第6章-99 晴れ舞台
ー裁判所/応接室ー
コウはゼロユイと別れたあと、裁判所の応接室でセキにマントを見せていた。
レイとサクは、裁判長室で仕事をしていて一緒にはいない。
「セキさん。
貴方の晴れ舞台の衣装をご用意しました。
この裏地の紫は、特にこだわりました。
貴方の瞳の色と合わせて作っていただいて……。」
コウの話の途中で、セキはため息をついた。
「コウ、それを見せるために、わざわざ私を呼び出したのか?」
「ええ、そうですよ。
レイさんの前で処刑用のマントを見せたら、仕事が手につかなくなってしまいそうですからね。」
「そうか。それは何とも、気を遣わせてすまなかったな。」
セキがコウをジロリと睨んだ。
コウは少し残念そうな顔をした。
「おや、あまり気に入りませんでしたか?」
「そういう意味ではない。
お前のセンスは私の好みだ。
ただ、仕事の邪魔をするなと言っている。
それに、処刑をすれば返り血で汚れる。
わざわざ仕立てる必要があるのか?」
コウが微笑んだ。
「たった一度でも意味があるから仕立てたんです。
それに、セキさん直々の処刑なんて、前裁判長たち以来じゃありませんか。
懐かしいですね。
あの方たちを貴方が裁いた瞬間、僕は全てが報われましたよ。」
コウは懐かしむように天井を見上げた。
セキの口元が僅かに上がった。
「私も覚えている。
あの老人どもの絶望した顔……なかなかに清々しかった。」
「ええ、前裁判長は相変わらず飄々としていましたが。」
「あいつには手こずった。だが、勝った。」
「ええ、素晴らしい勝利でした。
そのあと、貴方は裁判長になり、僕から卒業しましたね。」
セキは腕を組み、鼻を鳴らした。
「何を言う。お前はそばに置いているだろう。」
「そういう意味ではありません。
医者としてではなく、僕から離れた……そういう意味です。」
コウは遠くを見るように壁を見つめた。
いつもの笑顔は消えている。
「なんだコウ、寂しいのか?」
「……ええ、とても誇らしく、寂しいですよ。
あの日から、ずっと。」
しばらくの沈黙のあと、コウは穏やかに笑った。
「もちろん、あの頃に戻りたくはありませんけどね。
コネも、お金も、体も……全て捧げ、疲弊しきっていましたから。」
「同感だ。
あんな気色悪い老人どもの相手はもう散々だ。」
セキはマントをおもむろに取り、羽織った。
柔らかな布が光沢を放つ。
「コウ、私は最後までお前を手放す気はない。
お嬢様の件もある。最後まで付いてこい。」
「相変わらず強引ですね。
このままでは、いつまで経っても引退できません。」
「引退する気か?」
「フフッ、良いですよセキさん。
僕が死ぬまでは、お付き合いいたしましょう。」
コウはセキのマントの裾を軽く整えた。
「似合ってますよ。当日は頑張ってくださいね。」
「当たり前だ。
コウの見立てが間違うはずがない。」
コウとセキは共に笑い合った。




