「三千円くらいまで。いいのがあれば一枚」
「了解。じゃあ、この辺かな」
彼女は棚の一段下へ目を向けた。俺も隣から見て、薄い青のシャツを一枚引き出す。袖は肘より少し長いくらいで、布を触ると、持っている白いものより軽かった。
同じ形で、灰色と、くすんだ緑色もある。
「青いの気になる?」
「うん。白の代わりなら、このくらいかなって」
「こっちの緑もよさそう。三原、こういうの着たことある?」
「たぶん、ない」
藤崎さんが緑の方を取り、俺の胸元から少し離したところへ当ててみる。襟の辺りを見比べ、あ、こっちも合う、と言った。
「一回、両方着てみたら? 見るのと着るので違うし」
「そうする」
店員に声をかけ、二枚を試着室へ持っていった。藤崎さんは通路を空けた場所で待ち、俺はカーテンの向こうで青い方から羽織る。
鏡に映った自分は、思ったより普通だった。大きく変わった感じはしないが、見慣れた白とも、先週着た紺とも違う。
肩の位置を確かめ、腕を少し曲げる。布が引っ張られる感じはなかった。
「どう?」
外から声がして、俺はカーテンを開けた。
藤崎さんは顔を上げ、少し離れて俺を見た。
「あ、いい。涼しそう」
「サイズ、変じゃない?」
「うん。大きすぎないと思う。腕、動かしやすい?」
「平気」
俺が腕を曲げると、彼女も肩から袖へ視線を移した。その目が真剣なので、試着した服より、見られていることの方が気になってくる。
「もう一個、着てみる」
「うん。比べよ」
カーテンを閉め、青い方をハンガーへ戻す。緑の方も同じサイズなので、着心地はほとんど変わらなかった。
もう一度外へ出ると、藤崎さんが、ああ、と小さく声を上げる。
「そっち、好きかも」
「緑?」
「うん。思ったより落ち着いて見える。三原、黒いズボンよくはくし、合わせやすそう」
俺も鏡を見た。確かに、変ではない。今着ているズボンとも合っているし、買って帰れば普通に着られそうだ。
藤崎さんはハンガーの青い方を俺の横へ持ち、色を比べるようにして見せた。
「どっちもいいね。三原は?」
聞かれて、少し迷った。
緑が似合うと言ってもらえたのは嬉しい。知らなかった選択肢もできた。彼女と一緒でなければ、たぶん試着していない。
それでも、最初に目が向いたのは青だった。
「……俺は、青の方かな」
言ってから、俺は彼女の顔を見た。
「こっちもいいと思うけど、着て出かけるなら、青い方が何となく楽しみで」
「じゃあ、青だね」
返事は、拍子抜けするほど早かった。
「いいのか」
「何で私に許可取るの。三原が着るんだよ」
藤崎さんは笑い、青いシャツを少し持ち上げた。
「私、緑も好きって思っただけ。青が似合ってないって言ってないし」
「それは分かってるけど」
「うん。だったら、着たい方。そっちで出かけたとこ、見たいし」
最後の言葉で、俺は鏡から彼女へ目を戻した。藤崎さんは値札を見ていて、今言ったことを、特別なことだとは思っていないようだった。
俺が次にこの服を着るとき、彼女が見るかもしれない。そこまで考えると、自分が着たいと言った青が、さっきより少し気に入った。
「じゃあ、こっちにする」
「うん。いいと思う」
着替え終えて、緑の方を店員へ返した。青いシャツを買う前に、俺はスマホを出した。火曜の夜、ベッドへ並べて撮った服の写真を開く。
「準備してきたんだ」
藤崎さんが隣から画面を見て、ちょっと驚いたように言った。
「持ってるの忘れて、同じようなの買わないように」
「いいね。あ、この黒いの、今日のと別?」
「うん。ちょっと厚い方」
写真のTシャツと目の前のシャツを見比べる。藤崎さんは、これとだったら、と言いかけて、俺の方を見た。
「三原、どう着たい?」
「白いTシャツの上かな。前開けたら、今持ってるやつと違う感じで着られそう」
「うん。それ、いいと思う」
自分で言ってみると、家へ帰ってから試す組み合わせが決まった。俺は写真を閉じ、シャツをレジへ持っていく。
青いシャツは二千四百九十円だった。洗濯の表示も確かめてから会計を済ませ、紙袋を受け取る。
入口へ戻ると、藤崎さんが俺の袋を見て笑った。
「一枚目、決まったね」
「ありがとう。自分だけだと、試さない方を着て比べるとか、あんまりしないから」
「でも、最初に気になってた方になったね」
「うん。もう片方を着たから、こっちに決められた」
彼女が、そっか、と言い、店の外へ歩き出す。俺も袋を持ち直して、その隣へ並んだ。
次に入ったのは、藤崎さんが前から見たいと言っていた店だった。
俺一人なら通り過ぎる売場に、薄いブラウスやスカートが並んでいる。入っていいのか少し迷ったが、彼女が振り返って手招きをしたので、そのままついていった。
「これ、写真で見て気になってたんだ」
彼女が取ったのは、くすんだ桃色のブラウスだった。袖が少し膨らんでいて、前に小さなボタンが並んでいる。
隣には、白地に細かい花の模様が入ったものが掛かっていた。形は似ているが、そちらの方が少し華やかに見える。
「こっちも、かわいいなあ」
藤崎さんは二枚を並べ、順番に見た。俺も横から見比べるが、服だけだと、さっき自分のを選んだとき以上によく分からない。
彼女は値札を見た後、袖口の裏へ指を添えた。何を見ているのか聞くと、肌に当たったとき痛くないか確かめているのだと言う。
「かわいくても、着るたび気になるやつだと、結局着なくなっちゃうから」
「そういうの、買う前に分かるんだ」
「たまに失敗するよ。だから、試していいのは試すようにしてる」
彼女はそう言って、腕に掛けた二枚を持ち直した。俺はまた、自分の紙袋を見る。さっき動きやすいか聞いてくれたのも、見た目だけで選んでいなかったかららしい。
「試着してきてもいい?」
「うん。ここにいる」
「ありがと。暇だったら、その辺見ててね」
彼女は店員へ声をかけ、二枚を持って奥へ向かった。
俺は近くの棚を眺めた。服だけではなく、髪を留めるものや小さな鞄もある。値札の書き方も、男物の売場とは少し違う気がした。
よく分からないまま棚の横に立っていると、試着室の方から呼ばれた。
「三原、こっち」
顔を上げると、カーテンの端から藤崎さんがのぞいていた。近づいたところで、彼女が外へ出てくる。
最初は花柄の方だった。今日の黄色いスカートとも合っていて、制服で見るときより、顔の周りが明るく感じる。
「どうかな」
「いいと思う。さっき持ってたときより、着た方が分かる」
「何が?」
「模様が、そんなに大きく見えないんだなって。服だけだと、もっと目立つかと思った」
藤崎さんは鏡を見て、ああ、と納得したようにうなずく。
「そう。細かいから、離れるとあんまり分かんないんだよね」
彼女が袖を少し持ち上げた。布がふわりと動き、俺はそれを目で追う。
「暑くない?」
「思ったより薄い。これなら着られそう」
藤崎さんはもう一度鏡を見てから、次も着るね、とカーテンの向こうへ戻った。
桃色の方を着て出てきたときには、何を言うか、少し落ち着いて考えられた。似合うと言うだけなら簡単だが、彼女は、自分がどう思うかを聞きたいと言っていた。
「こっちは?」
鏡の前で止まった彼女が、俺へ顔を向ける。俺は二枚の違いを確かめるように、肩と袖と、顔の辺りを見た。
「こっちの方が、顔がよく見える」
「顔?」
「模様がないからかな。最初にそっちに目が行く。……説明、変かもしれないけど」
藤崎さんは鏡の中の自分を見て、それから俺を見た。
「ううん。そういうの聞きたかった」
彼女は少し離れたところにある全身鏡へ移り、スカートまで入るように立った。
「三原は、どっちが好き?」
俺は正直に、花柄の方だと答えた。水族館の日の服とも違う印象で、着ているところをもう一度見たかった。
「そっか。私は、こっちかなって思ってた」
彼女は桃色の袖をつまんだ。声が小さくなったわけではないが、俺の返事を待っているのは分かった。
「じゃあ、そっちがいいと思う」
言うと、彼女が笑った。
「さっきの三原と逆だね」
「うん。でも、どっちも似合ってたよ。俺の好みとは別に」
藤崎さんは鏡へ向き直り、袖を軽く引いた。もう一度、自分の姿を上から下まで確かめる。
「私、こっち、着たかったんだと思う。写真で見てから、ずっと気になってたし」
「最初に取ってたもんな」
「うん。じゃあ、これにする」
はっきりそう言って、彼女はカーテンへ戻った。
俺は少し離れた場所へ下がり、手に持った紙袋を見た。青いシャツは、その中できれいに畳まれている。彼女が勧めた緑ではないし、彼女も俺が好きだと言った花柄を選ばなかった。
けれど、一緒に選んでもらった感じは、ちゃんと残っていた。
買い物を終えると、三時を随分過ぎていた。
途中で別の売場も見たが、結局、買ったのは二人とも一枚ずつだった。藤崎さんのブラウスは二千九百九十円で、手持ちのスカートと合わせるつもりらしい。
歩き疲れたので、施設の中のカフェへ入った。俺はアイスティー、彼女はアイスカフェラテを頼み、空いていた窓際の席へ座る。
机の下へ袋を置くと、手が急に軽くなった。
「お疲れ。結構歩いたね」
「藤崎さん、見てるとき、全然疲れてる感じしなかったけど」
「楽しいのと、足が疲れるのは別です」
彼女は笑って、片足を椅子の下で少し動かした。今日はまたスニーカーでよかった、と言うので、俺もうなずく。
注文した飲み物が来るまで、彼女は買った服の袋を開き、店員が入れてくれた扱い方の紙を見た。俺も自分の袋の中に同じような紙がないか確かめる。
「紺のシャツと、今日の青いの、着る感じ変えられるね」
「うん。暑くなっても使えそうだし」
「今度、着てきてよ」
藤崎さんは、紙を畳みながら言った。
俺はその言い方を聞いて、少しだけ考えた。買うところには一緒にいたのに、着て出かけるときにも会うつもりで話してくれるのが、嬉しかった。
「藤崎さんも、今日のやつ」
「え、私のも?」
「うん。今度、見たい」
彼女が袋の口を閉じかけたまま、こちらを見る。
「三原、花柄の方が好きって言ってたじゃん」
「それは、比べたらの話だろ。今日買ったのも、似合ってたし」
言ってから、少し付け足した。
「藤崎さんが着たくて買ったなら、そっちの方が見たい」
彼女は袋へ目を落とした。口元が少しだけ緩み、それを隠すように肩の髪へ手を伸ばす。今日は結んでいるので、指は耳のそばで止まった。
「……じゃあ、今度ね」
「うん」
返事をしたところで飲み物が届き、俺たちはそれぞれグラスを手元へ寄せた。氷の音がして、藤崎さんがストローの袋を細く折る。
「今日のも、似合ってるよ」
俺が言うと、彼女が顔を上げた。
「今、着てる方。さっき、髪のことしか言ってなかったから」
藤崎さんは自分のスカートを見て、それから俺を見た。今度は、ごまかさずに笑った。
「ありがと。これも、結構迷ったんだ」
「選ぶの、手伝わなくてよかった」
「そうだよ。先に見られたら、今日着てきたときの反応、分かんなくなるし」
彼女はストローをグラスへ入れ、カフェラテをひと口飲んだ。俺もアイスティーを飲む。窓の外では、駅へ向かう人が広場を横切っていた。
しばらくして、藤崎さんが鞄から手帳を出した。
「これ、つけとこ」
開いたページには、見慣れてきた六つの項目が並んでいる。彼女はペンギンのペンを出し、私服を一緒に選ぶ、の横へチェックをつけた。
「これで四つ」
「思ったより早いな」
「うん。今日、三原のだけ選んで終わったら、私のも一緒に、って言うつもりだった」
「最初から両方見る約束だっただろ」
「そうなんだけど。私、迷ったら結構長いし」
「俺も二枚着てる間、待ってもらったし。お互い様でいいんじゃないか」
彼女はうなずき、チェックをつけた項目をもう一度見た。それから別のページを開き、何かを短く書き込む。
「そっちにも、予定あるの?」
「あ、違う。今日の店の名前。あと、買ったもの。こういうのも書いとくと、後から分かるから」
そこには、項目を並べたページとは違う、小さな日付の欄が見えた。俺は中身をのぞき込まず、自分のグラスを持ち上げる。
「写真だけだと、どこ行った日か分かんなくなるときあるんだよね」
「俺も、地図の印、増えすぎると分からない。行ったかどうかも、たまに迷う」
「それは結構困るやつじゃん」
「だから、行ったところは分けるようにした」
藤崎さんが笑い、俺もスマホを取り出して、今日見た店を地図へ残した。彼女は書き終えた手帳を閉じ、鞄へ戻す。
さっきのページには、まだ二つ、チェックのない項目があった。
映画を見ることと、雨の日の寄り道。今すぐ次を決めなければと思ったわけではない。ただ、一緒に選んだシャツを着る日が、また来るのだろうと考えた。
店を出る前、藤崎さんが紙袋を持ち上げたので、俺も自分の袋を取った。
「買ったの、帰ったらもう一回着てみる?」
「たぶん。手持ちのと合わせたいし」
「私も。店と家の鏡で、何か違うんだよね」
そんな話をしながら出口へ向かう。並んだガラスに、二人の姿と、別々の店の紙袋が映った。
藤崎さんがそれに気づき、少しだけ歩く速さを緩める。俺も横に並んだまま、同じガラスを見た。
「今度は、買ったの着て会おうね」
彼女が言った。
俺は映った自分の灰色のTシャツと、その隣にいる彼女を見てから、うなずいた。
「うん。青い方、着てくる」
「じゃあ私、桃色」
二人で笑い、ガラスの前から歩き出した。




