第6章-94 ボランティアの希望
僕は教員に相談室に呼び出されていた。
「先生、お話しがあるって何?」
「ああ、ゼロユイは学校を卒業して時間が欲しいと言っていただろ?
先生なりに考えてみたんだ。」
「考えてくれたの!?」
嬉しさで声のトーンが上がる。
教員は苦笑いを浮かべた。
「やっぱり君くらいの年齢だと、卒業して生活を安定させるのは難しい。
だけど、時間の確保だけなら、こんな方法がある。」
教員は一冊の資料をテーブルに置いた。
ボランティア一覧と書かれている。
「これは仕事体験がしたい子や、仕事が決まらない子、仕事が決まって時間がある生徒がやる内容なんだ。
年齢制限がないからゼロユイにもできる。
ほら、開けてごらん。」
僕は資料を手に取り、ページを開いた。
図書館の司書や、学校の資料整理、販売店の品出しや、裁判所の掃除、病院の在庫確認など多種多様だった。
「ゼロユイのように、成績の良い生徒は、ボランティアをすると授業の一部が免除されるんだ。
しかも、授業よりも時間が短いものが多い。
これなら、学校の寮を使い続けることも出来るし、ボランティア先に気に入られれば、社宅を借りられる可能性もある。
どうだ?」
僕は少し考えたあと、パタンと資料を閉じた。
「ありがとう。僕、やってみたい。
でも、少し考えても良い?
何がやりたいか考えてみるから。」
「良かった。この資料はここに置いておくから、いつでも見にきなさい。
新しい内容が来たら差し替えておく。
人気の場所はすぐ埋まるから、早いもの勝ちだぞ。」
教員は棚の一番下に資料をしまった。
「ゼロユイ、君が何を急いでるかは分からないが、急いで卒業しなくても良い。
先生は、ゼロユイともっと話しがしたいんだ。」
「……僕と?」
僕は教員をまっすぐに見た。
教員は照れたように顔をかいた。
「そうだよ。
君は大人すぎるから、色々と背負ってしまいそうで……もっと甘えてくれたら嬉しいよ。
もちろん、先生が嫌なら他の教員だって良いんだ。」
「先生が嫌なわけ無いよ。大好きだよ。
ただ、他にも生徒がいっぱいいるから……。」
「なんだ、そんなことを気にしてたのか?
子供は甘えるのも勉強だ。
待ってるから、いつでも来なさい。」
「ありがとう。先生……また来るね。」
僕はお辞儀をして相談室を出た。
「先生、優しかったな。」
教員の言葉を思い出しながら、自室の鍵をあけた。
「フク、ただいま。……あれ?」
いつもなら、出迎えてくれるはずのフクが来ない。
「どこにいるの?戻ったよ。」
寝室を覗くと、フクはTシャツに丸まって眠っていた。
ほっとして、フクの顔を覗き込んだ。
「可愛い。怒る時はすごく怖いのにね。」
フクの嘴を指先でツンツンと突いた。
邪魔だと言わんばかりに、カチカチと嘴をならされた。
「夢の中で怒ってる。ごめんね。」
今度はフクの頭を撫でてみた。
嘴の音が鳴り止み、表情が和らいでいく。
「フク、僕……先生にボランティアを勧められたよ。
それをやれば、今より時間が取れそうなんだ。
何が出来るかな……。」
「ピィ……。」
フクが小さく寝言で鳴いた。
「うん。時間が取れたら、フクとたくさん一緒に遊びたい。
色々なものを見に行くのも良いよね。」
フクの柔らかな羽に顔を寄せる。
「僕も……眠くなってきた……。」
布団の上に寝転がる。
そのまま、ゆっくりと目を閉じた。




