第6章-97 赤紫のマント
コウに連れられ、品のある建物の前に到着した。
ショーウィンドウには、美しい宝石や、質の良さそうな服が飾られているのが見えた。
「ここは僕の行きつけなんです。」
コウが扉を開けると、スタッフが出迎えた。
「コウ様、お待ちしておりました。
本日は可愛らしいお連れ様がご一緒なのですね。」
僕は小さくお辞儀をした。
スタッフに連れられ、奥の部屋へと通される。
「こちらで少々お待ちください。」
室内は広々としており、ゆったりと座れるソファーや、大きなテーブルがあった。
スタッフが出ていくと、コウはソファーに座り、僕に手招きをした。
「少し休みましょうか。」
僕はコウの隣に座った。
だが、落ち着かずに手を擦り合わせた。
その姿を見て、コウが静かに僕を見た。
「大丈夫ですか?
気分でも優れないのでしょうか?」
僕はコウの顔を見た。
いつもの笑顔はなく、とても心配そうな表情だった。
「大丈夫……だけど……。」
僕はしばらく考えたあと、自分の両手をぎゅっと握り、コウに伝えた。
「コウさん、フィナさんのこと……知ってるよね?」
コウの目がわずかに震えた気がした。
「僕、ガーディさんから聞いたんだ。
コウさんは、フィナさんを知っていたんでしょ?
なのに、どうして知らないふりをしたの?」
短い沈黙が流れる。
スタッフがお茶を2つ持ってきた。
「もう少々、お待ちください。」
スタッフはすぐに下がっていった。
お茶の柔らかな香りが部屋に広がる。
コウはお茶を見つめたあと、僕に向き直った。
「すみません。
ゼロユイさんが、フィナさんと知り合いなんて信じられなかったんです。
彼女は屋敷から出たがりませんし、屋敷の主人のお嬢様も、認めた相手しか招きません。
だから、知らないふりをしたんです。
確認をしてから話す予定でした。」
コウの真剣な顔に、僕は小さく頷いた。
「そうだったんだね。
コウさん、ごめんなさい……僕、勝手に勘違いして……。」
コウはほっとしたように笑った。
「良いんです。
最初に嘘をついて、ゼロユイさんを不安にさせたのは僕ですから。」
コウは僕に頭を下げた。
僕は慌てて、コウの腕を握った。
「お願い、顔を上げて。コウさんは悪くないよ。
……また、家に遊びに行っていい?」
コウは軽く顔を上げた。
「許してくださるんですか?」
「許すも何も……僕も悪かったんだ。
だけど、もう嘘はつかないで。」
コウは笑顔になり、僕を抱き寄せた。
「ありがとうございます。
貴方は本当に優しいですね。
どんなに抱きしめても足りないくらい嬉しいですよ。」
「コウさん……痛い……苦しいよ。」
「すみません。抱きしめすぎましたね。」
コウが手を離す。
僕は呼吸を整えるため、深呼吸をした。
その途中、スタッフが大きなマントを持ってきた。
マントは黒色で、光によって縦模様が見える。内側は濃い赤紫だった。
「コウ様、ご注文されていたマントです。
仕上がりはいかがでしょうか?」
「ありがとうございます。
さすが仕事が早くて丁寧ですね。」
「恐れ入ります。」
スタッフはお辞儀をすると、丁寧にマントを畳み、紙袋に入れ始めた。
「コウさん、マントなんて着るの?」
「僕のではありませんよ。贈り物です。
このあと、渡しに行きます。」
スタッフがコウに紙袋を渡す。
コウは受け取ると、お茶をゆっくりと飲み干した。
僕もコウに合わせるようにお茶を口に運んだ。




