第6章-100 処刑前の噂
ー数日後ー
僕は再び町医者の所へボランティアに来ていた。
「先生、書類まとめたよ。
金額の合計が少し違ってたから直しといた。」
医師が書類を受け取り、すぐに金額を確認した。
「本当だ……君は本当に賢いね。」
医師は訂正印を押した。
「前回も思ったが、本当に医者にならないかい?
薬に詳しく、こんなに仕事が丁寧な人はなかなかいない。
もちろん、年齢的に働いてはいけないが、うちにも小さいが社宅がある。
私の病院専属のボランティアになってほしい。」
医師は頭を下げた。
僕は慌てて、医師の腕を軽く掴んだ。
「先生、顔を上げて。
すごく嬉しいけど、まだ決められなくて……学校の先生とも相談したいし。」
医師は少しだけ肩を落とした。
「そうだね。
君はまだ幼いから、決めるのは不安だろう。
だが、私は本気だから、考えておいてほしい。
急なお願いで悪かったね。」
医師は小さな封筒と、大きな封筒を1つずつ僕に渡した。
「この小さな封筒は今日のお礼だ。
それと、この大きな封筒を裁判所の受付に渡してきてくれるかい?
提出書類だから、渡すだけで大丈夫だ。
本来なら、私が行くんだが、今日は患者が多くてね。
頼めるかい?
終わったら、そのまま帰宅して良いからね。」
「うん、大丈夫。持っていくよ。」
「ありがとう。頼んだよ。」
僕は封筒をバッグに入れると、裁判所へ向かった。
だが、今日は街の様子が変だった。
賑やかな街は、いつもよりざわめき、陰気で居心地の悪い空間だった。
「なんだろう……早く行こう。」
僕は急ぎ足で、裁判所に向かった。
裁判所に着くと、かなりの人が押し寄せている。
人ごみを掻き分けながら、裁判所の中に入った。
裁判所内は人が少なかった。
「良かった。押しつぶされるかと思った。」
僕は封筒を受付に提出した。
帰ろうとバッグを背負い直した時、こちらに歩いてくる女性スタッフ達の会話が聞こえてきた。
「今日、人やばいよね。公開処刑でしょ?」
「そうそう。私絶対に無理。
でも、サクは行くらしいよ。レイ様の補佐官になったからって。」
「えっ、レイ様の?
うわ、出世コース……告白しとけば良かった。」
「無理だよ。
サクは誰がアタックしてものらりくらりだし。
この前なんか、女の子にキスをせがまれて、
投げキスで『これで勘弁』って返したらしいよ。」
「本当に!?さすが、たらしのサクだね。
そこも魅力といえば、魅力なんだけど。」
女性スタッフ達は賑やかに通路の先へ行ってしまった。
僕は目をぱちくりとさせた。
「サクさん……たらしなんだ。」
思わず出た言葉に、すぐに首を左右にふった。
「違う、そうじゃなくて、レイさんの補佐になったんだ。
約束、ずっと守ってくれてるんだ。
でも、それで処刑の立ち会いって……嫌じゃないのかな?
僕、悪いこと頼んじゃったのかな。」
僕は裁判所の外を見た。
人は更に増え、来た道がほとんど見えなくなっていた。
「人がひいてから帰ろう。」
僕は待合室の隅の椅子に座った。
「……早く、帰りたいな。」
僕はバッグを前に抱え、じっと人がひくのを待った。




